2015年06月24日01時17分掲載  無料記事
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労働問題

派遣法、参議院へ 働くものから仕事を奪い、使い捨てを徹底 上林裕子

 多くの派遣労働者が見守る中6月19日、「労働者派遣法改正案」が衆議院厚生労働委員会で可決、その日のうちに本会議で採決され、参議院に送られた。改正法はこれまで『業務単位』だった期間制限を『事業所単位』『個人・組織単位』とした。派遣を派遣のまま安価に使い捨てたい企業の思惑通りの改正となっている。法改正が、派遣でありながらも懸命に生きる人々から仕事を奪い取る。こんな苛酷な法改正を許してはならない。 
 
 業務単位の場合は、3年経つとその業務で派遣が使えなくなるため直接雇用につながる。しかし、事業所単位、個人・組織単位の場合、派遣労働者がとり替えられるだけで、企業はその業務で派遣を使い続けることができる。 
 
 また、これまで期間制限のなかった専門26業種も一般派遣との区別をなくし全ての業務で3年が区切りとなる。これまでは派遣であっても10年、20年と専門職として働いてきた人たちも3年で雇止めとなる。実際に「法改正となれば法令順守にのっとり、3年後には解雇せざるを得ない」と派遣元から通告されたシングルマザーの女性は「不安で夜も眠れない。子ども2人を抱え、一家心中も考えている」と訴えている。 
 
 政府は改正法を9月1日には施行したいと考えている。その理由は、現行法第40条に定めた「労働契約申し込みみなし制度」が10月1日から施行されるからだ。 
 この制度は、「派遣先企業が『違法な派遣』であると知りながら派遣労働者を受け入れている場合、その違法状態が発生した時点において、派遣先企業が派遣労働者に対して、派遣会社における労働条件と同一労働条件を内容とする労働契約の申し込みをしたとみなす」という制度。 
 
 現行法は12年の10月に施行されたが、「労働契約申し込みみなし制度」は周知の期間が必要であるとして今年10月から施行されることになっていた。 
 
 昨年の法案審議では全く問題にならなかったこの「10.1問題」がなぜ今回問題となったのか。昨年は審議未了で廃案になってしまったが、当初施行日を今年4月に設定していたため、10月前に施行となるので問題はないとしていたのだろう。しかし今国会で成立しなかった場合、「みなし制度」が施行されてしまうため、厚労省は施行前の9月に改正法案を成立させようと「改正法案が成立せずに平成27年10月1日をむかえた場合の問題(いわゆる『10.1問題』)」とする資料を議員に配っていたのだ。国会で追及された局長は当初、かばんに資料を入れたことは認めたが配布したか否かは「記憶にない」としていたが、その後の委員会で配布したことを「思い出した」と述べている。 
 
 野党議員が問題視しているのはその文面だ。資料の一番上には「経済界等の懸念」として「専門26業務に該当するかどうかによって派遣期間の取り扱いが大きく変わる現行制度のまま、労働契約申し込みみなし制度が施行されることを避けたい」とし、現行法のまま10月をむかえたならば「労働契約申し込みみなし制度のリスクを避けるため、派遣先が10月1日前に26業務の受け入れをやめるために(1)大量の派遣労働者が失業(2)派遣事業者に大打撃G標先は人材確保できず経営に支障」と説明する。 
 
 経済界の懸念をおもんばかった資料に、野党側からは「厚労省は労働者の保護を第一に考えるべきではないのか」「派遣労働者が直接雇用されたいからと故意に26業務以外の業務を行うとの例示は、派遣労働者に対し、失礼ではないか」などの指摘があり、塩崎厚労相に謝罪を求めた。同相は不適切な資料を配布したことを認め、委員会と厚労省の記者会見で謝罪した。 
 
 5月28日の厚労委員会で参考人として意見陳述した自由法曹団常任幹事の鷲見賢一郎弁護士は、「改正法案では40条の4項、49条の2項など、直接雇用に向けた条文は削除された。10月1日に施行されるはずだった40条の6項の『労働契約法申し込みみなし制度』を、3年待たせたあげくに適用しないのは、労働者への裏切り行為だ」、改正案はまさに、派遣が激増する「正社員ゼロ法案」であり、低賃金・不安定化を拡大すると指摘する。 
 
 派遣労働者は現在126万人と言われ、その6割が女性。また、専門26業務に就いている人は40万人でその8割が女性だ。国会で参考人陳述を行った派遣労働者の女性は「専門職の人達は不安定ながらも、今慣れ親しんだ仕事・職場があるのになぜなくすのかと訴えている。実際、新しい派遣先はそう簡単に見つからないし、40〜50代になると待遇が悪くなる。専門職40万人が路頭に迷う」「これはおおげさではなく、命の危機の問題」と指摘する。 
 
 政府は「女性が輝く国」を目指しているようだが、実態は自分や家族の命を守ることさえできない国なのだ。 


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