2016年02月08日20時29分掲載  無料記事
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北朝鮮

北朝鮮のロケット? ミサイル? そして話し合い解決は可能か?

 北朝鮮政府は2月7日の発射について、「地球観測衛星の打ち上げ」で「平和的な宇宙利用権利」の行使だと主張した。これを額面通り受け取る人は少ないにしても、いくつか確認、検討しておこう。 
 
 確かに宇宙の平和利用は、宇宙条約(「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」)などに定められており、北朝鮮にも一般的にはその「権利」はある。しかし、それが制限され、「衛星打ち上げ」が禁止されたのは、北朝鮮が核実験という「平和」とは正反対の行為を繰り返したからにほかならない。 
 
 2009年6月、北朝鮮が前月に実施した2度目の核実験を受け、国連安保理が採択した決議1874は「いかなる核実験または弾道ミサイル技術を使用した発射もこれ以上実施しないことを要求する」とした。2006年10月における最初の核実験後の安保理決議1718では、単に「弾道ミサイル」発射の禁止だった。つまり、北朝鮮が世界の批判を無視して核兵器開発を継続したため、2度目の核実験後は、ミサイルと共通の技術を使う人工衛星用のロケットの打ち上げも禁じたわけだ。 
 
 言うまでもなく、核兵器を実戦で使うには、核弾頭だけでなく、それを運ぶ長距離ミサイルや爆撃機が必要だ。爆弾がつけばミサイル、衛星ならロケット(ロシア語ではどちらも「ロケット」の言葉を使うが)。北朝鮮は、2月7日の政府発表で、打ち上げ成功が「国家の科学技術、経済とともに国防力を発展させていくうえで画期的な事変」と誇った。「国防力」という言葉を入れたところに、宇宙の平和利用という看板の下にあるミサイル開発というホンネが見える。 
 
 核・ミサイル開発にかける北朝鮮の決意は凄まじい。2012年12月における前回のミサイル発射後、国連安保理は制裁強化の決議を採択したが、それに反発した当時の北朝鮮は「安保理は、普遍的な国際法(*各国の宇宙の平和利用の権利のこと)を踏みにじり、米国の対朝鮮敵視政策に追従」したと、中国、ロシアなど友好国を含め、全世界を敵に回すような態度をとった。その言葉どおりの行動が、4度目の核実験とミサイル発射だ。 
 
 “中国が北朝鮮への働き掛けでより大きな役割を果たさなければならない”というのはそのとおりだ。しかし、前述の北朝鮮の態度と経過を見れば、なかなか大変だ。もちろん、武力を使ってでも北朝鮮を崩壊させるというシナリオは論外――おびただしい人命、資源の損失、そして欧州のような難民問題が北東アジアで起こる――であり、米国含めてそんな政策は、少なくとも公式には持っていない。 
 
 では、そうすればいいのか? 
 
 米ブッシュ政権の時、6カ国協議の米代表を務め、北朝鮮の一部核施設の解体など相当な前進をつくった経験を持つクリストファー・ヒル元国務次官補が言う。 
「あまり認識されていないようだが、北朝鮮をまともな道に引き戻す責任を中国だけが負うことは不可能だ。米国、そしてもちろん世界の他の国々も、(イランの核問題を解決したように)北朝鮮の核の野望を止める政策を追求すべきだ」(「プロジェクト・シンジケート」への寄稿) 
 
 北朝鮮自身は、米国との「平和協定」を提案し、協議を熱望している。この間の北朝鮮の行動を考えれば、すぐに話し合いには入れない。しかし、米朝の協議が実現すれば、問題解決への前進、少なくとも契機を作ることは可能だ。ヒル氏は直接には「米朝協議」とは言ってないが、6カ国協議の再開という形であれ、北朝鮮に対する米国のより積極的、主体的な動きが必要ということだろう。 
 日朝国交正常化交渉の元政府代表を務めた美根慶樹氏が、2月8日付の朝日新聞紙上で「米朝交渉 日本が後押しを」と述べていた。ここら辺りにカギがあると思う。(西条節夫) 


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