2015年08月01日23時51分掲載  無料記事
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政治

参院論戦7 「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」 改正される法律を数えてみたら少なくとも19あった…混乱を防ぐために

  今、参院で議論されている安保関連法案(=我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案)はいったいいくつの法律がいっぺんに改正されているのでしょうか。新聞等では10か11あたりの数字を見た気がしますが、参院のウェブサイトで条文を読んで抜き出してみると、以下の法律が改正されようとしています。 
 
(自衛隊法の一部改正) 
(国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部改正) 
(周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律の一部改正) 
(周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律の一部改正) 
(武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律の一部改正) 
(武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律の一部改正) 
(武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律の一部改正) 
(武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律の一部改正) 
(武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律の一部改正) 
(国家安全保障会議設置法の一部改正) 
(道路交通法の一部改正) 
第四条 国際機関等に派遣される防衛省の職員の処遇等に関する法律の一部を次のように改正する。 
(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律の一部改正) 
(武力紛争の際の文化財の保護に関する法律及び原子力規制委員会設置法の一部改正) 
(行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正) 
(サイバーセキュリティ基本法の一部改正) 
(防衛省設置法の一部改正) 
(内閣府設置法の一部改正) 
(復興庁設置法の一部改正) 
 
  もしかすると、漏れがあるかもしれませんが、これだけでも19の法律です。思った以上に多くの法律が関係していました。中には単語が1つだけ付け加わるケースもありますが、そうであっても法律は互いに関連しあって運用されていきますから、予想以上に多くの法律が改正されようとしていることがわかります。 
  法案には道路交通法の改正まで盛り込まれています。サイバーセキュリティ基本法の改正に至っては文言が抽象的すぎて、いったい何が行われるのか、もやもやしています。 
 
  しかし、細かい枝葉を忘れれば、今回の改正の大きな柱は少なくとも3つあるのではないでしょうか。いすれも内閣が解釈改憲で集団的自衛権を認めたことによって、それらの法改正に着手しようとするものです。 
 
ー衛隊法の改正 & 武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律の改正 
 ⇒(従来の事態に「存立危機事態」が加わる) 
 
⊆辺事態法の改正 
⇒(周辺事態という文言がなくなり、「重要影響事態」に変わる) 
 
9餾殤合平和維持活動等に対する協力に関する法律(PKO法)の改正 
⇒(国連決議なくても派遣できる 戦闘の前後なら危険な現場に派遣可能) 
 
この3つの系譜をおおざっぱですが、以下にまとめます。 
 
■自衛隊法の改正& 武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律の改正 
 
まず最初に「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」は自衛隊法の中にその文言が埋め込まれていて、自衛隊の防衛出動に関して、より細かく規定するために、自衛隊法と分けて特別法にしているものです。ですから、この2つの法律はほとんど一体と言ってもよいものです。 
 
  これまでの自衛隊法でも自衛隊の防衛出動が可能となる事態は直接の攻撃でなくともよくなっていて、攻撃が予測された自体で必要な行動を取ることができるようになっていました。しかし、今回、解釈改憲で集団的自衛権が認められた結果、日本と密接な関係がある他国が攻撃を受け、その結果、日本の存立が脅かされる事態(存立危機事態)となれば自衛隊が出動可能となります。この場合、日米同盟を基軸にしつつ、その他の国と協力して外国で必要な「武力行使」を行うことができるようになります。 
  こちらの系の場合は、そもそも個別的自衛権の武力行使から広がってきた事態なので、たとえ外国の領土・領海であれ、集団的自衛権のもとに自衛隊は必要な武力行使が行えるようになります。 
  そして、外国で「存立危機事態」が起きた場合でも単に自衛隊を外国に派遣するだけでなく、日本が武力行使を受けた場合と同様に、国家総動員体制を敷くことが可能になります。その場合に人権制限も国家の防衛のためには許容されることになります。 
 
  またこれまでと違って日本人が外国で危機に陥った場合も当該国の同意があれば自衛隊が日本人の輸送だけでなく、武力行使を伴う救出活動もできるようになります。その場合に自衛隊の戦闘が国際紛争に該当しなければ、邦人救助のための武力行使も可能となります。 
 
■周辺事態法の改正 
 
  周辺事態という言葉がなくなった関係で、日本に重要な影響を与える事態(重要影響事態)が外国で起きた場合は地球上どこであれ自衛隊が出動可能となります。その場合は米軍やその他の外国軍の「後方支援」などを行うことができるようになります。自衛隊法改正における「存立危機事態」の場合とは自衛隊の動き方が異なり、「後方支援活動」が中心となります。そこが周辺事態法改正の話の根幹となります。その後方支援活動の中身が先日、国会で野党議員から質問されていたところです。 
 
■PKO法の改正 
 
  これまで戦闘行為のない場所で復興や人道支援を行うことができるだけでしたが、改正されると、戦闘の前後であれば自衛隊をその現場へ派遣して救援活動などに携わらせることができるようになります。敵が迫ってくる危険がある場合、その前に駆けつけてNGO職員などを守る、いわゆる「駆けつけ警護」もこれに含まれます。その場合に正当防衛や緊急避難に該当すれば武力行使も可能となります。 
  さらに国連総会の決議も、国連安保理の決議もなくとも一部の国際機関の支持と当該国の要請があれば自衛隊を派遣できるようになります。自衛隊をイラクのサマワに派遣したときは国連安保理の決議とともに、イラク特措法という特別の時限立法を制定しましたが、今後はそういうことをしなくても比較的に容易に派遣可能となります。 
 
大きく分けると、日本に対する直接の武力行使があって個別的自衛権を行使する従来の防衛出動以外に、上の3つの系列の新たな行動ができるようになります。それらはシチュエーションが異なっていますから、テレビの国会論戦のさわりだけが紹介される場合は、どのシチュエーションの議論かを大枠でつかむ必要があります。重要影響事態の場合と、存立危機事態の場合では自衛隊の動き方も異なります。 
 
  解釈改憲で集団的自衛権を閣議決定したら、こんなに膨大な法体系を〜 国民の反対をものともせず 〜 一夜にして変えることができるのか、と唖然としました。憲法九条は次のようなものです。 
 
 「第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 
   2  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」 
 
  国際紛争を解決する手段としては武力による威嚇または武力の行使は行わないと明記されています。しかし、安保関連法案はまさに国際紛争を解決する手段として武力行使を容認しています。 
 
  さらに憲法97条の基本的人権の規定と、憲法98条1の<憲法を最高法規としてそれに反する法令は効力を有しない>という規定にも抵触しています。 
 
  「第九十七条  この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。 
 
  第九十八条  この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」 
 
  憲法学者の大半が違憲の判断をくだしているこの法案を今すぐに白紙撤回することが必要です。 
 
 
 
村上良太 
 
 
参考 
 
■「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」 
 参院で議論されている安保関連法案は次の参議院のウェブサイトに全文が書かれています。 
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/189/pdf/t031890721890.pdf 
 
■総務省行政管理局の日本の法令データベース 
 これに知りたい法律名を入力すると、条文がすべて読めます。 
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi 
 
■参院論戦1 「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」 それは自衛隊法の改正である 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507261839570 
 
■参院論戦2 「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」を読む 〜在外邦人の「保護措置」について〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507271607251 
 
■参院論戦3 「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」を読む 〜周辺事態と重要影響事態〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507272151391 
 
■参院論戦4 「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」を読む 〜存立危機事態〜 国家総動員体制と人権が制限される可能性 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507281158172 
 
■参院論戦5 「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」を読む 自衛隊PKOの変化 〜南スーダンで自衛隊の戦闘開始の可能性 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507301309184 
 
■参院論戦6 「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」を読む 国連決議がなくても自衛隊の派遣が可能に 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507311431095 
 
■27日月曜から参議院で安全保障関連法案の審議開始 <我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会> 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507260938000 
 
■参議院の傍聴をする方法 本会議は開会30分前に傍聴券を配布・先着順 委員会は議員を通して委員長の許可が必要 27日(月)本会議は13:00〜、安保特別委は14:30〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507261127400 


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