2014年12月28日21時55分掲載  無料記事
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労働問題

中国・ユニクロ関連企業の争議、山場へ ユニクロへの出荷確保のため労働者31人を逮捕

 ユニクロに製品を供給している(サプライヤー)中国・深センの企業「アーティガス社」での争議(本紙既報)は現在もつづき、警官隊が導入されて31人が逮捕されるという事態にまで発展している。逮捕された労働者は現在釈放されているが、警官隊の暴行によって1人が重傷を負ったという情報もある。今月19日、ユニクロはウェブサイトで早期の事態解決にむけ対応するとした声明を出した。会社側は労働者の要求に対し12月29日に回答をすることを約束、現在労働者は職場に復帰しているが、回答次第で抗議行動はさらに広がる可能性もある。以下、現地労働団体と連絡を取りながら、この問題を追跡している横浜アクションリサーチの情報をもとに、これまでの経過を整理した。(大野和興) 
 
◆ユニクロシステムの闇 
 ユニクロは自社工場をもたず、主として中国の数十ヵ所の工場に製造委託をしているが情報開示をしていないので、サプライチェーンの実態は不明である。今回のアーティガス社の争議は、闇のなかのサプライチェーンの一端を浮かびあがらせている。 
 19日、ユニクロはウェブサイトに声明http://www.fastretailing.com/jp/csr/news/1412191300.html 
を掲載し、取引先企業の労使紛争に関してコメントする立場でないが早期の事態解決にむけ対応するとした。しかしながら、ブランド企業の納期や品質の厳しい要求が、サプライチェーンの過酷な労働を生み出しているということは世界的認識となっており、ユニクロの責任は重い。ユニクロの厳しい納期が、警察を投入してまで船積みを強行したとも考えられる。 
 
 
◆発端 
(12月1日) アーティガス社の労働者、1000人以上が会社側に社会保険料、住宅積立金(会社と労働者が労働者の住宅取得のために毎月同額の積み立てをする社会保障制度)追納の要求書提出、12月8日までの回答を求めたが、会社側は回答せず。アーティガス社の労働者たち(大部分が女性)は、所定の社会保険料などの支払いをもとめ、会社に団体交渉を設定するように要請したが、会社から回答がないため、12月10日から1000人以上の労働者がストライキに突入。ユニクロ製品が船積みのために工場から搬出されるのをストップさせようと、工場のゲート前に夜を徹してピケをはった。香港のHKCTU(ICTU加盟の香港職工会連盟)傘下のRCCIGU(香港小売・商業・衣料品製造一般組合)は中国ユニクロに要請文 
http://www.labornetjp.org/news/2014/1223yuni 
を出すと同時に、日本のUAゼンセンを通じてユニクロ本社へコンタクトした。 
 話し合いの前日、17日には、香港のNGO・SACOM(企業の不当行動に反対する学生と研究者)のよびかけで、香港の労働組合・労働NGOはアーティガス社が製造委託を請け負っているブランド企業、ユニクロと香港資本のG2000の店頭で抗議行動をおこなった。 
 
◆警官隊 
 18日の朝。会社側弁護士との話し合いの直前、武装警官200人余がユニクロ製品を運びだすことを手助けするために、ストライキ中の無防備な労働者を襲う。暴力をふるい、重傷者1人を含む多数労働者に傷を負わせ、31人の逮捕を強行した。労働者は12時間後、18日深夜に釈放されたが、この蛮行に対して労働者は抗議声明 
http://www.labornetjp.org/news/2014/1224yuni 
を発表。翌、19日には香港および海外の団体多数も共同で緊急アピールをだし、(1)労働者への暴力、解雇、懲罰などの行為は紛争の解決に役立たないのでストップすること(2)労働者が選んだ代表との団体交渉をスタートすることを強く主張した。 
 
◆争議経過 
(12月10日)労働者、ストに突入 
(12月11日)会社側、製品の出荷を手配するが、労働者は工場の門を固め、出荷を阻止 
(12月15日)労働者側弁護士、会社側に団体交渉を要請。会社側弁護士、12月18日朝の団交を約束 
(12月16日)RCCIGU書記長、中国ユニクロCEOに3項目<要請文> 
(12月17日)HICTU,SACOMなど香港の10団体が、G2000、香港のユニクロ店頭で連帯抗議行動 
(12月18日)朝8時、200人以上の武装警察が工場へ突入、暴力を行使、主要メンバー31人を拘束、負傷者多数、1人重傷。労使双方の弁護士が交渉に入る直前に警察が入り、信頼関係は破壊された。アーティガス労働者は<抗議声明>を発表。警察は拘束者に対 
してストライキを中止するように脅かす一方で、会社は拘束されなかった労働者に対して、仕事への復帰、会社側が決めた労働者代表への投票、誓約書への署名を強要した。復帰した労働者には1日100元の割増賃金を支払うとした。労働者はこれらの強要を拒否、拘束者は12時間後、18日深夜に釈放された。 
(12月19日)ユニクロ、G2000 、ストライキ問題について<声明>発表。RCCIGU, HKCTUなど香港・海外の団体多数が<緊急アピール>を発表 
(12月22日)会社は労働者へ職場復帰をするように言うだけで団体交渉には応じない態度をとっていたが、この日、労働者側弁護士と2人の労働者代表と裁判所で協議をするこ 
とになった。 
(12月23日)午後、会社側、総工会、地方政府は、労働者に代わって労働側弁護士と交渉することを承諾したため、労働者は職場復帰に同意した。 
(12月24日)HKCTU、SACOMなど20以上の団体が、香港のユニクロとG2000に対して、アーティガス社に解決を促すように指導するように要請行動。午後、会社側と労働者代表の交渉がおこなわれ、会社側は労働者の要求に12月29日に回答すると、約束。SACOM、ユニクロに<要請文>。 
 
◆現在 
 アーティガス社は労働者に職場復帰を強いるだけで、団体交渉は地方政府がバックアップをする中国総工会支部とすることを主張していたが、紛争の早期解決を促すユニクロからの圧力や労働者への国際的サポートもあり、労働者側弁護士と交渉することに12月23日に同意したので、労働者も職場復帰を受け入れた。 
 
 12月24日、HKCTU、SACOMなど団体が、サンタクロースやサンタ帽子で、再度、ユニクロの店頭で抗議行動をおこない、(1)アーティガス社が労働者に暴力行為や脅しをかけないこと、(2)アーティガス社が公正な団体交渉をするように指導することを要請した。 この日の午後には、会社側と労働者代表の交渉がおこなわれ、会社側は労働者の要求に12月29日に回答すると約束した。HKCTUなどは状況を注視し、不満足な内容ならば31日に行動を起こす予定だという。 


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