2014年11月30日00時37分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

現代の若者から見た「慰安婦」問題(1)

 故・金学順(キム・ハクスン)さんが初めて「慰安婦」であったことを名乗り出て日本社会に大きな衝撃を与えた1991年当時、僕は遊び盛りの小学生だったので、当然ながら「慰安婦」問題という難しい社会問題には関心が向かず、その後も特に勉強する縁も機会も無いまま、とうとう20歳代後半に差し掛かってしまった。 
 そんな僕が「慰安婦」問題を思い出したきっかけは、今年1月に東京の六本木で遭遇したヘイトスピーチ・デモだった。そこで「慰安婦」問題に絡めて聞くに堪えない差別用語を連発する人がいて、戦後70年近く経ったにもかかわらず、未だに問題が解決を見ない現状と問題の大きさに改めて気付いたのである。 
 
 その後、「慰安婦」問題をめぐっては、安倍政権による河野談話(慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話)作成過程の検証結果発表(6月)、「慰安婦」問題の報道をリードしてきた朝日新聞による「慰安婦」報道の検証結果発表(8月)、ジャーナリストの池上彰さんが朝日新聞に毎月1回寄稿していたコラム「池上彰の新聞ななめ読み」の掲載をめぐる朝日新聞内のドタバタ劇(9月)等々が起こり、「慰安婦」問題が再び世間の注目を集めるに至ったが、ヘイトスピーチ・デモに遭遇した1月時点では、今のような展開になるとは全く予想できなかった。 
 
<第12回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議> 
 
 ヘイトスピーチ・デモに遭遇したのを機に、改めて「慰安婦」問題を勉強し直そうと、僕は5月31日から6月2日まで東京都内で開催された今年で12回目を迎える「日本軍『慰安婦』問題アジア連帯会議」(主催:同実行委員会)に行くことにした。 
 実行委員会メンバーの1人で、フィリピン人元「従軍慰安婦」を支援する会代表の柴崎温子さんは、開会挨拶において「慰安婦問題は『日韓の政治問題』でもなく『お金の問題』でもありません」と訴えつつ、今回のアジア連帯会議の目的を次のとおり説明していた。 
 
  岼岼舵悄很簑蠅凌燭硫魴菠法について政府に提言する 
◆‘本軍の組織的関与をを示す529点の資料を政府に突き付ける 
 初めて「慰安婦」被害者が名乗り出た日である「8月14日」を国連記念日にするための契機にする 
 
 「慰安婦」問題を語るに当たって切っても切り離せない存在は河野談話であろう。河野談話の問題点を指摘する声は多方面からよく聞くが、「慰安婦」問題に疎い僕が全文を読むと「ふんふん、なるほど」と思うばかりで、どこにどういう問題があるのかが分からない。 
 その点を、実行委員会メンバーで「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」共同代表の梁澄子さんが、河野談話をどう見るべきかを分かり易く説明してくれていた。 
「河野談話は、慰安婦の募集などが本人たちの意思に反して行われたことや、慰安所での生活が強制的な状況の下にあったことを認めた点が重要です。 
 さらに、この事実を歴史の教訓として直視し、研究や教育を通じて記憶に留め、同じ過ちを決して繰り返さないという決意を表明したことも評価すべき点です。 
 ただ、河野談話は、日本政府の責任を曖昧にして『軍の関与』という表現に留めたこと、後続措置が民間から償い金を募る形(=アジア女性基金)になったことなど問題を残しました。何より、アジア全域の女性たちが被害に遭った事実が具体的に語られていません。また、慰安婦問題を歴史の教訓とすることやその記憶の伝承が、今日まったく実行されていません」 
 
 さらに、弁護士の川上詩朗さんは、「慰安婦」問題を「既に解決済み」と主張する日本政府と、「解決していない」と主張する実行委員会の双方の相違点を指摘しつつ、河野談話が示している事実が具体的に何なのかを議論する必要があると訴えていた。 
「日本政府は、2国間の条約によって解決したと主張し、個人の賠償請求権が消滅したなどとして、権利の消滅にだけ焦点を当てて『解決した』と主張しています。 
 一方、実行委員会は『そもそも権利自体が発生したのかどうかをはっきりさせなさい』と言っているのです。このように、日本政府の解決済み論と我々の主張はズレているのです。 
 本質的な問題とは『加害の事実』であり、それを日本政府はちゃんと認識しているのかどうか、当時の国際法・国内法に照らして違反していたことを認識しているのかどうかをはっきりさせろというのが、僕たちが一番求めている点です。 
 では、ズレた認識をどう克服するかですが、日本政府が堅持すると言っている河野談話が示している事実とは具体的に何なのかについて、日本政府を議論する土俵に引っ張り出す必要があります。権利が発生するに至った事実を認めるのかどうか、責任を認めるのかどうかという議論を日本政府に投げ掛けていきます」 
 
 アジア連帯会議最終日の6月2日、国会内において、8ヵ国の被害者と支援者によって採択されて日本政府に提出された提言「日本軍『慰安婦』問題解決のために」が発表された。 
 この提言の作成に携わった梁さんは、喧々諤々の議論を経た末の苦労の結晶とも言うべき提言への思いを次のように語っていた。 
「今回の提言の中で特に重要だと考えているのは、日本軍『慰安婦』問題が現在、あたかも日韓間だけの問題であるかのように扱われていますが、性暴力の被害に遭った女性は朝鮮半島出身者だけではなく、東南アジアの人々や当時その地域にいた宗主国の女性たちまで含まれており、そういう女性たちの被害を一つ一つ具体的に取り上げて認めよ、加害国が具体的に事実を語ることで被害者の許しを得ることができる、と訴えている点です」 
 
「日本政府への提言」では次の4点について事実と責任を認定するよう要求している。 
 
 ‘本政府及び軍が軍の施設として「慰安所」を立案・設置し管理・統制したこと 
◆―性たちが本人の意に反して、「慰安婦・性奴隷」にされ、「慰安所」において強制的な状況の下におかれたこと 
 日本軍の性暴力に遭った植民地、占領地、日本女性たちの被害にはそれぞれに異なる態様があり、かつ被害が甚大であったこと、そして現在もその被害が続いているということ 
ぁ‥時の様々な国内法・国際法に違反する重大な人権侵害であったこと 
 
その上で、日本政府が採るべき被害回復措置として大きく4点を提示した。 
 
 )櫃垢海箸里任ない明確で公式な方法で謝罪すること 
◆ー婪瓩両擇箸靴独鏗下圓貿綵すること 
 真相究明(日本政府保有資料の全面公開、国内外でのさらなる資料調査、国内外の被害者および関係者へのヒヤリング) 
ぁ〆独防止措置(義務教育課程の教科書への記述を含む学校教育・社会教育の実施、追悼事業の実施、謝った歴史認識に基づく公人の発言の禁止及び同様の発言への明確で公式な反駁等) 
 
 第12回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議に参加して、「ちょっと『慰安婦』問題が分かってきたぞ」と思った僕は、その勢いに乗って、長年「慰安婦」問題に取り組んでいらっしゃる「女たちの戦争と平和資料館」(wam)事務局長の渡辺美奈さんに大胆にもインタビューを試みたのであった。(三宅保) 
 
(2)に続く 


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