2014年12月08日10時27分掲載  無料記事
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農と食

ラウンドアップ物語 落合栄一郎

  GM作物については、日刊ベリタでもしばしば報道されている。たとえば最近のものでは(1)がある。初期のころには、様々な種類のやりかたで、GM作物が作られたが、最近は、主として、ラウンドアップという除草剤に耐性のあるGM作物が作られている。ラウンドアップは、モンサントの特売品であったが、その特許は数年前に切れた。しかし、ラウンドアップが安全で、それに耐性のあるGM作物を植えているかぎり、ラウンドアップをただ撒いておけば、草取りなどの必要もなく、楽であるというので、今では、最も多量に使われている除草剤になっている。 
 
 実際は、ラウンドアップが使われ出して直ぐ、 ラウンドアップにやられない雑草が出来てきたのだが(2)。しかし、GM作物とラウンドアップの使用は増々増え続けている。GM作物からの食品の問題は、かなり日刊ベリタで論じられているので、ここではラウンドアップに焦点を当てる。 
 
 ラウンドアップとは、化学的にはグリフォサートなるもので、実は、除草剤として開発されたものではない。それは、金属でできた管などの内部に金属が酸化その他でさびのように付着したものを取るー洗い流す製品として開発されたのである。ということは、グリフォサートは、金属を結合する性質を持っているのである。ところが、モンサントの化学者が、この物質が植物の生育を抑える性質をもっていることを発見し、除草剤として特許を取ったのである。この化合物が、植物の生育に必要な酵素を阻害する。その上、この除草剤の影響を受けない微生物もあり、その原因も突き止めた。それは、同じ働きをするが、グリフォサートの影響を受けない酵素を持っている。そして、その酵素を作る遺伝子を他の植物に導入すれば、この除草剤の影響を受けない植物を作ることができる。こうして、大豆、トーモロコシなどなどのGM作物が作られた。 
 
 さて、環境に大量に散布されたグリフォサートはどうなっているか。わずかな部分は、雑草などに吸収されて、その雑草を死滅させる。しかし、さらに多量のグリフォサートが環境にはある。これが人に何らかの形で入り込む可能性はある。また、散布に際して、働く農民に入り込む。モンサントの言い分によれば、グリフォサートの影響を受ける酵素は人間にはないので、問題はないとしている。他の影響は無視しているし、FDAもそれに同調している。しかし、問題はグリフォサートが金属イオンを結合することである。体の中には、金属が重要な役割を果たす酵素が沢山ある。そこにグリフォサートが結合したらどうなるであろうか。その酵素の作用を阻害してしまう。特に問題なのは、鉄の入っているサイトクロームP─450なるものを含む酵素である。この酵素は、外から体内に入ってくる様々な不要物(毒素を含め)を分解して、体を守る役目をしている。これに、グリフォサートが結合して、その作用を押さえてしまう。また多くの酵素で重要な役目をしている亜鉛にも結合して、その酵素作用を押さえてしまうようである。こうした作用が、様々な生理的不都合を起こさせる(3)。 
 
 たとえば、すでに報告した(4)ように、ラウンドアップは人に深刻な健康障害を起こしている。アルゼンチンではラウンドアップが多用され、多くの人に、嘔吐、下痢、呼吸器障害などの急性症状の他に、ガン、不妊症、流産、胎児奇形などが見られている。 
 
 
 
(1)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201406300012141 
 
(2)http://www.alternet.org/environment/monsanto-linked-fatal-kidney-disease-epidemic-could-it-topple-company?page=0%2C1&paging=off¤t_page=1#bookmark 
 
(3)A. Samsel and S. Seneff, Entropy 15, 1416-1463 (2013) 
 
(4) http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201010141043324 


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