2014年08月09日14時19分掲載  無料記事
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核・原子力

ブラジルで安倍首相を出迎えた「日本ブラジル原子力協定反対」の横断幕

 7月31日から8月2日にかけてブラジルを訪問した安倍首相を「日伯原子力協定」反対の運動が出迎えた。2日に開催された日系団体主催歓迎会の会場となったブラジル日本文化福祉協会には多くの人たちが集まっていただ、その中には両国の原子力協定反対の横断幕を掲げたグループもいた。(大野和興) 
 
 以下はその模様を伝える邦字紙サンパウロ新聞の記事―。 
 
 文協ビル前のサンジョアキン街で安倍首相の到着と退場を待つ多くの人々がいた中、ひときわ目立っていたのが、黄色の横断幕を掲げ「ブラジルと日本の核協定反対」と主張する約10人の集団だった。 
 
 一同は安倍首相に反原発の意思を伝えるためサンパウロ各地から集まった、自称「プロティカルフレンド(政治仲間)」。 
 
  当日中心となったブラジル人のフランシスコ・ウィタケさん(82)は取材に対し、「現在ブラジルには二つの原発があり、一つが建設中。ブラジルと日本の政 府は原発新設に向けて話し合っているが、我々はブラジルに原発は必要ないと主張したい。なぜなら福島の原発は(事故を)止められておらず、ブラジルであん な事故はご免だ」と答えた。 
 
 また、この抗議活動に参加していた日系3世の宮沢ルイスさん(31)と、上村ジャナイナさん(24)らは、「福島の事故の時から、色々な人が原発について考えるようになった。ブラジルも危ない(他人ごとではない)と思い、皆で一緒に活動している」と説明した。 
 
 なお、首相は到着時には赤じゅうたんの敷かれた道を予定通り、一同のすぐ正面を歩いたが、退場の際には別口から車に乗り込んだ。 
 
 そのため、予定されていた場所で待ち構えていた抗議活動のメンバーや報道陣、首相を一目見ようと集まっていた多くの人々は慌てて別口へ移動したが、逃げるような早技にしっぽを巻かれる形となった。 
(2014年8月5日付) 
 
 
以下は、8月2日、ブラジル被爆者平和協会の会長森田さんから安部首相に渡された手紙(ポルトガル語)。印鑰智哉さんの訳です。 
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/911339518892879 
原文などは以下ををご覧ください。 
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/911339518892879 
 
サンパウロ、2014年7月30日 
安倍晋三日本国首相 
 
ブラジル被爆者平和協会 
会長 森田隆 
在ブラジル原爆被爆者協会(現ブラジル被爆者平和協会)は30年前の1984年7月に設立されました。1985年1月、ブラジルへの公式訪問で訪れた閣下のお父さんである外務大臣とお会いしたことを懐かしく思い出します。 
 
あの時代には日本在住の原爆被害者は日本政府によるさまざまな支援を受けられていましたが、ブラジルに移民したものたちは完全に排除されていました。 
安倍晋三様、閣下のお父様は私たちの要請をとても親切に受け取り、被爆者たちの医療相談を実現するために専門医療チームを派遣することを約束してく れました。この約束は実現され、あの年の10月以来、2年毎に日本の医師団の訪問を受けることになりました。しかし、診察を元にした実現すべき治療は大き な問題のまま残っています。というのも日本政府が資金を出す医療はブラジルでは承認されていないからです。 
協会は設立以来16年後から、日本の裁判所での認定による利益によってだけ利益を被爆者に与えることができるようになったことを記録しておきたいと 思います。祖国の法廷で争うことは私たちの多くにとって、とても苦しいことでありますが、これが唯一の道であるという状況なのです。 
 
この協会を設立した最初の理事として、わずか2名のメンバーのみが生き残っております。私は現在90歳になります。もう一人は被爆者二世です。 
毎晩、なくなった被爆者の仲間たちの魂のために祈ります。そして、支援がなぜこんなに遅れてしまい、多くの人がそれを受ける機会を持つことができなかったことを嘆きます。 
 
この協会の設立のもう1つの大きな動機はブラジル人の若者の平和への運動のためです。 
 
原爆の生存者としての私たちの経験を伝えて、核兵器が二度とこの地球で使われることがないようにすることは私たち、被爆者の義務であると信じていま す。ですから、広島や長崎で実現しているように、私たちも平和のための集会をブラジルで実現しています。私のポルトガル語は拙いものですが、ブラジル人の 若者たちと共に彼らの未来がとても平和で調和に満ちたものであるように祈り、格闘してきております。 
 
日本は2回に渡る原子力の攻撃を受けた唯一の国です。そしてその国でまた新たに原子力の悲劇が起こってしまいました。3年目になる福島原発の事故です。 
 
福島で起こったことの反響は世界中で巨大なものでした。すべてのものは原子力の放射線の危険を再認識しなければなりませんでした。そして私たち、協 会は「人類は核エネルギーとは共存できない」というキャンペーンを加速し、現在もこの問題を知らせることに多くを費やしています。 
 
原子力の放射線には姿も色も匂いもありませんが、周りのすべてのものを汚染してしまいます。現存するものを汚染するだけではありません。次の世代にも影響を与えてしまうのです。 
私は命の最後の日まで闘うことを誓いました。前世紀が産んだ人類への最大の悪を21世紀に絶滅させるために。私たちの孫の平和な社会のために、原発は不要です。 
 
ですから、首相閣下にお願いします。 
 
福島で被害を生み出す結果となった日本の技術をブラジルに押し付けないでください。 
ブラジルと日本の交流はもっとよりよい、おもしろい方法で実現できるはずです。 
日本の技術は世界的に認められていますが、たとえばブラジルの自然の巨大な豊かさと結びついて、平和な世界実現のために力になることができるはずです。 
 
世界情勢は刻々と変化します。新しいエネルギー源を獲得することはすべての国の経済にとって重要なことでしょう。日本の成長戦略にとっても重要なことは理解します。 
 
長く生きてきましたし、何が起きてきたかを知っています。そこで下記のことを言わなければなりません。 
 
戦争でこんなに早く荒廃させられ破壊された日本を世界でもっとも豊かな国に立ち上げたのは日本の民衆です。 
 
戦争後の乱気流の時代に、閣下の祖父、亡くなった岸信介元首相が国の自立のために命を危険にさらした時に、日本の民衆はその要請に反応して世界にその強さを見せたのです。 
 
日本の民衆は常に、特に困難な時にその潜在力を見せます。ブラジルの中ですらそれは知られています。 
 
日本だけでなく、現在では世界中で新しい、きれいでエコロジーなエネルギーが研究されています。決して安全といえない原子力発電に固執する理由は何もありません。 
原子力安全委員会ですら100%安全な原子力発電は存在しないと結論しています。 
 
世界の人びとは核の危険にさらされることを望んでいません。 
 
この重大な真実を考慮してもらいたいと強く思います。 
 
本当の政治家は民衆の至上の意思を代表する人です。 
閣下が本当の政治家であることを心から信じています。そして、この私の謙虚な望みを理解してくださることを真剣に望みます。 
 
どうもありがとうございます。 


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