2015年12月18日14時29分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

アムネスティ日本 18日の二名の死刑執行に抗議声明

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル日本は18日に執行された死刑に対し、抗議声明を発表した。第1次、第2安倍政権で24人が死刑執行されたことになる。(大野和興) 
 
 
 以下、抗議声明―― 
 
アムネスティ・インターナショナル日本は、本日、東京拘置所の津田寿美年さんと仙台拘置所の若林一行さんに死刑が執行されたことに対して強く抗議する。 
 
本日の執行により、本年は6月25日に次いで2回目、安倍政権下では2006年の第1次安倍内閣時と合わせて通算24人が処刑されたことになる。 
 
岩城光英法務大臣は今年10月に就任したばかりであり、今回が初めての執行である。10月7日の官邸記者会見では、「死刑は,人の生命を絶つ極めて重大な刑罰です。・・・(中略)裁判所の判断を尊重しつつ、私自身も慎重かつ厳正に対処すべきであると考えています」と、基本的に安倍政権下での過去の法務大臣の発言を踏襲する内容にとどまった。 
 
死刑は、もはや国際的には非人間的で残酷な時代遅れの刑罰ととらえられており、事実上死刑を廃止している国を含めると、140カ国が死刑廃止国となっている。このような国際的動向を見極めることも、法務大臣の責務である。 
 
今年12月3日、モンゴルはあらゆる犯罪に対し死刑廃止を定めた新刑法を議会で可決した。この新刑法は来年9月に施行される。ツァヒャー・エルベグドルジ大統領は、「人権の完全な尊重に向けて、モンゴルは死刑廃止を進めなければならない」と繰り返し訴えてきた。死刑の廃止は人権の尊重そのものであり、モンゴルはその実現に向けて政治的リーダーシップを発揮したのである。 
 
アムネスティの調査によれば、2014年の死刑存置国は58カ国であるが、そのうち死刑を執行した国は22カ国であって、世界全体のわずか10%にすぎない。日本は執行を続けることで、人権を無視した少数国の中にあり続ける。2015年に入り、フィジー、マダガスカル、スリナムの3カ国が死刑を廃止した。日本もこれらの国に続き廃止を検討すべきである。 
 
津田さんの場合、裁判員制度のもとでの死刑確定者の初めての執行となった。人の生命を奪う極刑において慎重な判断が求められるにもかかわらず、日本では義務的上訴制度がない。津田さんは、控訴審において自ら控訴を取り下げており、裁判員裁判における地裁の死刑判決が確定した。 
 
2014年2月17日、裁判員経験者20人は死刑執行を停止し、死刑制度の情報公開を徹底し、国民的議論を促すよう求める要望書を当時の法務大臣である谷垣禎一大臣へ提出した。死刑判決は裁判員にとって、人の命を奪うという非常に重い決断である。決断のためには、死刑制度自体の情報公開が必須でなる。死刑についてほとんどの国民が知らない現状では、情報を公開するだけでなく、執行を停止し熟慮しなければならない。 
 
死刑は生きる権利の侵害であり、残虐で非人道的かつ品位を傷つける刑罰である。アムネスティは、日本政府に対し、死刑廃止への第一歩として公式に死刑の執行停止措置を導入し、全社会的な議論を速やかに開始することを要請する。 
 
以上 


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