2014年08月07日13時37分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】7月の電力使用量(ピーク)は昨年を下回る 電力危機は全く起きなかった 山崎久隆

 7月の電力使用量をずっと見つめてきたが、25日(金)を除いて、全国の各電力会社の最大使用量は、ほとんど90%を下回り電力危機は全く起きなかった。「電力危機」とは全国の電力使用量合計が電力会社の準備した供給力(設備容量)の97%を超えて、さらに増加する場合である。92%くらいでは「余裕がある」といっていい。 
 
◆7月は電力に余裕 
 
 気温と曜日の組み合わせが、たまたま運が良かったからと考える人もいるかも知れない。たしかに7月で最も暑かったのは7月26日(土)から27日(日)、ちょうど台風10号からの湿った暖かい風が流れ込み、北海道を除く日本全国で猛暑日になり富山で38度、香川、岐阜でも37度を超えた。全国927箇所のアメダス気温測定点の231箇所が35度以上になった。 
 7月最大の猛暑日が土曜日に重なったことは電力使用の観点からは幸いであったことは確かだが、前日の25日もそれなりに暑かったが、震災以降の最大使用量との間には、かなり余裕があった。 
 
◆東電の最大は4795万kw 
 
 東電管内の最大電力使用量は7月25日(金)午後2時から3時に記録した4795万kwで、昨年最大の5093万kwには遠く及ばない。 
 実は前日の24日(木)には東京都多摩地方を中心に大雨になったことも一つの理由なので、必ずしも気温よりも電力使用が減ったという話ではないが、それでも35度を超える気温で5000万kwを超えないとは、かなり消費抑制が広まっているといえよう。 
 
◆関電と九電の「危機」とは 
 
 関西電力や九州電力は今年夏の最大使用を記録する時には設備余裕つまり予備率が3%以下しかないから危機だという。しかし実際には中部、中国、北陸からの融通と、最大120万kwを東電など東日本からも融通できる。 
 それを全て加味すれば西日本全域で95%を超えることはない。 
 そもそも「逼迫するかもしれない」という経産省や電力各社の主張は、極めて過大な使用量を前提としている。例えば東電5320万、関電2873万、九州1671万、全国合計で1億6666万kwだ。今頃日本中でこれほどの電力を使うには、気温が何度まで上昇すれば達するだろうか。 
 
◆過大な電力使用予測 
 
 震災以来の使用実績は、1億5000万kw台、震災前の2009年度で1億5913万kw、震災前の猛暑であった2010年では1億7775万kwだ。電気料金が上がり消費税までも上がり、企業や市民の省エネの取り組みが続く。(東電管内で震災前から少なくても15%強、日本全体も同程度になる。ただし夏ピーク時のみ。冬ピークは横ばい) 
 1億6666万kwに達するとの推定自体が高すぎる。 
 分子となる基準が過大なので、設備(分母)との比率が97%を超えるとの推定自体が成り立たない。 
 過去最大の使用量になったのは2001年の1億8269万kwだが、これに85%を掛けると1億5528万kwになる。ほぼ、震災後の3年間の最大使用量に匹敵する。この水準を維持すれば、何の問題も無い。わずか15%の節電だが、さらに近年は照明や冷房など家電製品の省エネ化も進んでいる。家電製品の使用を劇的に減らさなくても使用電力は減っているはずだ。 
企業では必要経費に直結する電気料金の値上げも影響して、使用量は減っている。 
 今、大規模停電を引き起こしかねないのは、台風や地震など自然災害である。近年、台風や豪雨による広域停電が頻発している。土砂崩れで送電鉄塔が倒壊したり竜巻などの風害が発生するなどのほうが、遙かに停電は多く起きている。 
発電所の停止が直接広域停電になった例などほとんど無い。 
 
◆原発は安定供給を阻害 
 
 原発が動いていたら、そのほうが広域停電になるであろう。 
 若狭湾の直下でマグニチュード6程度の地震が起きても、地上の揺れが震度5弱程度揺れれば原発は全部止まる。地震加速度大のスクラムがかかる。スクラム設定値は原発により違うが、おおむね120〜200ガル程度だ。これが震度5弱に相当する。(震度と加速度は直接換算は出来ないので目安だが) 
 地震で止まった原発は、何の損傷もなくても点検と検査で1週間は再稼働できない。つまり地震で11基の原発が全部止まれば関電は大規模な停電を引き起こす潜在的な危機を抱えていたのである。このような設備を再稼働しても、電力供給の安定化にはつながらない。 


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