2015年09月03日22時30分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201509032230294

みる・よむ・きく

『私の労働研究』−著者自身による広告 熊沢誠(甲南大学名誉教授・労使関係論)

このたび、新著『私の労働研究』が発刊されることになりました。そのなかで私が語り綴る内容はヴァラエティに富み、私の半世紀にわたる労働研究の軌跡──そのテーマ、問題意識、著作の概要、それにこれまでの研究作業を支えてきたプライヴェートな生活史ばかりでなく、現時点での日本の労働の多角的な分析、社会の諸問題や個人の体験をめぐる近年のエッセイ、いくつかの書評、感銘を受けた映画への思い入れ・・・に及んでいます。研究者としての私個人にかがみ込む、このような著作を刊行できることは、私にとって思いがけない幸せですが、それは堀之内出版の女性編集者の思いきった企画の賜物です。アカデミックな意義はともあれ、これはどの章からでも気軽に読める、拙著としては抜群におもしろい本としておきましょう。文末に目次を掲げました。 
 
 外箱の美しい装丁にデザイナーさんは与謝野晶子の短歌を引用してくださっています。ある事情から私が「あとがき」で紹介したものなのですが、その短歌の自負は私には重すぎ、労働研究という「殿堂」に私も「黄金の釘を打つ」などとはとてもいえない気恥ずかしい思いです。けれども、日本の労働の現状と明日のありように思い悩むみなさまに、一介の在野研究者の懸命の発想の軌跡がわずかでも参考になればと願っています。 
 
 280頁ほど定価2200円で、ご負担になれば心苦しいのですが、できれば『私の労働研究』の「販促」にご協力いただければうれしいです。あえてそんなお願いをいたしますのも、<労働>は生活と人権に決定的に関わる枢要の領域であるのに、現代日本では、いつしか不思議なまでに不人気なテーマになっていて、それだけに、総じて過酷な職場の日々を送る働く人びとの界隈に、この本があまり届かないのではないかと心配だからです。 
 
  本書ぜひ、親しいご友人、なかまの方々にご推薦ください。いろんなところに忌憚なく書評を書いてください。研究室、所属組織の図書館のためにご購入ください。ゼミや学習会や集会のテキストにできる、複数冊が必要との判断をいただければ、著者紹介ということで、出版元は<8がけ価格+郵送料>で直送して下さいます。 
 
連絡先:〒192-0355 東京都八王子市堀之内3-10-12、フォーリア23 206号室 
               TEL 042-670-5063 FAX 042-680-9319 
 明記事項:発送先(住所、電話)、注文冊数、支払責任者名、「熊沢紹介」 
 
【本書の目次】 
一章 私の労働研究─テーマと問題意識 
はじめに 
1 研究史の初期(一九六七〜七八年) 
その時代/初期のテーマと問題意識/著作 
2 研究史の中期(一九七九〜九六年) 
その時代/問題意識・テーマ・方法論/著作 
3 研究史の後期(一九九七年以降) 
この時代の研究環境/著作/むすびにかえて 
 
二章 われらの時代の働きかた 
はじめに 
1 シューカツをめぐって 
2 なにが就職の「成功度」を決めるのか 
3 非正規雇用とキャリア分断 
4 流転の職歴 
5 有期雇用を規制する必要性と可能性 
6 正社員のしんどさの根にあるもの 
7 ノルマのくびき 
8 人べらしの修羅 
9 パワーハラスメント論序説 
10 〈被差別者の自由〉のゆくえ─女性労働論の今日 
11 産業民主主義と組合民主主義 
 
三章 公務員バッシング対抗論─橋下「改革」と公務員労働組合 
1 組合つぶしの論理と背景─新自由主義と大阪市の事情 
2 日本の公務員労働運動─厳冬の風土と季節 
3 公務員の労働条件維持にどう取り組むのか 
4 公共部門の労働運動に期待されるフロンティア 
 
四章 労働・社会・私の体験─ホームページ・エッセイ抄 
1 仕事のありかたをめぐって 
 福島第一原発の「復旧」作業を担う人びと/卒業して五年─浜野美帆の軌跡/ 
 労働者としての教師/関越自動車道の事故に思うこと 
2 日本社会の影をみつめて 
 若い世代の貧困と医療格差/小さな生活圏のいじめと暴力/ 
 熱中症に斃れる貧しい高齢者/大津市立中学校のいじめ自殺 
3 回顧と体験 
 わが街四日市で脱原発を訴える市民デモができた!/研究会「職場の人権」の再出発/ 
 わが高校時代の新聞部活動─桜宮高校事件にふれて/五月の一〇日間/追悼・熊沢光子 
 
五章 書評と紹介─近年の読書ノートから 
はじめに 
1 労働の世界 
 スティーヴン・グリーンハウス『大搾取!』/ 
 飯島裕子、ビッグイシュー基金『ルポ 若者ホームレス』/ 
 西谷敏『人権としてのディーセント・ワーク』/戸村健 作『ドキュメント 請負労働180日』/ 
 榎本まみ『督促OL修行日記』/森岡孝二『過労死は何を告発しているか』/ 
 伊藤大一『非正規雇用と労働運動』 
2 現代日本の社会と生活 
 A・ファーロング、F・カートメル『若者と社会変容』/本田由紀『教育の職業 的意義』/ 
 宮本太郎『生活保障』/岩村暢子『家族の勝手でしょ!』/ 
 ノーマ ・フィールド『天皇の逝く国で』/ 
 井上芳保編著『健康不安と過剰医療の時代』 / 生活保護論 ふたつの好著 
3 日本近代史・現代史の諸相 
 夏木静子『裁判百年史ものがたり』/草野比佐男詩集『定本・村の女は眠れない』/ 
 アンドルー・ゴードン『日本労使関係史 1853〜2010』/菊池史彦『「幸せ」の戦後史』/ 
 大田英昭『日本社会民主主義の形成』/水溜真由美『「サークル村」と森崎和江』/ 
 鄭玹汀『天皇制国家と女性』 
4 アラブ世界から 
 デボラ・ロドリゲス『カブール・ビューティスクール』/ 
 アミン・マアルーフ『アラブが見た十字軍』 
 
六章 スクリーンに輝く女性たち 
はじめに 
1 女たちの絆 
 『女の子ものがたり』ほか─生きがたさを超えて/『フローズン・リバー』の溶けるとき 
2 歴史の原罪をわが身に負って 
 『サラの鍵』─フランスの過去のあやまちをみつめて/ 
 『オレンジと太陽』─福祉国家の影を問う良心/ 
 『東ベルリンから来た女』─そこにあえて留まること/ 
 『故郷よ』─失われた大地の語り部として 
3 狂気の時代を生きぬく 
 『悲しみのミルク』─トラウマを解き放って/『愛の勝利を』─精神病院の内と外/ 
 『キャタピラー』─若松孝 二作品の頂点/『清作の妻』─軍国の明治の村を刺し通す/ 
 『やがて来たる者へ』─殺戮の彼方に届くまなざし 
4 闘う女たちの群像 
 ドキュメント『外泊』にみる解放の息吹き/ 
 『ファクトリー・ウーマン』─ノンエリート的階級意識の光/ 
 『追憶』─忘れられない青春の名作 
 
終章 回想記・労働研究の道ゆき 
1 青春前期の模索 
2 徒弟時代 
3 自立のとき─研究と生活の条件に恵まれて 
4 働きざかり─労働者の実像をもとめて 
5 ゆるやかな登り坂─状況批判のさまざまの試み 
6 高齢期の日々 
7 顧みて思えば 
 
資料:著書リスト/共著(収録論文)リスト 
あとがき 
 
 
 熊沢誠(甲南大学名誉教授 労使関係論) 
 
※上の文章は熊沢教授の了解によるホームページ「生きついでゆく日々」からの転載です。 
http://kumazawa.main.jp/ 
 
 
■『家族という病』の耐えられない軽さ 熊沢誠(甲南大学名誉教授 労使関係論) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201509011252472 
 
■「かならず変わる」 熊沢誠(甲南大学名誉教授) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507210918432 
 
■「まだ廃案に追い込める」 〜地方の動きから〜 熊沢誠(甲南大学名誉教授・労使関係論) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507201103581 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。