2015年09月06日13時36分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】核兵器にも近い設備の1つである「もんじゅ」の永久閉鎖処分こそ唯一の道 山崎久隆

 毎日、朝日、福井新聞、NHKニュース他でも次々に報じられているのは、「もんじゅ」にまつわる信じがたい事件の報道である。 
 この欠陥原子炉を、まだ試運転しようとしている日本原子力研究開発機構に対して、強く抗議し計画の断念を求める。こんな原子炉を動かそうものならば「試運転」が「死運転」になるのは時間の問題だ。 
 
◆報道が伝えたこと 
  各社の報道の中でも最も詳細なのは地元の福井新聞である。「もんじゅ、機器の重要度分類に誤り 3千点、保全計画見直しに影響」は9月4日付。記事の要旨は次の通り 
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 設備や機器の安全上の重要度を決める分類の誤りが少なくともおよそ3000件あることが規制庁の検査で判明。中には重要度が高い設備や機器を、低く分類する誤りも含まれている。 
 これまで大量の機器の点検漏れが見つかり、2013年3月に原子力規制委員会が運転再開準備の禁止命令を出していた。 
 その後、年4回行われている国の保安検査で、設備や機器の安全上の重要度を決める分類の誤りが少なくともおよそ3000件あることが判明した。 
 
 重要度分類は原発同様、「クラス1」から「3以下」に分かれているが、重要度が高い設備や機器を低く分類するという致命的な誤りも含まれていた。 
 重要度分類に応じて検査項目の選定や検査サイクルあるいは分解点検か外観検査かが決まるから、低いレベルとされた機器類は本来必要な検査が行われなかったと考えられる。 
 
 分類の誤りは、1995年12月に発生したナトリウム漏れ火災事故を受けた設備改造工事に伴って、新たな許認可が出された2007年から続いていると考えられる。また、機構側は2013年3月に始まった保安検査で規制庁から手続きの不備を指摘していた。その後の5月には自主的に分類を再確認しており、実際には当時から分類誤りに気づいていた。 
 今年8月に行われた規制庁との面談で初めて事実の一端を明らかにしたという。 
 
現在もまだ確認作業は続いており、クラス3以下となっている機器類や系統については現在確認中。これからも続々と明らかになるかも知れない。 
 
 9月3日に今年2回目の保安検査開始を16日までの予定で開始した。冒頭に分類誤りについて説明し、機構側に真摯な対応を求めたことから、今回の報道発表となった。 
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◆何が起きていたか 
 
  これで「もんじゅ」そのものが欠陥品であることが改めて証明された。重要度分類を誤るような保安規定を作った原子力研究開発機構つまり旧動力炉・核燃料開発事業団が、まともに設備の設計が出来ると考えるわけにはいかない。 
 設備や機器類の安全上の重要度が分かっていない組織が作った原子炉を、後から手を入れて安全な装置に出来るわけがない。 
 
  一体何処にどれだけの欠陥が潜っているか、もはや誰にも分からない。安全上重要な機器と認識せずに設計、施工するということは、例えば耐震クラスSで作るべき配管や装置類をCクラスで作ってしまうようなものである。大きな力が加わらなくても、運転中の振動や圧力などで簡単に破損してしまうかもしれない。 
 
 そんな欠陥が随所に潜っている原子炉など、認可を取り消すほかはない。 
  もともとナトリウム火災を起こした熱電対のさや管は、構造上疲労破断を起こすことが目に見えていたし、製造したメーカーさえ、その懸念を当時の動力炉・核燃料開発事業団に伝えていたのに無視されたことを告発していた。 
 
 そのような異常な設計とデタラメな安全管理体制は、例えば二次系ナトリウムが流れる配管室を火災防止のために窒素封入するといった、簡単な対策さえ取られていなかったり、ナトリウムの冷却材中で部品を落下させて破損し、不透明で危険な液体ナトリウムの中で回収が極めて困難で危険な状態に陥らせるような管理をするなど、およそ「もんじゅ」という装置の、潜在的危険性と運営の困難さを全く考慮もしない運営に終始したことと見事に付合している。 
 
  この原子炉を少しでも稼働させると、必ず大きなトラブルにな 
り、そのたびに関係した重要人物が亡くなっている。これまた極めて深い暗部を背負った施設と組織と言える。 
 
 核兵器にも近い設備の1つである「もんじゅ」の永久閉鎖処分こそが、断末魔の悲鳴を上げている原子炉に残された唯一の道だ。これが動くなど、断じてあり得ない。 
 
◆組織崩壊 
 
  2014年4月11日には共同通信が「組織崩壊」という規制庁職員の声を紹介していた。この年3月から「もんじゅ」の保安検査が行われている。しかし膨大な検査漏れだけでなく、検査日程が勝手に書き換えられているなど、およそ原子力施設とは思えない体たらくに「組織崩壊」という言葉が出た。 
  それから1年半。崩壊した組織は、復活などしていなかった。明らかに事実を隠ぺいしようとしてきた結果、さすがに規制庁が目に余る実態を明らかにせざるを得ないまでに行き着いたのだろう。 
  しかし規制庁も「もんじゅ」を廃炉にするつもりは全くない。なんとかして再稼働を実現し、高レベル放射性廃棄物の処分計画を先に進めたいとの焦りがある。 
 しかし危険きわまりない設備を使っての実験は、到底許されるわけはない。 
 
 組織崩壊した組織が扱っている「もんじゅ」は、一般の原発の何倍も危険な原子炉だ。そのうえ東海再処理工場も持っている。 
 
  日本の原子力は危険な組織がよってたかって滅茶苦茶にしてき た歴史だ。そんなものに何時まで「経済効果」「地域発展」などの幻想を抱いていれば気が済むのだろうか。組織崩壊はそんな施設を誘致して再稼働を要請している地方団体にも当てはまる言葉である。 


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