2016年02月13日01時09分掲載  無料記事
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反戦・平和

「吉見裁判」東京地裁判決下る

 1月20日、私は「吉見裁判」の判決を聞くために東京地裁へ行きました。 
 「吉見裁判」とは、平成25年5月27日、日本維新の会の桜内文城衆議院議員(当時)が日本外国特派員協会という公の場で、20年以上にわたって日本軍「慰安婦」の実態を追求してきた吉見義明中央大学教授の著書に対して「これは既に捏造であることがいろんな証拠によって明らかとされております」などと発言したことから、吉見教授が発言の撤回と謝罪を求めて桜内氏に内容証明を送ったところ、桜内氏が応じなかったため、吉見教授が桜内氏を名誉棄損で訴えた裁判です。 
 東京地裁に着くと、既に傍聴券を求める人たちが列をなしていましたが、幸運にも傍聴券の抽選に当たり、法廷に入ることができました。 
 
「原告の請求を棄却する」 
 
 原克也裁判長のその言葉に、原告、被告、弁護人、傍聴人の全員が驚いた様子でした。弁護団は、判決後の報告集会〔主催:YOSHIMI裁判いっしょにアクション(YOいっション)〕で、判決の中身について次の2つのポイントを指摘し、次のように説明しました。 
 
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 捏造とは“事実でないことを事実のように拵えること”という意味で、簡単な言葉にすれば“事実をでっちあげる”という悪意を持った言葉である。 
 東京地裁は、桜内氏が“捏造”という言葉を発言したときの状況や、通訳が“捏造”と訳さなかったことから、桜内氏の発言を“誤り”“不適当”“論理の飛躍がある”という意味であったと判断した。 
 
◆嵬祥脊迷察廚砲覆襪どうか 
“捏造”という言葉が、“誤り”“不適当”“論理の飛躍がある”という意味であっても名誉毀損に当たるとしながら、今回はそれが当たらないとした。 
 名誉毀損には、公共の利害の事実に関する事実に関するものや、目的が公益を図る場合には免責されるという最高裁判決があるが、東京地裁は、桜内発言がその要件に当てはまるために名誉毀損は免責されるとしたのである。 
 他にも、桜内発言が、その場ですぐに対応するために口頭で述べた短いコメントに過ぎないことや、発言の内容や経緯からすれば、“捏造”という発言は意見や論評と捉えることができ、名誉毀損には当たらないと判断した。 
 
(判決文は、以下のリンクからご覧になれます) 
https://drive.google.com/file/d/0B79rvd3pXzJ_c015SVJNWmxXWUU/view 
 
 「研究結果が捏造されたものとされたら、研究を止めなければいけないし、大学に籍を持つ者なら職を失うことになる大きな問題。そのことを裁判所は理解していない。残念な判決だ」と怒りを押し殺しながら語った吉見教授は、裁判所に提出された2つの意見書〔々餾殍,隆囘世ら慰安婦制度を論じた阿部浩己氏(神奈川大学大学院教授)の意見書、∪鐐案本の公娼制度が性奴隷制度であったことを論じた小野沢あかね氏(立教大学教授)の意見書〕が「慰安婦制度=性奴隷制度」であることを余すことなく明らかにするもので、自らの研究を補強するものだったと指摘した上で、 
「弁護団による追求のおかげで、被告から『吉見は捏造していない』という言葉を引き出すことができたし、被告側の証人の誤りも追求することができた。今後の裁判では『慰安婦制度が性奴隷制度』であったことが認められるようにしたい」と語っていました。 
 
 弁護団の穂積剛弁護士は、 
「吉見裁判は、アダルトビデオへの出演を拒否した女性への違約金請求を棄却する判決を下したり、アイドルの恋愛禁止規約違反に関する損害賠償請求を棄却した判決を下した東京地裁民事第33部が担当したので、私たちは負けるはずがないと思っていました。しかし、判決を見る限り、裁判官の思考回路は『事実や論理から考えるのではなく、自分に都合の良い結論を出し、それに見合う事実をつなぎ合わせ、それを事実のように考える』というネット右翼の思考回路と一緒でした。他の裁判ではまともな判断ができるのに、吉見裁判では判断が歪んでいます」と指摘し、今後の裁判で裁判所側の判断を覆していくと訴えました。 
 
 YOいっション共同代表の梁澄子さんは「負けるはずのない裁判だった」と悔しさを滲ませながら、 
「吉見さんの著書が捏造とされてしまったら、被害者たちの経験も嘘ということになってしまいます。吉見裁判で問われている問題は、裁判だけで終わるものではありません。日本には、国際社会と同じ視点で、重大な人権侵害を真っ当に判断する国になってほしい」と語っていました。 
 
     ★     ★     ★ 
 
 私も吉見教授が勝訴すると思っていました。しかし、結果は敗訴。しかも、よく意味が分からない判決内容だったので、心がもやもやしています。 
 ただ、吉見教授は報告集会の中で、裁判が続くことについて「『慰安婦制度=性奴隷制度』であることを証明する機会を得た」と仰っていたので、私も今回の結果を前向きに捉えたいと思います。 
 引き続き、吉見裁判の行く末を追っかけていくつもりです。(高木あずさ) 


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