2015年10月11日03時57分掲載  無料記事
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反戦・平和

Conect主催「アンポホウセイってなに?」〜自らの言葉を持つことの大切さ

 9月19日未明、安全保障関連法が参議院本会議で可決、成立しました。この法律には多くの国民が反対の声を上げ、8月30日には国会前や官邸前、日比谷公園などに延べ35万もの人々が集まり、抗議の声を上げました。そして、法律成立後の現在も、全国各地で廃案を求める抗議行動が連日続いています。 
 この安保関連法ですが、その中身や問題点を全部理解している人は少ないのではないでしょうか。この法律の成立に先立つ9月10日、学生主体のイベント「アンポホウセイってなに?」(主催:Conect)が東京・千代田区の毎日ホールで開催され、約120人の市民が集まりました。 
 このイベントには、ゲストとして元NHKアナウンサーでジャーナリストの堀潤さん、平和安全法制特別委員会の公聴会に公述人として出席した法政大学の山口二郎教授、地方参考人会に参考人として出席した倉持麟太郎弁護士ら3人が登場し、安保関連法の問題点について分かり易く解説してくれました。 
 
 山口教授は、「今までの日本の安全保障は、憲法9条の枠内における自衛力、専守防衛、海外で武力行使はしない、攻撃的能力は持たないという条件で行われていました」などと解説した上で、安倍政権が目指す安全保障がこれらを否定するものであることを指摘するとともに、「政府の活動は、憲法の枠の中で行うことが立憲主義の考え方です。安倍政権が閣議決定によって、憲法で認められていない集団的自衛権行使を正当化したことは、立憲主義を否定するものです」と安倍政権の対応を批判しました。 
 そして、イベントに集った市民に「アメリカ軍の手伝いをして海外で活動することが、なぜ積極的平和主義と言えるのでしょうか。安倍総理が平和安全法制や積極的平和主義という名前を付けたことに関して、もっと話を掘り下げて考えていかなければなりません」と訴えていました。 
 
 倉持弁護士は、―乎津自衛権、後方支援という名の兵站、I雋鐡防護における武力行使、という3つが憲法・法案・政策の観点から問題であるとして、次のように解説してくれました。 
 
―乎津自衛権 
 
憲法 → 専守防衛を放棄した解釈改憲である。 
 
法律 → 行使要件が法案に明記されていない。 
 
政策 → 政府が行使の事例としているホルムズ海峡の閉鎖は、現実性が無い。 
 
後方支援という名の兵站 
 
憲法 → 兵站は前線での武力行使と一体化しており、憲法9条に違反している。 
 
法律 → 「支援対象の正当性を問わない」としており、支援する側の武力行使が不当であっても支援が可能となる。 
 
政策 → 後方支援が武力行使を一体化していないという立場のため、「日本は、日本を攻撃するA国に給油や弾薬補給を行っているB国に対して攻撃をしない」と答弁し、自国の防衛を犠牲している。 
 
I雋鐡防護における武力行使 
(※改正自衛隊法95条の2「自衛隊と連携して我が国の防護に資する活動に現に従事している米軍等の部隊の武器等であれば、当該武器等を防護するための武器に使用を自衛官ができるようにする」) 
 
憲法 → この条文は、我が国への攻撃がなくても米軍の武器防護のための武器使用が可能となる。この行為は集団的自衛権であって、憲法9条に違反する。 
 
法律 → 条文の”武器等”には航空機や艦船も入っており、それを自衛”官”が防護するという現実ではありえないことを規定している。 
 
政策 → 自衛官の法的地位が実際の任務と乖離しており、自衛官のリスクを高めるものである。 
 
 特に倉持弁護士は、I雋鐡防護における武力行使、について「防衛省がなんとしても死守したい項目だ」と指摘し、「これにより存立危機事態や新3要件が無くても集団的自衛権が行使できる」と警鐘を鳴らした。 
 
 山口・倉持両氏による解説後、ゲストと参加者で「安保法制と私たちの今後」というテーマのディスカッションが行われました。 
 堀さんからの「抑止力という言葉にどんなイメージを持っている?」という問い掛けに、ある参加者は「『日本はアメリカの傘の下にいる』とよく聞くので、抑止力とはアメリカの権力、軍事力を指すのではないか」との考えを披露しました。 
 その答えを受けて堀さんは、アメリカによる自国兵力の見直しにより、日本の集団的自衛権行使が必要になってくるという議論が存在することを紹介していました。 
 また、倉持弁護士は「質問に付け加えます」と前置きして、「集団的自衛権は、他国の防衛に協力することです。アメリカの防衛に協力することが、日本の防衛につながるでしょうか」と疑問を呈しました。倉持弁護士の疑問に対し、多くの参加者が「集団的自衛権の行使=抑止力ではない」という考えを披露していました。 
 山口教授は「抑止力とは、核兵器の裏付けがあって意味を成すものです。国を根本的に滅ぼすような反撃がくるだろうという恐怖が抑止力です」と補足説明されました。 
 
 「今後、経済的徴兵制はあるのか」というテーマでは、ある大学生が「自衛隊に入隊した友人に理由を聞くと、友人は『かっこいいと思ったからだ』と答えていました。今は、アイドルが自衛隊を宣伝してたりするので、自衛隊にクリーンなイメージを持っている人がいます。国を自衛するという意識を持って自衛隊員になる人は少ないのではないでしょうか」と話しました。 
 また、別の大学生は「職業選択の自由という観点で自衛隊員になることを選んだ後輩から『自分はお金がないから自衛隊に入るみたいに思われてしまうのか』と言われたことがある」と話しました。 
 高校生の就職支援を行っていたという人は「高校生で就職をする人たちは生活が困窮している人が多い。そのような現実があるので、生活のために自衛隊を選ばざるを得ない人は出てくると思う」と話しました。 
 これらの発言を受けて堀さんは、「自衛隊には、志を持って入ってくる人がいる一方で、止むに止まれずに入ってくる人もいます。自衛隊員と一言で言っても様々な人がいるのです」と話しました。 
 その後のディスカッションでは、安保法制を考えていく上で必要になっている言葉の意味や、そこから派生する問題について話し合われました。 
 
 このイベントを企画した学生有志グループ「Conect」メンバーの1人であるユカコさんは、「『自分で聞いて、自分で考え、自分の言葉で話していくことを大事にしよう』をコンセプトに、今回のイベントを若者中心でやろうということになりました。参加してくださった方々、特に若者には、今後も身近な人と安保法制について話し合ってほしい」と語っていました。 
 また、Conectに加えてSEALDs(シールズ、「自由と民主主義のための学生緊急行動」)でも活動する大学生の山田和花(のどか)さんは、当初は「デモは怖いと思っていた」と明かしつつ、「Conectは、まだ自分の言葉を持っていない人たちが、言葉を持つための場を作っていきたい。SEALDsは『デモをしている』というイメージが強いので、Conectの企画は『デモはハードルが高い』と思っているような人たちに参加してもらえるようなものにしたい」と語っていました。 
 Conectは今後、安保法制以外の社会問題も対象に、「自分の考えを持つ」ためのイベントを企画していくということです。 
Conectの活動は、Twitter(@ConectWithAll)をご覧ください。(高木あずさ) 


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