2015年10月10日18時45分掲載  無料記事
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反戦・平和

福島から国を動かしていこう!(2)〜福島県労連・斎藤富春議長インタビュー

 9月13日に福島県庁前で開催された「福島は怒っている!戦争させない9条壊すな!戦争法案NO!福島県民大集会」(主催者発表:約2,500人)には、“安保法案反対”の一点で様々な団体・個人が結集して成功を収めたものの、福島県民の願いも叶わず、安保関連法は約1週間後の9月19日未明に成立してしまった。 
 これを受けて、大集会の主催団体の1つである福島県労連の斎藤富春議長に、大集会の感想や今後の行動予定などをお伺いした。 
 
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----主催者の立場から、今、どのように感じていますか。 
 
(斎藤)今回の安保法案反対集会の参加者は約2500人に及んだ訳ですが、参加者数としては決して少ない人数ではないと見ています。また、今回の集会では元県知事や元県議会議長、元福島大学長や元女団連会長、住職や牧師、学者や弁護士などの皆さんが呼びかけ人となり、事務局には県平和フォーラムも参加、政党では民主党、共産党、社民党に連帯あいさつをいただきました。後で知ったのですが、創価学会の方も参加していたそうです。まさに、立場を超えた集会として成功させることができました。 
 今回、各界各層そして保守・革新を問わず様々な方々が呼びかけ人に名を連ねていますが、この方々は急に今回の集会の呼びかけ人となった訳ではありません。福島県の場合には、東京電力福島第一原発事故があり、この原発事故に伴う運動を通して、今回の呼びかけ人となっている方々と我々が結びついて来たという経緯があります。そういう経緯があって、今回の安保法案反対集会においても、法案に対して危険性を感じ共同して取り組んでいくこととなった訳です。 
 そういう意味では、福島県独特のつながりが活かされた集会であり、他県にはない特徴点だったのではないかと感じています。このことは、東日本大震災以降の4年半余りにわたる闘いの中における一つの到達点として、このような集会の開催に至ったものと感じています。 
 
 今回の集会に当たっては、非常に短い準備期間の中で開催にこぎ着けているのですが、これだけの呼びかけ人を集めようとしたら、おそらく準備に2カ月間は要しているはずです。それが、これほど短期間のうちに、これだけの呼びかけ人に賛同していただいたというのは、原発事故を通じてそれぞれの立場やしがらみを乗り越えて、「福島県内の原発はなくそう」との思いで多くの方々が集まったという経験をしており、そのため、今回の安保法案の問題でも比較的短期間で多くの人に集まっていただくことができたのではないかと思っています。 
 たぶん、当日の集会参加者の中には、呼びかけ人として名を連ねている方々の氏名を見ただけで、「行ってみようかな」と思った人たちが少なからずいるのではないかと思いますし、様々な立場の方々が参加を呼びかけたことによって、特定の組織に属さない一般の参加者も結構いたのではないでしょうか。 
 それから、会場にいた参加者の中には、安保法案そのものに反対する人たちだけでなく、改憲は必要だが、極めて乱暴な国会での進め方に問題があるという人もいたと思います。そういった様々な考えを持った人たちが集まって、今回の集会になったのではないかと考えています。 
 
----今後の安保関連法に対する取り組みについては、どのように考えていますか。 
 
(斎藤)衆参両院での強行採決によって、法律の仕組みとしては成立したものの、我々のスタンスはこの法律を廃止させるという方針の下、引き続き闘っていくということははっきりとしています。 
 また、福島県の場合には福島第一原発事故の問題、そして震災からの復興という問題があり、この福島県の復興の妨げとなっているのは、まさしく安倍政権である訳です。安倍政権は原発を推進していますが、推進しているということは「福島第一原発事故は収束しており、日本の原発は安全だ」と言っているのと同じことなのです。だから、安倍政権が存在する限り、福島県の復興を遅らせ、元通りの福島県に戻すことが望めなくなるのです。 
 そもそも、消費税問題や原発問題、沖縄基地問題などの悪政に暴走する安倍政権を打倒することが我々の運動方針として確立していました。今回の憲法違反である安保法に至ってはなおさらです。ですから、この法律を廃止させるためにも、安倍政権を退陣に追い込むことが必要ですし、そのための運動を引き続き展開していかなければならないと考えています。 
 また、この間の安保法案反対運動を通して感じていることは、国会前での「SEALDs(シールズ)」を中心とする若者たちの活動を見ていると、彼らには闘った充実感こそあれ、悲壮感や敗北感は全く感じられないのです。そのことに私自身が励まされています。安保法案が強行採決された後も、もの凄いエネルギーを持続したまま活動を続けており、全然諦めていないということです。 
 そういう意味では、我々としても、安保法案が成立したからといって落胆はしておらず、引き続き、“安保関連法廃止”、“安部政権退陣”というスローガンを掲げて運動をしていく必要があると考えています。そのため、これまで同様、集会やデモなどの運動を通じて、県民に我々の主張を訴えていかなければならないと考えており、安保法案が成立したからといって、運動を終えるということは考えていません。 
 
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 大集会に参加した人の多くは福島県内に住んでいる方々ということで、東日本大震災とそれに伴う原発事故を経験されたことと思う。そのような経験をした福島県民だからこそ、「エネルギーの安定供給のため」と称して次々と原発再稼働に突っ走る安倍政権が、「安全保障」という名目を掲げて国民の生命・身体・財産を危険に晒す安保関連法案を強行成立させることに対し、怒りがこみ上げてくるのは当然の帰結であろう。 
 民意の声を無視し、強引極まりない国会運営の果てに得た安保関連法を元に、安倍政権は一体どのような未来を見ているのだろうか。「積極的に戦争する国」へと向かわないことを祈るばかりである。(館山守) 


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