2015年05月16日09時00分掲載  無料記事
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コラム

市民運動と「楽しさ」 ベトナム戦争終結から40周年

  今年は2015年、あの1975年のサイゴン陥落から40周年。つまりベトナム戦争終結から40周年ということで、そうしたドキュメンタリー番組が何本か作られています。 
 
  40周年と聞くと、そうか・・・とため息が出ます。もうベトナム戦争を同時代に経験した人は40歳以上ということになるからです。第二次大戦となると、70歳以上というわけです。戦争は遠くなりにけり、です。 
 
  私は第二次大戦は未経験ですが、ベトナム戦争終結の時は10歳だったわけで、その時代の空気は子供心に経験しています。少年の漫画週刊誌でもベトナム戦争を扱う漫画が登場しました。たとえば川崎のぼる氏が日本人の従軍写真家を主人公にした漫画を描いていました。主人公が米兵の虐殺から子供たちを守ろうと銃弾に身をさらして蜂の巣になって死んでいくのがラストシーンだったのを覚えています。また、思い出す限り、テレビで最初に触れた映像が米爆撃機がベトナムを空爆する映像でした。 
 
  あの戦争では日本国内でもベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)という市民運動が立ち上がり、作家の小田実氏らを始め多くの市民が参加していたのを記憶しています。とはいえ、こちらの方は戦争が終わって何年もしてから後で知ったことでした。「小田実全仕事」というシリーズの本に彼のその当時の経験と思索がつづられていました。 
 
  市民運動は参加する人々が楽しいものにならなければ持続することはできない、と小田実氏は綴っていました。1度や2度ならデモに参加してくれる人はいるけれども、一方的に運動家から命令されてばかりだとか、小難しい理屈ばかりだと週日仕事で忙しい市民はとても継続することができない、と言うのです。 
 
  ベトナム戦争は他国の戦争でありましたが、沖縄から米軍機が発進していく、ということで日本の戦争でもありました。そのために神奈川県の米軍基地周辺でも戦車の移動を止める市民の反戦活動が起きていました。 
 
  こういったことは10歳の少年だった私には同時代では知りえなかったことで、これらについては後になって、本を読んで理解するようになりました。この頃、「市民運動」という言葉が大きなキーワードだったようです。 
 
  最近、安倍政権の憲法改正や安保法案へののめり込み方に危惧を感じて、ネットでも反戦を軸とする様々な声を見ますが、その多くは市民のデモの参加者が少なすぎる、日本人は政治に関心がない・・・と言った言葉です。それでも40年前の日本はもっと熱かったのではないか、という気がしています。では、その40年間にいったい日本人に何が起きたのでしょうか。 


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