2014年09月24日12時52分掲載  無料記事
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米国

オバマ大統領と核兵器

  オバマ大統領といえば大統領就任早々、ノーベル平和賞を受賞したことで世界を驚かせた。そのオバマ氏の核政策を批判する社説がニューヨークタイムズに掲載されている。オバマ大統領が初期の核軍縮の試みを反転して、核兵器の性能進化に向け大幅に予算をUPしようとしていることについてだ。 
 
  オバマ大統領はまずロシアと戦略核を削減する交渉を行った。大統領就任の翌年、2010年のことだ。オバマ大統領がノーベル平和賞を受賞した翌年のことでもある。 
 
  「オバマ米大統領とロシアのメドベージェフ大統領は8日、チェコの首都プラハで両国の戦略核をそれぞれ1550発以下に削減する新たな核軍縮条約に署名した。発効すれば、米ロは配備する核弾頭数を、現状から約3分の1減らす義務を負う。両国は新たな核軍縮や核不拡散体制の強化で世界を先導する姿勢を鮮明に打ち出した。」(2010年4月9日づけの朝日新聞) 
 
  この2010年のロシアとの戦略核削減交渉の際に、オバマ大統領は米国内の共和党議員らと妥協するため、核兵器は減らすが性能をUPすると約束させられた。そこでそれまで核兵器をアップグレードするための予算は10年間で700億ドル=7兆円の予算だったが、次期は8兆4千億ドルに底上げすることになった。 
 
  ところが、である。ニューヨークタイムズの社説によると、今の米議会予算局の試算では、核兵器の性能進化計画のコストは10年間でなんと3550億ドル=およそ35兆円に膨れ上がっているらしい。これが本当ならそれまでの5倍である。その一方で、既存の核施設に対するセキュリティ予算が減額されていると言う。 
 
  オバマ大統領は一度は撤退したイラクに関与を始め、さらにシリアへの空爆も開始した。オバマ政権は二期目の後半に入って、タカ派色を強めている。そのことに米国内紙が警報を鳴らしたものと言える。 
 
  今、米国が巨額を拠出して核兵器を強化する真の動機はどこにあるのだろう。そして、イラクとシリアへの空爆。その真相はベールに包まれている。数年前、キッシンジャー元国務長官や空軍の退役将軍らが核抑止は機能しない、と核兵器廃絶を訴え始めていた。オバマ大統領のノーベル平和賞受賞と米ロ戦略核兵器削減交渉もその流れにあった。ところがここに来て急旋回しているかの報道である。その数年の間に、変化したのは米国というよりも、中東情勢や中国、日本、北朝鮮を含む東アジアの情勢だろう。新たに核兵器を所有したいと考える国が生まれている。イスラム国のリーダーの核に対する見解はまだ報じられていないが、将来、イスラム国が核兵器を保有する可能性もある。日本の政治家の中にも核兵器を保有する必要性を訴える者が出てきている。そして、最近緊張が高まってきたロシアとの確執である。錯綜してきた諸勢力を前に、米国は再び力瘤を見せつけて、一極覇権を守ろうとしているのではあるまいか。 


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