2015年04月02日14時00分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201504021400404

国際

【北沢洋子の世界の底流】南アフリカのCOSATU(労組連合)の分裂

 昨年12月20日、南アフリカ最大の労組連合COSATUの年次大会がボクスバーグで開かれた。ここで、COSATUの最大の加盟労組である金属労組(NUMSA)が追放された。これは、95年以来、ポスト・アパルトヘイトで続いてきた南アフリカ民族会議(ANC)、南アフリカ共産党(SAPC)、労組のCOSATUによる三位一体の危機であり、さらにそれぞれの内部の危機を物語っている。 
 
◆南アフリカの三位一体 
 
 ここで南アフリカの統治機構である三位一体について、解説しよう。 
 ANCは、1912年に設立された最も古い反アパルトヘイト運動である。1961年、「Umkhonto We Sizwe(民族の槍)」という武装勢力を組織し、武装闘争を開始したが、ほとんど逮捕された。その中にネルソン・マンデラがいた。ANCは彼を象徴的リーダーとして、非合法下でアパルトヘイトと闘ってきた。 
 
 しかし、ANCの指導部の大半は、30年近く、国外にあった。国内で実際に闘ってきたのは、スチーブ・ビコが指導した黒人意識運動(BCM)や南アフリカ黒人学生機構(SASO)、そして、黒人労働者の鉱山労組(NUM)や金属労組(NUMSA)であった。これらは大体、1980年代に設立された比較的新しい組織である。 
 
 共産党(SAPC)は、ANC指導部の中核である。SAPCの設立は1921年と古い。指導部に白人が多いのが特徴である。 
 労組連合のCOSATUも85年に設立された新しい組織である。しかし、COSATU設立以前、鉱山労働者の山猫ストライキの歴史は古い。COSATUの加盟団体は21労組で、加盟総数は180万にのぼる。加盟労組内では、金属労組(MUMSA)が34万人、鉱山労組(NUM)が30万人とずば抜けて大きい。 
 
 アパルトヘイトを崩壊させたのは、COSATUに結集した黒人労働者の闘いであった。それは古くから非合法のストライキを続けてきた金鉱労働者、そして、南アフリカの工業化とともに、自動車、電機産業などの労働者のストライキであった。 
 実は、アパルトヘイトが崩壊した94年に、ANCが政権の座に着いたとき、COSATU内部で政権に参加するか、否かを巡って議論があった。結局参加したのだが、同じように、アパルトヘイトと闘ってきた黒人学生組織(SASO)は、ANC政権下にあっても、学生の闘いは終わらないと言うことで、参加しなかった。 
 
 21世紀に入って、ムベキ大統領のネオリベラルの政策によって、南アフリカでは、格差が拡大した。これに対して、COSATU内で、ラジカルな闘いを要求する声が高まってきた。 
 
 同時に、南アフリカ国内で、新しい社会運動、コミニュティ・キャンペーンが生まれた。労組はこれら草の根の運動と連帯すべきだという声があった。 
 COSATU内でそのような声を挙げたのは、NUMSAであった。「COSATUは三位一体から脱退すべき」だと言うのだが、その理由は、「共産党が労働者の階級闘争を放棄したから」というのであった。 
 
 NUMSAは、「COSATUは、独立性を失って、三位一体の中で、周辺化され、ANCとSAPCの付属物になっている。政府のネオリベラルな政策にゴム印を押すだけだ」と言う。このままでは、COSATUは、「賃上げや労働条件の改善などの伝統的な闘い、それに、労働者の失業、外注化、雇用の不安定化、民営化、商品化などに対して闘うことが出来ない」と言う。 
 
 NUMSAは「KOSATUが2012年以来、ドイツの「全国最低賃金」制度の南アフリカでの導入を提唱していながら、全く実現していない、ことを批判した。COSATUが提唱して、政府の政策になった「再建・開発プログラム(RDP)」についても同じことが言える。これは、南アフリカの社会を根本的に改革しようとするものだったが、「現在では、役所の棚でほこりをかぶっている。 
 
 COSATUが抱える古い問題がある。それは、COSATUの指導者たちが、いくつもの帽子をかぶっていることである。例えば、COSATUのSdumo Dlamini委員長は、同時に、SAPCの中央委員であり、ANCの全国執行委員会(NEC)のメンバーである。例えば、COSATUが、政府のハイウエイ料金の支払いの電子化に反対する立場をとっても、ANCのNECが「イエス」と言えば、反対出来ない。 
 
 ANCとSAPCは、「COSATUが政治化している。労働組合の本来の仕事に戻るべき」だと言う。これは三位一体の一員としては、受け入れ難い発言である。 
COSATU内で、NUMSAを批判しているのは、「公務員労組(SAMNU)」である。これは「教員労組、警官・看守労組(POPCRU)」、「国立病院職員労組(NEHAWU)」などが加わる。そして、ますます右傾化している。 
NUMSAは、新しい公務員労組の組織化が必要だと、唱えている。実際、現場では公務員のストライキが起こっている。南アフリカでは、大規模な公務員のストライキが2007年と2010年に起こっている。また公務員国際労組連合である「International Publc Sector Union」は左傾化し、緊縮政策に反対している。これらの傾向は、「公務員労組は自国の政府に反対出来ない」という足枷を打ち破っている。南アフリカの公務員労組の問題は指導部にあり、メンバーではない。 
 
◆統一戦線の結成 
 
 NUMSAは、昨年12月、第1回ピープルズ総会を開いて、「統一戦線(United Front)」を設立した。そのスローガンは、「Kwanelo Kwanelo!(もう沢山だ)」であった。そして、2016年の地方選挙に備えている。しかし、統一戦線の中で、NUMSAはあくまでも労働組合としてあり続け、政党にはならない。 
 
 これは、NUMSAのKarl Cloete書記長代理に、昨年12月19日にヨハネスブルグでインタービューした記事の抄訳である。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。