2014年12月31日21時56分掲載  無料記事
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政治

“この道”は、危なさを遥かに超えている 池住義憲

 安倍政権が12/14衆院選で言っていた”この道”は、予想通り、危なさを遥かに超えています。本日(12/29)付朝日新聞朝刊のトップは、「他国軍後方支援へ恒久法」との大見出し記事でした。安倍政権は、自衛隊の海外派兵を迅速に行えるようにし、来年4月統一地方選後の5月連休明けの国会で恒久法としての新法案を提出して審議入りを狙っています。 
 
■自衛愛隊海外派兵恒久法? 
 
 予想される新法案の骨子は、こうです。1)戦争・紛争地域であっても派兵時に戦闘行為が行われていなければ自衛隊を派兵できるようにすること、2)外国軍(米軍)への物資補給や輸送など後方支援活動をできるようにすること。 
 
 国連安保理決議に基づく活動は勿論、それがなくても”イラク戦争”(正確には『米国主導によるイラクへの軍事侵略戦争』)での”有志連合”のような活動にも、です。自衛隊を海外に派兵できる条件を大幅に緩和する、派兵対象地域の範囲も大幅に拡大する、活動内容も大幅に拡大する、というのです。 
 
 私たち主権者は、政府に対して、軍備を持たず、軍事行動をしない方法で国際平和実現の途を追求する平和政策の遂行を法的に義務付けています。主権者の一人として私は、”この道”を受け容れることができません。 
 
■18本といわれる戦争立法が・・・? 
 
 福島瑞穂さんの12/27付メルマガ(国会大あばれ)に、安倍政権が来年5月連休明けに一括提出、一括審議、一括成立しようとしている10数本の法律が書かれてありました。内閣官房資料からのようです。憲法解釈変更によって集団的自衛権行使を容認したのが、7/1の閣議決定。その閣議決定内容を「法的に可能」とするための安全保障法制を整備しようとするものです。6月末の一括強行採決、一括成立を目論んで。 
 ・自衛隊法 
 ・武力攻撃事態対処法 
 ・国民保護法 
 ・特定公共施設利用法 
 ・米軍行動関連措置法 
 ・海上輸送規制法 
 ・捕虜取扱い法 
 ・国際人道法違反処罰法 
 ・海賊対処法 
 ・周辺事態安全確保法 
 ・船舶検査活動法 
 ・国際平和協力法 
 ・国際緊急援助隊法 
 ・派遣処遇法、ほか 
 
 これは、まさに「戦争立法」。一括提出時期の来年5月連休明けは、丁度、「日米防衛協力のための指針」(日米ガイドライン)の最終報告が出される頃と一致しています。10数本の法律改正案はいずれも、この最終報告の内容と方向にリンクされるものです。 
 
 以下、やや長文ですが大切なことなので、「福島みずほの国会大あばれ」2014/12/27号の後半部分を貼付・引用しておきます。よいお年を! 
 
(貼付・引用、ここから) 
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第1 集団的自衛権の行使 
 
1.集団的自衛権の行使を認めるためには、少なくとも武力攻撃事態対処法と自衛隊法を改正しなければなりません。集団的自衛権の行使は、違憲とされてきました。安倍内閣は、閣議決定で、集団的自衛権の行使を容認し、新3要件を作りました。この3要件を法案に入れ込むことになるでしょう。7月の予算委員会で、公明党の北側議員は、法案に入れると答弁をしています。文言は、以下のようなものをそのまま入れることになるでしょう。 
 
「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容される。」 
 
 政府は、集団的自衛権の限定容認について、国家安全保障基本法は制定せず、個別法の改正で対応する方針と報じられており、自衛隊法第76条(防衛出動)の改正及び日本有事に関する法制(武力攻撃事態対処法等)の改正が想定されます。 
 
 戦時におけるホルムズ海峡での機雷除去を認めるかどうかの議論に関連して、国内法整備の際に自衛隊の活動に地理的制約を認めるかどうか(日本周辺に限定するかどうか)が検討されているとの報道があります。 
 
 武力行使に当たらない平時における弾道ミサイルの破壊措置や停戦合意後の機雷(遺棄機雷)の除去については、自衛隊法第82条の3、第84条の2に明文の規定があり、集団的自衛権の行使(武力行使)に当たり得るミサイル迎撃や敷設機雷の除去を認める場合には、当該規定との関係をどのように整理するかも立法技術上の課題になる可能性があります。 
 
 集団的自衛権の行使としての強制的な停船検査を認める場合には、海上 輸送規制法や周辺事態船舶検査活動法との関係を整理する必要が出てくる可能性があります。 
 
第2 他国軍隊への後方支援の見直し、駆けつけ警護の容認など 
 
1.最大の問題は、恒久法を作るかどうかです。テロ特措法やイラク特措法はいずれも失効しており、自衛隊を海外に出す恒久法が作られるかどうかが最大のテーマです。自衛隊がグローバルに活動でき、つまり地理的制約なしに活動ができ、後方支援の範囲・内容をより広げた形での新規立法が検討されています。 
 
 米軍戦争支援法(実際の法案名は、国際平和構築法といった、わかりにくい名前にわざとするでしょうが)といった恒久法はまさに違憲であり、新たな個別の立法なくして自衛隊を海外に出すものであり、大問題です。 
 
2.他国軍隊への後方支援では、「武力行使との一体化」論は前提とした上で、従来の「後方支援」や「非戦闘地域」といった枠組みは止め、他国軍隊が「現に戦闘行為を行っている現場」以外での補給・輸送等の支援活動は可能であるとし、必要な法整備を行うでしょう。これが、「第2の1.」で述べた恒久法になるかどうかが問題です。 
 
3.我が国として、「国家又は国家に準ずる組織」が敵対するものとして登場しないことを確保した上で、国連PKO等における「駆け付け警護」に伴う武器使用及び「任務遂行のための武器使用」のほか、領域国の同意に基づく邦人救出などの警察的な活動ができるよう、法整備を進めるでしょう。 
 
 国連PKO等における「駆け付け警護」に伴う武器使用及び「任務遂行のための武器使用」については、現行のPKO協力法の改正等が行われる可能性があります。また、邦人救出などの警察的な活動については、自衛隊法第84条の3(在外邦人等の輸送)、第94条の5(在外邦人等輸送の際の権限[武器使用等])、第95条(武器等防護)の規定などが改正の対象となる可能性があります。 
 
 他方、PKO協力法を発展的に解消し、「第2の2.」や「第2の3.」の内容を幅広く含んだ形で国際平和協力の一般法を新たに制定しようとする可能性もあります。PKO協力法の改正で行う可能性もあります。 
 
第3 武力攻撃に至らない侵害への対処 
 
1.離島周辺などでの不法行為に対応するため、自衛隊による治安出動や海上警備行動の発令手続の迅速化を図るための方策を具体的に検討するでしょう。離島周辺などでの不法行為への対応について、政府は、自衛隊による治安出動や海上警備行動の発令手続を迅速化するための運用改善を検討するとし、現時点では法整備は必要ないとしています。他方、領域(領海)警備法を新たに制定すべきとの主張もあります。 
 
2.自衛隊法95条(武器等防護)の武器使用の考え方を参考としつつ、自衛隊と連携して我が国の防衛に資する行動を行っている米軍部隊の武器等を防護するために、自衛隊が武器使用することが可能になるように法整備を行うでしょう。自衛隊法第95条の改正、又はその前後の条文追加などが考えられます。 
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(貼付・引用、ここまで) 


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