2015年07月18日11時28分掲載  無料記事
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沖縄/日米安保

新外交イニシアティブ(ND)訪米報告会(3)〜沖縄外交の今後の課題〜

 また、猿田佐世ND事務局長は、沖縄県が今後取り組むべき外交として「ワシントン発信で沖縄基地問題を変えるプロジェクト」案を発表した。 
 このプロジェクト案は、 
 
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海兵隊セールス・プロジェクト(海兵隊の受け入れを求める米地方自治体へのアプローチ) 
3な実盧童‘ぅ廛蹈献Дト(在沖海兵隊の展開についての再検討プロジェクト) 
ぅ錺轡鵐肇鵑任寮策提言型大型シンポジウムの開催 
ネ力な米議員、研究者を沖縄へ招致し、辺野古移設に問題があることについて言及してもらう 
 
という5つの柱からなる。猿田ND事務局長は、各プロジェクトについて次のように説明した。 
 
「沖縄外交の今後の課題ですが、その前に考えるべきことは、何が目的で外交をするのかということです。キャンプ・シュワブ・ゲート前での座り込みなど、日米両政府に対して様々な取組をしなければならない中、アメリカにわざわざ時間とお金を掛けて行くのですから、その外交には、ある程度ビジョンを持ち、短期的スパン、中期的スパン、長期的スパンの目的を持ってやらなければならないということを一番訴えたいです。 
 そして、辺野古では今夏にも埋立てが開始されてしまうかもしれないと言われている中では、中期的目標や長期的目標も、短期的目標にちゃんと影響を与えられるような上手い方法で外交政策を作らなければなりません。この3カ月以内に何をする、半年以内に何をする、1年そして翁長さんの任期4年のうちに何をするという視点を持って計画を立てていくべきです」 
 
「一番の短期的目標は、今、アメリカ議会ではこの瞬間も国防権限法という法律が審議されているので、『辺野古が唯一の選択肢』という文言を取り除くことが挙げられます。 
 国防権限法はアメリカの軍事予算を決める法律で、法律と呼びますが予算案と思っていただいて結構です。予算案なので、必ず毎年1回審議されます。毎年2月頃に法案が出てきて、委員会審議があって本会議に掛けられるという流れで進むのは日本と同じです。しかし、日本の場合は衆参どちらかの議院で可決した法案が他方の議院に回るという流れが基本ですが、アメリカの場合は上院と下院で全然違う内容の法案をそれぞれ可決させた上で、両院協議会を開いて両法案をすり合わせて1つの法案にし、再びそれぞれの院に戻して本会議で可決・成立させるという流れです。 
私たちが訪米したときには、国防権限法の下院での審議が終わっていて『辺野古が唯一の選択肢』という文言が入った状態の法案が可決していました。 
 一方、上院では審議初日というタイミングで、糸数先生率いるチームが上院議員にロビーイングを実施したのですが、上院で審議されている国防権限法には元々『辺野古が唯一の選択肢』という文言が入っていないということでした。上院案は、結局その文言が入らないまま6月26日に法律が可決しましたので、今、まさに両院協議会が開催されているところでして、上下両院のどちらの条文でいくのかが話し合われている段階です。 
 『辺野古が唯一の選択肢』という文言が入ったからといって、何かがその瞬間にもの凄く変わるということでもないかもしれませんが、誰がこの文言を入れたのかというのは、確信的な証拠がある訳ではありませんが、皆さん大体想像出来ると思います。 
 いろいろな外交舞台になっているアメリカの議院で決議が上がれば、それは大きなニュースとなって世界中に流れ、その事実を使いたい人たちは自分たちの都合の良いように使っていくというのが1つの外交パターンです。ワシントンとはそういう舞台なのです。その意味では、何としても『辺野古が唯一の選択肢』という文言を取り除かなければなりません」 
 
「もう1つ短期的な目標ですが、翁長沖縄県知事が8月第1週か第2週に仲井眞前沖縄県知事による辺野古埋立て承認を取消・撤回する判断を下すのではないかと言われています。その後には日本政府がどんな法的措置を取るのか、裁判を起こすのか、別の立法を行うのかなどと言われています。 
 それを踏まえて、まずは翁長知事による埋立て承認取消・撤回のタイミングに合わせて、沖縄県がアメリカで何かアクションを起こせるようにすることだと思います。 
 私は、沖縄訪米団が3日間ワシントンで過ごした後、さらに2週間ワシントンに残り、昔の仲間を含めていろんな方に会ってきまして、今後の流れについて話し合ったのですが、『アメリカが動くとすればそこだ』と言う人がいて納得した次第です。そこを1つのタイミングとして、私たちNDも、そして沖縄県も動いていかなければならないと思っています」 
 
「中長期的な目標としては、『日米合意改定を可能にするための環境醸成』の続きになりますが、ワシントンにはワシントンならではの機能がありますので、沖縄県ワシントン事務所がその機能を戦略的に利用し、沖縄の声をワシントンに届けたり、国防権限法から『辺野古が唯一の選択肢』という文言を撤回させたり、翁長知事による埋立て承認の取消・撤回というタイミングに合わせて何か動いたり、『辺野古でなくても良いのではないか』というムードをワシントンの中で高めていくことなどに取り組む必要があります。 
 日本には今、60年来続く外交ルートしかない、すなわち外務省を通じなければワシントンの人たちと面談もなかなか設定出来ない、仲良くなって日々連絡を取り合うことも非常に難しいという問題点があります。大臣や国会議員ですらそうです。 
 アメリカは覇権国、超大国ですから、日々いろんな人がロビーイングをしています。私たちは今回、いわゆるロビイストと言われる人たちとも面談しましたが、その人からは『君たちの今回のロビーイングは良かったかもしれない。でも、明日はウクライナの人たちがたくさん来るかもしれないし、明後日はスーダンの人たちがたくさん来るかもしれない。そうすると、今日皆さんがロビーイングしたことは、明日や明後日には忘れているかもしれない』と言われました。残念ながら、確かにそうだと思います。毎日ロビーイング出来れば良いのでしょうが、そもそも外務省に頼まなければ日程設定が出来ないという現実もあり、簡単には出来ません。文化と言語の違いも簡単なことではなく、意思疎通の齟齬から相手を怒らせてしまったりすることもあります。ですから、沖縄県ワシントン事務所の役割はますます重要になります」 
 
「私は、よく『猿田さんは何がやりたいのですか』と質問されます。私は、ワシントンという超大国・軍事大国の首都を変えられるなんて思っていません。私が変えられるかもしれないと思っているのは、ワシントンの圧力に弱い東京なのです。 
 例えば、東京で5人とか10人が『辺野古移設は止めた方が良い』と声を上げても多分状況は変わらないと思います。でも、ワシントンに30人いると言われる日本屋と呼ばれる人たちのうち、10人が『辺野古移設止めようよ』と言ったら、驚くほど状況が変わる可能性があると思います。もちろん、運動のベースは辺野古で頑張ること、沖縄で頑張ること、東京に向けて頑張ること、国内問題であることは百も承知ですが、1つの方法として、日本屋30人のうちの10人の考えを変える、あるいは、その30人が変わらないなら、別の日本屋30人を作ってしまう。そうすると何か出来そうな気がするのです。 
 実際、私の経験からも、話してみれば『辺野古移設良くないね』という米議会関係者は15人くらい、その中には日本屋よりも有力な人もいらっしゃいます。ワシントンがくしゃみすれば東京は肺炎になるという感じなので、ワシントンの中で『辺野古移設には問題があるのではないか』という雰囲気を醸成して東京に届けることで、東京の情勢を変えていけるのではないかと思っています。 
 そのためにも、翁長知事や糸数参院議員が今回ワシントンでなされてきたロビー活動は続けていかなければなりませんし、しかも、そのロビー活動は『辺野古に基地を作るのには反対します』とだけ言っていては駄目で、国防権限法の条文を変更するといった具体的な提案を行わなければいけません。 
 そして『辺野古移設が唯一の選択肢』という文言を取り除かせるだけでなく、そこに『辺野古以外の案を検討する』という文言を入れさせるようなロビー活動をしなければなりません。予算案を止めるとか、法律案を変えるとか、そういう具体的な指摘が出来るロビー活動を展開していかなければならないのです」 
 
「糸数議員が仰るように、米海兵隊は最終的にアメリカに帰ってもらわなければなりませんが、帰るとしても今のところ代替案はありませんし、アメリカが自発的にそのような研究を行うとはありませんから、どこに一時期でも置いておける可能性があるのかについて、基地が無くなっては困るという地域はアメリカにもたくさんある訳ですから、そういう地域に一時期だけでも米海兵隊を移動してもらうにはどうすれば良いかといったことを沖縄県が研究プロジェクトなどを立ち上げて総力を挙げて研究する必要があります」 
 
「ワシントンという街は、世界中に情報発信するアジェンダ(政策課題)設定能力と拡声器効果という2つの力を持っています。 
 アジェンダ設定能力とは、ワシントンで誰かが『これは問題だ』と言うと、次の日には世界で大きく取り上げられるというものです。ワシントンは『これが今、世界の課題です』と打ち上げるのが得意なのです。ワシントンでは、そうしたことが常に行われていて、日本政府はそれを上手く利用し、シンクタンクやロビイスト等にたくさんのお金をつぎ込んで『集団的自衛権の行使、安保法制というのは直ちに立法化されなければならない』みたいなことを、いろんなアメリカ人に言わせているのです。その力を沖縄県も利用しない手はないでしょう。 
 拡声器効果というのは、例えば今回の沖縄訪米団による訪米行動も、実施しなければ日本の新聞がこんなにも書かないはずです。そして訪米したからこそワシントンポストにも載った訳で、拡声器効果はあったと言えます。 
 アジェンダ設定能力と拡声器効果を使うためにも、沖縄県ワシントン事務所はワシントンでどんどんプロジェクトを実施したり、大型シンポジウムを開催していくことが重要です」 
 
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 翁長知事が辺野古埋立て承認を取消・撤回すると見られる8月の沖縄県そしてNDの動きに注目していきたい。 
 
 なお、NDが取り組むプロジェクトの1つ「日米エネルギープロジェクト」は、7月31日(金)18時から衆議院第一議員会館において、沖縄訪米団ワシントン行動終了後の6月5日から約1週間、、猿田事務局長らND関係者がワシントンやボストンで行った調査の報告会を開催する。 
 報告者は猿田事務局長のほか、長崎大学の鈴木達治郎教授(長崎大学「核兵器廃絶研究センター(RECNA)」センター長)とND研究員の平野あつき氏の3人。日米の原子力政策に関心のある方は是非ご参加いただきたい。(坂本正義) 


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