2015年07月03日14時07分掲載  無料記事
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アフリカ

【西サハラ最新情報】モロッコ密輸団と過激派組織MOJWAの麻薬商売 平田伊都子

 2015年 6月14日、アメリカ国防省は、13日にリビア東部のアジュダビアで「アル=カーイダに属するテロリスト」に対して攻撃を行ったと発表しました。 東部ベイダに拠点を置くリビア政府のシンニー首相は、この空爆でテロリストのムフタール・ベル・ムフタールが殺害されたと、得々として発表しました。 が、ムフタール・ベル・ムフタールの遺体は何処にあるんですか? ムフタールが仕切る過激派組織MOJWAは何か言いました? 
これまでムフタールは、何度も殺されてきました。 欧米のメデイアは殺害報道を疑ってます。 
 
(1) アルジェリア天然ガスプラント襲撃主犯ムフタールは生きている?: 
 ムフタール・ベル・ムフタールは日本の敵だ。 忘れもしない2013年1月16日の未明、アルジェリアのサハラ砂漠にあるイナメナスから40km西南に離れた天然ガス精製プラントを襲撃した、MOJWA(アルカイダ系武装勢力)の首領なのだ。 襲撃された施設はアルジェリアの国営企業であるソナトラック(英語版)、イギリスのBP、ノルウェーのスタトイルなどによる合弁企業によって経営されており、建設には化学プラントの建造に実績のある日本の日揮も参加していた。 武装勢力は外国人41人を人質にとってメンバーの釈放やフランス軍のマリ軍事介入中止を要求し、施設に立て籠もった。 が、1月21日にアルジェリア軍特殊部隊が突入し、日本人10人を含む37人と襲撃犯29人が死亡した。 日本が誇る企業戦士10人の仇討を目指す神奈川県警は、主犯ムフタール・ベル・ムフタールに逮捕状を出した。 
 <片目の密輸男爵>と異名をとるムフタール・ベル・ムフタールは、誘拐、武器密輸、麻薬密輸などを生業としている。 1972年にアルジェリアのガルダイアで生まれたムフタールは、1991年に義勇兵として参戦したアフガニスタン内戦で片目を失い、帰国後はGSPC(説教と戦闘の為のサラフィー主義者集団)の戦闘員としてアルジェリア政府と戦った。 
 2007年頃、GSPCはアルカーイダとの関係を深め、「イスラーム・マグリブ諸国のアル=カーイダ機構(AQIM)」へと移行し、ムフタールはナンバー2にのし上がるが、2012年に不祥事で組織を追い出され、アフリカ黒人が創設したと言われるMOJWA(Movement for Oneness and Jihad in West Africa)を乗っ取り、アルジェリア人質事件を始めとするテロや誘拐や麻薬密輸で金を稼いでいる。 
彼はどこにいるのかって? マリ?ニジェール?リビア?チュニジア?もしかしてモロッコ?? 北アフリカ砂漠のどこかにいるようだ、、 
 
(2)<モロッコ麻薬男爵>と<片目の麻薬男爵>: 
 2015年6月30日付けのSPS(サハラ・プレス・サービス)はモロッコの<麻薬男爵(麻薬王)>とAQIMアキム(マグレブ・イスラム・アルカイダ)系麻薬過激派との繋がりを証明する数あるレポートの一つを公表した。 ニューヨーク州立大学教授アブデルカーデル。シェリフ博士によるレポートは、「国連専門家が報告しているように、アフリカでの過激派組織と反政府組織が作りあげた密輸ルートは、アフリカのみならず欧米にも危険をもたらしている。 ハシッシ―のルートはモロッコのリーフ山に発し、西モロッコとアルジェリの国境沿いに南下し、西サハラ解放区に入る。多額の賄賂でモロッコ側の警備員や国境監視兵は買収され、密輸の旅は楽々だ。 直接ヨーロッパに密輸されるハシッシ―もあるが、大部分はいわゆる密輸過激派が支配する無法の三角地帯に運ばれる。 三角地帯とはマリ、ニジェール、東モーリタニア、南アルジェリア、南リビア方面を指す。 UNODC(国連麻薬犯罪局)の発表によると、アルジェリアで押収されたモロッコ産ハシッシ―は年々増加の一途を辿り、いまや世界一となった」と、警告している。 博士はこのレポートを6月29日、アブーダビ日刊紙National(ナショナル)の項で発表した。 
 
(3)麻薬密輸団逮捕: 
 2015年6月29日、西サハラ難民軍はモロッコ占領地・西サハラから<砂の壁(地雷防御壁)>を越えて西サハラ難民政府解放区に入り込んだモロッコ密輸団を逮捕した。 密輸団の450kgのハシッシ―と携帯電話数個と2台のピックアップなどを押収した。 写真をみると逮捕された密輸犯の2人は、フードの付いた丈長のモロッコ男性用民族衣装を着ている。 モロッコ産ハシッシ―密輸に関して、UN国連のみならずEUヨーロッパ連合やUSアメリカ国務省も非難し続けてきた。 モロッコは最近になって、他種の麻薬密輸を続けている中南米諸国に急接近している。 
 
 ハシッシ―はアラビア語で<アル・カナビ アル・ヒンディ>と呼び<インドのハシッシ―>を意味します。 インドでは自生のハシッシ―が群生しているそうです。 中南米では、麻薬コカインとなるコカの葉も、コカの林でザワザワと揺れています。 コカもハシッシ―も植物としては合法物ですが、精製した粉末や固形物になると、犯罪物です。 
 ローマ法王フランシスコは7月のボリビア訪問に当たり、コカの葉を噛みたいとボリビア政府に注文しました。(6月28日、ロイター発) ボリビア(標高約4000m)やエチオピアなどの標高が高い地域では、高山病対策のためコカの葉を直接口に入れて噛んだりするそうです。 ボリビアの鉱山重労働者は、入坑するときに頬いっぱいにコカの葉を詰め込み、そのエキスを飲んで、鉱山崩落事故の恐怖を忘れ、疲労や空腹を忘れ、、働かせられると言われてます。 
 イエメンではカートの葉を口一杯に頬張りタンコブを作り、敵味方に分かれて「アッラーフ・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら殺し合いを続けています。 
 
 ローマ法王は、コカのタンコブを作ってどんな説教をされるのでしょうか? 
 楽しみで〜す。 
 
 
文:平田伊都子 ジャーナリスト 写真構成:川名生十 


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