2016年03月12日13時17分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201603121317436

核・原子力

高浜原発3、4号機運転差し止め判決で申立人団・弁護団が声明発表 山崎芳彦

 今年に入って再稼働した関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めを求める滋賀県民の訴えを認めた仮処分決定が大津地裁の山本善彦裁判長によって9日に出されたのを受けて、「大津地裁高浜3、4号機運転禁止仮処分申立事件申立人団、弁護団一同」が声明を発表した。 
 
 「声明」では、「大津地裁は、福島原発事故の原因を津波と決めつけ再稼働に邁進しようとする関西電力の姿勢に疑問を示し、避難計画を審査しない新規制基準の合理性を否定し、・・・公平、冷静に賢明な判断を示した。」として担当裁判官に「深い敬意を表する」とともに、関西電力が仮処分異議や執行停止の申し立てをせずただちに運転停止をすることを求めている。さらに、政府が現行のエネルギー政策を根本から見直して、原発ゼロ政策に舵を切るべきだとしている。 
 
 「声明」の全文は次のとおりである。 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 本日、大津地裁は、関西電力高浜原発3、4号機の運転を禁止する画期的な仮処分決定をした。高浜原発3、4号機は、すでに原子力規制委員会の設置変更許可その他再稼働に必要な手続きを済ませ、4号機はトラブルによって停止中であるが、3号機は、現に営業運転中である。現に運転中の原発に対して運転を禁止する仮処分決定が出されるのは史上初めてである。そして関西電力株式会社は、この仮処分決定によって、4号機を起動させることができなくなっただけでなく、3号機の運転をただちに停止しなければならなくなった。 
 福島第一原発事故は膨大な人びとに筆舌につくしがたい苦痛を与えたが、それでも事故の規模は奇跡的に小さくて済んだ。最悪の事態を辿れば、日本という国家は崩壊しかねなかったのである。大多数の市民が、電力需要が賄える限り、可能な限り原発依存をなくしたいと考えたのは当然であった。そして、その後の時間の経過は、原発が1ワットの電気を発電しなくても、この国の電力供給に何ら支障がないことを明らかにした。もはや、速やかに原発ゼロを実現することは市民の大多数の意思である。 
 然るに、政府は、着々と原発復帰路線を進めてきた。まだ、福島第一原発事故の原因すら判っておらず、10万人もの人が避難生活を続けているのにもかかわらずである。 
 そして、原発復帰路線の象徴が高浜3、4号機である。ここでは、危険なプルサーマル発電が行われている。もし高浜原発で過酷事故が生じれば、近畿1400万人の水甕である琵琶湖が汚染され、日本人の誇りである千年の都京都を放棄しなければならない事態すら想定される。市民がこの政治の暴走を止めるためには、司法の力に依拠するしかなかった。そして、本日、大津地裁は、福島原発事故の原因を津波と決めつけ再稼働に邁進しようとする関西電力の姿勢に疑問を示し、避難計画を審査しない新規制基準の合理性を否定し、避難計画を基準に取り込むことは国家の『信義則上の義務』であると明確に述べるなど、公平、冷静に賢明な判断を示した。市民は、今晩から、いつ大地震が高浜原発を襲うか、いつ高浜原発がテロの対象になるかと脅えなければならない生活から解放される。担当した裁判官3名(山本善彦裁判長、小川紀代子裁判官、平瀬弘子裁判官)に対し、深い敬意を表する次第である。 
 関西電に対しては、仮処分異議や執行停止の申立てをすることなく、直ちに高浜3号機の運転を停止させることを求める。関西電力をはじめとする原子力事業者に対しては、目先の利益にとらわれることなく、この美しい国土をこれ以上汚染することなく将来の世代に残していくために、もう一度、営業政策を見直すことを求める。私たちは、既に、将来の世代に対して、高レベル放射性廃棄物の10万年もの保管という負担を押し付けている。これ以上、負担を増やしてはならない。そして、原子力規制委員会は、今回の決定の趣旨を真摯に受け止め、新規制基準の見直し作業に着手すべきである。また、政府は、2030年に原発による発電を20〜22パーセントとする等という現行のエネルギー政策を根本から見直して、原発ゼロに舵を切るべきである                      以上 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。