2015年03月14日12時25分掲載  無料記事
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国際

【北沢洋子の世界の底流】「エボラ危機」は開発援助の失敗

 いわゆる「エボラ危機」は、単なるアフリカ固有の疫病ではない。危機の根源は、南北間の埋めがたい格差にあり、それは半世紀の及ぶ開発援助の失敗である。それは、今から1年ほど前にさかのぼる。西アフリカのギニアで保健省とNGOの「国境なき医師団」のもとに、ギニア南部の僻村で活動している医療スタッフから奇病が発生したという報告が届いた。 
 
 一週間後にはこの奇病がエボラ熱でることが判明し、国境を越えてリベリア、シエラレオネに広がっていることが判明した。 
 
◆エボラ熱の根源は複雑である 
 
 エボラ熱の最初の患者で、最初の犠牲者は、幼児のEmile Ouamounoであった。彼の死後に「患者ゼロ」と呼ばれた。まず、エボラ熱のウイルスの運び手はジャングルに住むこうもりであるとされた。なぜなら、ジャングルに住む人びとはこうもりを食用にしているからだ。しかし、原因はこうもりだけではない。 
 
 エボラ熱のような疫病は、単純な原因はなく、それは非常に複雑である。その根源は環境、社会、経済、社会、政治の要因が絡み合っている。 
 
 そして、Emile の死後、エボラ熱のウイルスは、人から人へと感染していった。これは、病院、自宅療養、死者の埋葬などで感染した。今回のエボラ熱は、その規模、期間、スピード、面積、死者の数、生活用品の損失などにおいて、前例のないほど大きい。 
 
◆エボラ熱を取り巻く環境 
 
 エボラ熱の流行に襲われたギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国は、過去に激しい内戦を経験、または余波を受けてきた。そして、IMF、世銀など開発援助のドナーから厳しい構造調整プログラムを強いられてきた。 
 
 エボラ熱派生の以前には、経済指標では、3カ国は経済成長を記録していた。しかし、これは、国内の格差を拡大させ、外国資本投資に利益を与え、公共サービスを停滞させ、雇用増大につながらなかった。 
 
 また西アフリカの貧しい国ぐにでは、土地収奪(Land Grab)が起こっている。これは外国背本や外国政府によって行われている。収奪された土地は、外国の食糧や燃料の生産に向けられる。中でも、ハイブリッドのパーム椰子のプランテーション栽培はバイオディーゼルの需要の高まりとともに急速に拡大している。 
 
 西アフリカでのパーム椰子のプランテーションの拡大は大規模な環境破壊、野生動物の生息の変化をもたらしている。エボラウイルスの運搬者(キャリアー)であるこうもりも同様である。野生動物たちは、環境の大幅な変化に直面して、渡り鳥の移動、食料調達の範囲などを変えざるをえなくなった。そして、これは人が彼らに接触するリスクを高めた。エボラ熱の流行は、このように始まった。 
 
 エボラ熱はジェンダー・バイアスである。3カ国のエボラ熱患者の4分の3は女性である。 
 これは家族のために食糧生産、国境にまたがる交易、自宅での患者の看病、死者の埋葬などの仕事が女性によって担われているからだ。特に国境閉鎖措置は女性の経済活動に打撃を与えた。 
 
◆エボラ熱危機からの教訓 
 
 緊急に必要な措置は、グローバル、および国内での医療制度の改善と予算の拡大である。 
 
 とくに今回の危機で明らかになった国連WHOの予算不足と弱体は著しいものがあった。早急に対処すべきである。貧しい国ぐにでは、構造調整プログラムによる医療・公衆衛生の予算削減をやめ、むしろ増大すべきである。これは、先進刻においても同様のことが言える 
 
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国際問題評論家 
Yoko Kitazawa 
url : http://www.jca.apc.org/~kitazawa/ 


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