2015年02月22日14時22分掲載  無料記事
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コラム

新聞・メディアと大学人 いつも同じ面々なのはなぜ?

  先のコラムで筆者はフランスの襲撃事件に対するメディアでの歴史的な説明が不十分ではないか、と指摘した。仏文の研究者は無数にいるはずだが、彼らの見識はほとんど何一つ世に出てこなかった印象だ。 
 
  この傾向はCharlie Hebdo襲撃事件だけではなく、近年広く一般化している現象ではないかと感じている。イスラム世界の研究者はわが国に何人いるのだろう。だが、メディアで声明を出したり、説明をしたりする大学人はいつも一握りの決まった顔ぶれになっている。この現象には2つの側からの事情があると思う。 
 
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  ▲瓮妊ア側の事情 
 
  大学人側の事情としては〜想像にすぎないのだが〜新聞やテレビなどで発言することに対するリスクが高まっているのではないか、という仮説である。特に政治的な発言に対してである。このことは国立大学法人化以後、学長の権力が増しており、教授の連携である教授会の権力が相対的に減退してきているため、不用意な発言によって学長の心証を悪くして大学にいられなくなるのではないか、あるいは、研究室の予算などに影響するのではないか・・・そうした懸念があるのではなかろうか。もちろん、底には研究予算を文部科学省が競わせて予算を重点的に配分する今の仕組みがある。学長の後ろに、文科省があるのであり、彼らの心証を害しては研究が進まなくなる、という心配があるのではないか。しかし、そうなると大学の研究は誰のためのものか、という根源的な疑問に直面するだろう。 
 
  さらに、最近指摘されることだが、教授の世襲化率が高まっているのではないか、という仮説である。世襲化率のデータがないので推測に過ぎない。しかし、もし世襲化がトレンドになっているのなら、自分個人の発言によって子供のポストにも悪い影響を与えてはならないと思うのが親の情だろう。子供や甥や姪が人質に取られているのだ。こうした大学人の側の事情によって、発言する母数全体が減少しているのではないか、という仮説である(真実かどうかは検証が必要だ)伝統工芸の世界のように、大学人も世襲制の職人の世界になりつつあるのかもしれない。 
 
  こうした中で頻繁にメディアに登場する大学人は左右いずれも知名度があり、メディアに露出することで本の宣伝効果もあげられる人が少なくない。また、退官していない現職教授であっても、一定の知名度があれば仮にその大学で失職しても人気教授であれば簡単に再就職の口はあるだろうし、著述業や講演も収入源にできるという意味で、学長や文科省の圧力を無視しうる個的な力を持っているのである。こうした大学人たちが自分の専門領域を超えて森羅万象にコメントをしている傾向があり、啓発される論も少なくないが、現実を知らないが故の愚論も多い。 
 
  一方、メディア側の事情である。イケ面・美人で、視聴率が取れて、名前が知られていて、短い分数で面白く刺激的に話ができる人が求められる傾向にある。さらに、メディア側の人々が忙しくて、本を読む時間が十分に持てず、知っている大学人の数が少ないことがあるのではないか、これらは仮説である。20年くらい前だったが、AERAが別冊で政治学や自然科学など、ジャンル別に様々な大学の研究者を紹介したシリーズを作ったことがあった。また、出版社が哲学・思想家のシリーズを出した時に様々な研究者がそこに参画することで、研究者について広く知るチャンスが持てた。しかし、最近、そうした動きは減っているのではないか。大学の中のことがますます見えなくなりつつある。いったいどこにどんな研究者がいるのか。それを理解するには大学のウェブサイトを縦断するしかないのかもしれない。 
 
 もう一つあげるなら、一定の筋書きを裏切る発言をされては困る、という意味で発言が読める(推測できる)教授ということになるだろう。構成台本にうまくはまる、わかりやすい言葉が欲しいのだ。 
 
  これらは仮説に過ぎないのだが、1つ言えることは大学人によるメディアへの貢献が総じて平板で底の浅いものになっている印象である。情報性に乏しく、偏ったものになっている印象である。それはそれらのメッセージを受け取り、その価値を理解する側の質的な問題でもある。実際には多様で的確な視点を持った知られざる大学人が津々浦々に相当数存在して宝の持ち腐れになっているのではないか、と筆者は思っている。 


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