2014年12月22日00時05分掲載  無料記事
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核・原子力

脱原発版「オール福島」の構築を! 〜「災害対策全国交流集会2014inふくしま」に参加して感じたこと〜

 震度4以上の地震は50回を超え、豪雨を起因とする大規模な土砂災害(8月、広島市)や戦後最悪と言われる火山災害(9月、御嶽山)など、2014年も日本列島は様々な災害に襲われた。災害発生直後は大手メディアを中心に報道が盛んになるので、被災者の苦難に世間の人々も注目するが、日本人の「忘れっぽさ」も原因か、残念ながらしばらく時が経つと関心が薄まるのが常である。 
 今年1年の災害を振り返る中で、「災害被災者支援と災害対策改善を求める全国連絡会」(略称・全国災対連)という存在を知った。阪神・淡路大震災(1995年1月17日)からの復旧・復興に関わってきた労働組合や市民団体などが集まって1999年10月に発足した、15年もの歴史を積み重ねている団体だという。その全国災対連が11月に福島県で全国交流集会なるものを開催するということで、主催者にお願いして傍聴させてもらうことにした。 
 
<福島県浪江町の現状> 
 
 福島県の土湯温泉で11月15日から2日間に亘って開催された全国交流集会の目玉は、福島第一原発からほど近い浪江町の馬場有町長による記念講演で、放射線量の高さなどにより復興が遅々として進まないことへの苦悩が聞く者の心に強く伝わってきた。 
「皆さん方には、私の話を聞くに当たって胸に刻み込んでほしいことがあります。それは憲法13条の幸福追求権、25条の生存権、29条の財産権という基本的人権が私たちは全部剥奪されているということです」 
「私どもの町は現在、約2万1千名の全町民が、北は北海道から南は沖縄そして海外まで避難してバラバラになっています。バラバラになって3年以上経ちました。本当に長いです。それでも将来に光が見い出せると良いのですが、なかなかそうはいかない状況です」 
「浪江町のかつてのキャッチフレーズは『海と緑に触れ合う町』で、アイドルグループ『TOKIO』のDASH村もありました。昨年愛知県で開催された第8回B1グランプリでは、浪江焼きそばが優勝しました。ですから今年のB1グランプリは、本来なら前年の優勝チームがご当地で開催しなければならないのですが、残念ながらできませんので福島県郡山市にお願いしました」 
「地震による被害、津波による被害、放射性物質による汚染被害のうち、地震と津波による被害は、みんなが歯を食いしばって頑張れば何とか再起できますが、放射性物質による汚染は厄介です。このために復旧が妨げられていて、未だに瓦礫の山が撤去できずに残っています。復旧に向けて、なかなか『これだ!』という決め手はありませんけれども、皆さんのお力をお借りして、這いつくばって頑張っていきたいと思っています」 
「浪江町での事業再開状況ですが、再開したのは建設業や運輸業など一定の限られた事業だけです。小売業ではローソンが再開しましたけれども24時間営業ではありません。浪江町での事業の本格的な再開は、水の問題などもあってまだまだ難しい状況です。私ども浪江町役場の職員も、浪江町では生活できませんから、南相馬市から二本松市内の浪江町臨時役場まで通っている状況です」 
「津波で亡くなった町民は182名います。そのうち33名は未だ行方が分かりません。33名の家族の方には死亡届を出していただいて特例死亡という取扱いにしています。自ら命を絶つ人を含めた災害関連死は、この3年8か月の間に340名を超えました。要介護1、2の方の病状が要介護3、4と進行して危機的状況です。私どもは心のケアが重要だということで、全国各地の社会福祉協議会、日本赤十字社、医療機関などの関係機関の方々にお願いしているところです」 
「先祖伝来の生業や土地は、全て放射能で汚されました。固定資産の価値はゼロの状況です。ですから現在、賠償・補償を獲得するべく闘っています。特に、東京電力(東電)に精神的慰謝料を求めるADR(※)については現在、最大公約数的な数字で争っていますが、東電の態度は許せないという状況です。また、国も私たちに対して『原発政策を続けてきた責任はある』と言いながら、その対応ぶりは言っていることとやっていることが全く違うと言わざるを得ません」 
(※ADR=裁判外紛争解決手続。「当事者間による交渉」と「裁判所による法律に基づいた裁断」との中間に位置する仕組みで、紛争解決方法は、〜佇の合意による解決を目指す、第三者によって法的判断を示す、という2つに大別される) 
「本集会の『被災者本位の復興と原発ゼロをめざして』のタイトルどおり、原発ゼロを目指さなくては駄目です。川内原発の再稼働なんておかしいですよ。避難計画も無いんですよ。弱者の方が逃げる算段も無いんでしょ?福島原発事故の究明をきっちりやってから再稼働ではないんですか!?」 
 
<福島からの情報発信は十分か?> 
 
 記念講演の後に開催された9つの分科会のうち、第5分科会「放射能被害の全面賠償を勝ち取る」を傍聴させてもらった。この分科会では、福島第一原発事故から2年後の2013年3月11日に、|楼茲魃染した放射性物質を事故前の状態に戻す(原状回復)ことや、原状回復がなされるまでの間の精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを求めて集団提訴(以下、生業訴訟)した人たちが、今後の運動の進め方などを話し合っていた。 
 生業訴訟で弁護団事務局長を務める馬奈木厳太郎弁護士は、 
「東京では毎週金曜日に首相官邸前での抗議行動が続いていますが、東京に住む人々の多くは福島の被害に関する記憶が風化しつつあり、会話の中で原発について語られることもほとんどありません」と東京の現状を報告するとともに、被害の実態を訴えていけば突破できる局面では最早なくなりつつあること、しかし突破できなければ完全賠償は叶わないことを指摘した。 
 さらには、鹿児島の川内原発が再稼動に向けて進んでいる現状について、国や九州電力が福島第一原発事故を真面目に受け止めていない証拠だと指摘しつつ、原告を含む福島の人々の怒りや悲しみといった発信が十分なのか、日本全国に届いていないのではないか、被害者が被害者のままでいては限界があり、被害者が原発事故を受けて何を発していくかを考えていかなければ、責任を取る気が無い人たち(国・電力会社)に対して責任を取らせ、完全賠償を勝ち取ることはできないと訴えた。 
 
 馬奈木弁護士の報告を受けて、参加者の口からは情報発信のあり方について反省の弁がついて出ていた。 
「沖縄県知事選(11月16日投開票)を控えた先月、沖縄に2回行きました。あの盛り上がりが福島県知事選(10月26日投開票)でほとんど無かったことは反省材料です。当選した内堀氏ら全候補者が原発反対と言わざるを得ない状況を作ったのは成果だと思いますが、今後は福島からの発信をどうしていくかを今の取組と合わせて考え、成果を上げていきたい」 
「川内原発の再稼働に福島県民は反対するんだということで、ふくしま復興共同センターは急遽10人の派遣団を送りました。鹿児島県議会が再稼動推進を議決した11月7日午前に鹿児島県庁前で400人を超える抗議集会が開催され、ふくしま復興共同センター代表委員の斎藤富春福島県労連議長が、3年8か月経った福島県の今の実態はどうなっているのかについて聴衆の感情に訴える素晴らしい訴えを行いました。私は、3年8か月経った今なお苦しんでいる我々福島県民にしか出来ない訴えというのがあるということを、ものすごく痛感しました」 
「ふくしま復興共同センター派遣団は鹿児島現地で記者会見に臨みましたが、記者が一番関心を示したのは、我々が持って行った写真パネルでした。その中の1枚に、自殺した相馬市の酪農家が牛舎の黒板に『原発さえ無ければ。僕はもう働く意欲を失いました』という一言を書いていたのを写したものがあったのですが、恐らく鹿児島の記者たちも実態が分かっていなかったのだと思います。だから福島からの発信という問題をどういう形で行っていけば良いのかをもっと議論していく必要があると思います」 
 
<生業訴訟の意義> 
 
 その後、馬奈木弁護士は2014年9月に第4次提訴が行われた生業訴訟の意義について、分科会参加者に向けて噛み砕くように説明していた。 
「福島原発事故による被災者が申し立てているADRは個別救済、すなわち申し立てた人たちが自分たちへの賠償を求めることで、これはこれで必要です。しかし、本気で『脱原発』を求めるのであれば国や東電の責任を追及しなければなりません」 
「福島原発事故の被害者が、避難先において、北は札幌から南は福岡まで全国で19の裁判を提起しています。多くはまだ始まったばかりですが、東電は責任をめぐる議論はしたくない、できれば避けたいという姿勢で臨んでいます。これは正に原賠法(原子力損害の賠償に関する法律)の発想です。原賠法第1条には『この法律は、原子炉の運転等により原子力損害が生じた場合における損害賠償に関する基本的制度を定め、もつて被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資することを目的とする』とありますが、この法律の主眼は『少々被害が出てもお金を払うから原発を稼働させろ』ということです。その枠組みで自分たちが救済を求めているという自覚が無いと、脱原発なんて到底無理です。『福島は原発と共存できないと本気で思っているのですか?』という話です」 
「私たちが取り組む生業訴訟は全体救済、すなわち『経済的利益が人の命や健康より優先する社会はおかしい』という問題提起を行っているのです。『賠償金が積まれれば、それで無かったことにできるんですか』ということです。もちろん、賠償金を支払ってもらわなければいけませんが、それだけで済ませては駄目だということです」 
 
<福島の脱原発運動を結節させよう!> 
 
 脱原発を求める福島の運動について、馬奈木弁護士は生業訴訟第一審の判決が出ると見られる2016年5月頃が結節点になるのではないかと予測する。 
「福島には脱原発を求める様々な運動がありますが、結節点を作れるとすれば、1つは生業裁判で勝ったときでしょう。国の責任が認定されることになるからです。生業訴訟の原告数は現在約4千人ですが、裁判に勝てば第2陣の原告数は桁が違ってくるでしょう。例えば、横田米軍基地の騒音訴訟でも似たような経路を辿っていて、最初は数百人で始まったものが今や延べ約2万人です。生業訴訟第一審で国と東電に過失有りという判断が示される可能性は相当程度高いと見ています。そこが1つの結節点になろうかと思っていて、その頃に向けて運動を作っていく必要があります」 
 
 馬奈木弁護士の提起を受けて、原告と思われる人たちからも様々な運動が提案された。 
「今、賠償問題に取り組んでいる皆さんが共同して、大規模な学習会を継続して開催し、認識や情報を共有していく必要がある」 
「原発立地県に福島県から代表団を次々に送って、福島からの発信を強めなければいけない」 
「福島県をどう巻き込むかが大事だ。福島県が国の方を向くのか、住民の方を向くのかを突いていかなければならない」 
「メディアを含めて情報の発信量が全国で一番多い東京で、原発への関心が薄れているのは問題だ。今や東京では『何人が請求した』といった数字しか掲載されず、福島の被災者1人1人のエピソードなんて出てこない状況だ。だから原発立地県だけでなく、首都圏でも継続的にキャラバン活動みたいなものをやっていく必要もある」 
 生業訴訟の原告たちが今後どのような運動を展開していくのか、東京にいる私もその動きをしっかり注目しなければいけないと思った。 
 
 12月14日の総選挙の結果、自民・公明両党は衆議院定数(475議席)の3分の2を超える議席を獲得した。この結果を受けて、安倍政権は世論の大多数が「脱原発」を求めているにも関わらず、原発の再稼動を強引に進めていくのであろう。 
 安倍政権に対抗していくには、福島における福島第一原発事故被災者を中心とする脱原発運動の存在と、その情報発信がますます重要になってくると思う。ただ、東京にいる私のように福島から離れている者からすると、例えば被災者支援に取り組む弁護団にしてもたくさん存在していて、日頃から注意して見ている人でないと、福島における脱原発の各取組がどういう現状なのか分かりにくい人も多いのではないだろうか(私だけ?)。 
 もし、米軍普天間基地の辺野古移設反対という1点で保守・革新の違いを超えて沖縄県民がまとまり、翁長雄志さんを沖縄県知事に当選させた「オール沖縄」の運動のように、脱原発版の「オール福島」みたいな運動が構築されれば、福島から離れたところに住む人たちの関心度も変わってくるかもしれないし、全国の原発立地県で脱原発に向けて頑張っている人たちにとっては希望の光になるように思う。そのような動きが始まることを期待したい。(坂本正義) 


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