2015年10月02日21時48分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】「電力需給のピークを乗り切った」本当の理由 もはや右肩上がりの電力需要環境ではない 山崎久隆

  東京新聞9月28日号は「電力需給 厳しい日ゼロ」「太陽光 増加 九電も安定 再稼働 揺らぐ根拠」「電力需給、今夏も余力 原発再稼働の根拠揺らぐ」と報じた。節電だけがこれほどの使用量減少は説明が付かない。答えは9電力離れがすすみ、他の電力に顧客が移ったことも、大きく減少した理由であることは間違いない。 
 
 東京新聞の記事のなかでは、ピーク時において電力が設備利用率90%さえ超えないことが紹介されている。実際に最も厳しかった日の8月7日(金)をみても東電は92.29%に止まっている。この日は記録的猛暑で、気象庁(千代田区大手町)で酷暑日(最高気温が35度を超えること)が8日続いた最終日、金曜日はもともと電力消費量が高く出やすいうえ酷暑日と熱帯夜が1週間以上も続く中だった。なお、熱帯夜は13日連続続いていた。それでも4957万kwで、5000万kwを超えない。 
 
 これは驚くべきことだ。同様の状態が2011年以前に起きていたら6000万kwを超えていた。最も大量の電力を使う時間帯で少なくても1000万kwもの電力需要が落ちていることになる。 
◎ 「理由は節電」これが電事連の八木会長のコメントだそうだが、八木会長は関電の社長でもある。この説明は十分ではない。節電だけがこれほどの使用量減少は説明が付かない。答えは9電力離れがすすみ、他の電力に顧客が移ったことも、大きく減少した理由であることは間違いない。 
 
 この傾向は全国的なものだ。8月7日は北海道を除くと全国的に猛暑だったが、使用率は90.4%、1億5386万kwである。2010年の1億7872万kwだったから、2500万kwも減っている。 
 東電は全国の約3分の1なので東電の落ち込みは他電力よりも大きい。 
 
 東日本の3電力と西日本の6電力を比較すると、電力消費量の低下は東日本が大きくなっている。原発事故の影響から、9電ばなれと、電力消費を減らしても原発に依存したくないと考える人が多いからかもしれない。 
 
 料金値上げは他電力に移る大きな原因になる。それは、9電力で唯一3.11以後も値上げをしていない北陸電力が、電力需要が落ちていないことでも分かる。 
 
 他の電力会社は、軒並み電力需要が減少している。値上げは短期的に利益を増やす効果はあるが、その後に顧客離れを起こし結果的に売り上げの減少に繋がっていく。 
 安易に値上げした電力会社はこれから厳しい環境になるであろう。一方、設備の見直しなどで値上げせずに、あるいは小幅な値上げで乗り切った電力会社は有利になる。既に9電力の供給エリアを越えた顧客獲得合戦が始まっている。 


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