2016年03月21日14時03分掲載  無料記事
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政治

「市民連合」関係者が語る参院選に向けた課題

 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(略称「市民連合」)構成団体の「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」や「SEALDs」(自由と民主主義のための学生緊急行動)の関係者が3月9日、東京・三鷹市の国際基督教大学構内で開催された「市民連合の課題−安保法強行と改憲の危機に際して−」(主催:国際基督教大学平和研究所)というイベントで講演し、来る7月の参院選に向けた市民連合の課題等を語った。 
 
<新しい戦前に入ったのではないか!?> 
 総がかり行動実行委員会の高田健さんは、「戦争法(=安保関連法)が成立した昨年9月以降、日本国憲法はそのまま存在しているのに、憲法学者や法曹などの多くの人が違憲だと指摘した戦争法が並立して存在するという奇妙な時代に入ってしまいました」と語り、日本社会が今、きな臭い情勢に入っているのではないかと警告を発した。 
「3月29日以降から憲法違反の戦争法が施行されることになります。日本は戦後70年にわたって海外で戦争してこなかったわけですが、戦争法に基づいて、いよいよ日本の自衛隊は海外で戦争に参加することになります。 
 私たちは3月29日に再度国会前に集まることにしていますが、抗議して済む事態ではありません。南スーダンのPKO(国連平和維持活動)に派遣されている自衛官は現在約350人いますが、今年11月に交代する際、今度は戦争法に基づく戦闘訓練を受けた自衛隊の部隊が南スーダン入りし、戦争を始めるかもしれません。 
 現在の状況は、かつて中国大陸を全面的に侵略した十五年戦争時のような、日本社会全体が軍事体制一色になって世の中が暗く重かった頃の状況とは違うかもしれませんが、自衛隊が戦争する時代に入ったという意味では、これを新しい戦前と言わなくて何と表現出来るでしょうか。この事態を、私たちはどうやって止めるのか。市民連合は今、この問題に立ち向かっています」 
 
<市民連合はプラットフォーム> 
 次いで、高田さんは市民連合を立ち上げるに至った経緯を説明した。 
「戦争法に反対する市民団体は、第1回目の昨年10月以降、今日の夕方から開催される第4回目の野党5党幹事長・書記局長との意見交換会に至るまで、各党に対して『現在の政治状況を鑑みて、今度の参院選では、あれこれ互いの違いを言い立てるのではなく、“戦争法を廃止する”“安倍内閣の退陣を要求する”という点で大きく共同して闘ってほしい。国会では、野党が共闘して戦争法廃止法案を出してほしい』と繰り返し要求してきました。 
 そして昨年12月、野党共闘が一向に進まない状況に焦れた私たち市民5団体(\鐐茲気擦覆ぁΓ江魏すな!総がかり行動実行委員、安全保障関連法に反対する学者の会、SEALDs、ぐ楕欖慙∨,鉾紳个垢襯泪泙硫顱↓ノ憲デモクラシーの会)は、戦争法反対の市民勢力を集結するプラットフォームを作ろうということで結束し、市民連合を立ち上げました」 
 
<憲法改正発議させないための3分の1確保を> 
 最後に高田さんは、「7月の参院選で、憲法改正を発議出来るようになる総議席数の3分の2を与党に取らせてはならない」と訴えつつ、それが簡単なことではないことを強調した。 
「安倍さんは最近、今国会で繰り返し『改憲』と言っています。これまでに無かった事態です。中曽根首相にしても小泉首相にしても、国会冒頭から改憲を公言したり、99条(憲法尊重擁護義務)を批判することはなかったと思います。そして驚くことには、参議院予算委員会で野党の質問を受けて『自らの自民党総裁任期中に憲法を変える』と答えています。 
 安倍さんの自民党総裁の任期は2018年までです。あと約2年あります。任期中に憲法9条を変えると公言したのは、戦争法を作ったものの、憲法9条がまだ生きているために集団的自衛権を全面的に行使することが出来ず、安倍さんの思うように戦争が出来ないからです。その制約を取り払うことが安倍さんの願望だと思います。 
 安倍さんの自民党総裁任期中、参院選が行われるのは今年7月しかないわけです。憲法を変えるためには、衆議院と参議院でそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成が無ければ発議出来ません。衆議院は今、与党が3分の2の議席数を持っていますが、もしも今度の参院選で与党が3分の2の議席を取れなければ、安倍さんの公約はパーになります。だから、安倍さんは相当の覚悟を持って今度の参院選に臨もうとしています」 
 
「私たち市民連合がやることは、はっきりしています。いろんな努力を通じて、今度の参院選で与党と安倍さんの同調勢力に3分の2を取らせないことが出来るかどうかです。過半数という大きなことは言いませんが、せめて改憲反対の野党勢力が3分の1以上の議席を取り、安倍さんの企てを阻止出来るかどうかが、非常に大きな課題になっています。 
 参院選の結果は、今年11月以降に南スーダンで戦争法が発動するか否かにも決定的な影響を与えると思いますし、安倍さんたちの勢力を参院選で後退させることが出来れば、戦争法に基づく武力行使を阻止出来る可能性が十分あります。 
 しかし、簡単なことではありません。野党勢力で3分の1くらいは取れないものかと思いますが、実は本当に難しいことなのです。この度、改選を迎える参院議員は民主党政権時代に当選した人たちでありますが、改選121議席のうち49議席以上は取らないと、非改選の議席を合わせた改憲反対の野党勢力は3分の1に達しないという大変な事態になります」 
 
「参院選では改選数1の“1人区”が32選挙区あり、与党は全ての1人区に候補を立ててくるので、ここで野党候補を1本化して与党を迎え撃てるかどうかが重要で、仮に32選挙区全てで野党勢力が勝ったとしても、さらに“複数区”で17議席以上は取らなければならない計算です。 
 しかし実際のところ、32選挙区の全てで野党が勝つというのはほとんど不可能です。例えば、歴代首相を輩出している群馬県選挙区(1人区)では自民党の中曽根弘文参院議員が選出されていますが、野党が団結しても中曽根さんを打ち破るのは至難の業です。 
 また、安倍さんのお膝元であり、同じく歴代首相を輩出している山口県選挙区(1人区)でも野党が団結したところで自民党の林芳正参院議員を打ち破ることはほとんど不可能です。そういう選挙区がたくさんあるのです。1人区の32選挙区で野党が団結して与党に立ち向かえば勝てるのかというと、そんな簡単なことではないのです。 
 だからこそ、市民連合は『野党勢力が参院選で勝つのは、これほど大変だというのに、民主党だ、共産党だと言って喧嘩している場合ですか?』『野党が団子になっても勝てないのに、未だに野党統一候補が出せないのか』と言い続けているのです」 
 
「2月19日、ようやく野党5党の党首が集まり、安全保障関連法廃止法案を共同提出することや、参院選で協力して候補を立てる、という約束を交わしました。本当に嬉しかったですが、これはまだ第1歩です。今なお、参院1人区の32選挙区全部で野党候補の1本化は出来ていません。間に合うのかと心配しています。今日の午後4時から行われる意見交換会でも、そのことを言いたいと思います。 
 そして、1本化出来てもそこからが重要で、これまでの選挙共闘では、他党の候補者に対して『お手並み拝見』と傍観する態度がよく見られましたが、そんなことで野党勢力は勝てません。本当の共同というのは、1本化した候補者が、今まで気に食わない政党の候補者であっても、自分の党の候補者のように全力を挙げて選挙を闘うことが出来るかどうかです。 
 私たち市民も『選挙は政党に任せておけばよい』という態度ではなく、『私たちの闘いだ』という態度で直接選挙に関わっていくことが重要です。今回のように市民が政党以外の政治団体(=市民連合)を作って選挙に関わっていくというのは、戦後かつて無かったことだと思います。今、市民連合のような組織が全国でたくさん出来つつあります。今後もっと出来ると思います。全国の市民連合が連携しながら、参院選に積極的に関わっていこうと思います」 
 
<野党共闘の難しさとは> 
 SEALDsの元山仁士郎さんは、野党間の共闘について「すごく厳しい状況にある」と語り、今はその大きな壁を乗り越えようとしているところだと報告した。 
「各野党は、それぞれ全国各地で様々な歴史を持っています。例えば昔、『今回はそちらの候補者を応援するから、次はこちらの候補者を応援してくれよ』という約束を交わしたところ、それを守らなかったということで、今なお反目し合っているなど、そういう過去の経緯や各地域特有の問題が存在するわけです。私も、秋田県や岩手県、新潟県などに足を運んだ際、そういう話を伺いました。政党間で共闘する難しさというのはあるのですが、今はそれを乗り越えようとしている状況にあります」 
 
<安保法制や改憲の問題を訴えるだけで良いのか> 
 また元山さんは、市民連合としても安保法制や改憲の問題を訴えるだけでなく、各地方特有の課題にも対応した訴えを行っていく必要があると指摘した。 
「全国には、生活の基盤が壊されていて『政治のことなんて考えている余裕は無いよ』という人がたくさんいらっしゃると思います。 
 そういった人たちに対して野党側の候補者は、諸問題の解決案を提示して現政権との違いを示しつつ、野党側に実行力があることを訴えていかなければならないと思いますが、市民連合には、そのような力を有する候補者を擁立し、アピールしていかなければならない課題があります。 
 また、市民連合としても生活に根付いた政策を訴えていけるかどうか、地方特有の問題にも対処できるかどうかが課題としてあると思っています」 
 
「『全国各地の市民の方々に訴えていく上で、安保法制とか改憲はなかなか届かない』ということを議員の人から言われるんですね。SEALDsが参加するシンポジウムに多くの市民が集まる様子を見ても分かるように、もちろん私たちの訴えが届く人はいます。 
 しかし、例えば都会でなく非常に田舎な場所において安保法制や改憲の問題を訴えたとして、そこの住む人たちの心に響くのかという課題があります。実際、私が訪問したある地方で『安保法制の問題以外でどんなことがホットな問題ですか』と尋ねたところ、『TPPや過疎化の問題だ』と仰いました。だから、安保法制や改憲の問題ばかり訴えていても参院選で勝つのは恐らく難しいでしょう。 
 したがって野党候補は、例えばTPPではどういうことが問題で、私たち市民にどういう影響があるのかを訴えなければいけないと思いますし、過疎化の問題についても、どういうふうに対策していくかを示さなければいけないと思います。 
 また、市民連合としても『それぞれ地域特有の課題に取り組んでいきましょう。それは与党じゃなくて、野党側の方がビジョンを持ってますよ。実行力がありますよ』ということを提示していなければならないでしょう。私たちの運動には、そういう難しさ、課題があります」 
 
「しっかり考えて投票する人もいれば、何となく『この候補者でいいんじゃないか』という感じで投票する人もいるでしょう。僕たちが『やばいよ』『危険だ』とだけ訴えていても、人によっては『ヒステリックだ』と受け止める人もいて、なかなか共感は広がらないと思います。ですから、そういう訴え方ではなく、『共闘した野党側の方が良い』と思ってもらえるような、ポジティブなイメージで打ち出していくことが大事だと思いますし、そういうことをSEALDsとか市民連合でやっていきたいと思っています」 
 
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 3月18日、東京・文京シビック大ホールで「安倍政治を許さない!参院選総決起集会」(主催:オールジャパン平和と共生)というイベントが開催され、来賓の高田健さんに並んで、民主党の江田五月参院議員と篠原孝衆院議員、日本共産党の山下芳生参院議員、社民党の吉田忠智参院議員、生活の党と山本太郎となかまたちの小沢一郎衆院議員ら野党代表者が揃って登壇した。 
 こうしたイベントが開催されたのは、野党が共闘するよう背中を押してきた市民連合など戦争法反対を訴える市民勢力の成果だと言えよう。 
 
 各国会議員の決意表明からは、野党共闘が順調に進んでいる様子が窺えた。 
「原発、TPPなどの各政策目標について、各党それぞれに意見はあるでしょう。しかし、安倍さんの暴走、これはいけないんです。戦後の焼け野原から今日の日本を作ることが出来たのは、憲法が果たしてきた役割が大きい。安倍首相の暴走を認めない、絶対に食い止めるという一点で野党はしっかり腕を組んで頑張ります」(民主党・江田五月参院議員) 
 
「2月19日に野党5党党首が集まり、\鐐菲,稜兒澆判乎津自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通目標にする、安倍政権打倒を目指す、9饑選挙で現与党及びその補完勢力を少数に追い込む、す餡饌弍や国政選挙などあらゆる場面で出来る限りの協力を行う、という4点で合意しました。その具体化のために、野党5党の幹事長・書記局長は毎週協議しています。 
 その結果、,砲弔い導禿泙料挙公約にすることで合意しました。そして安保法制以外でも『安倍政権打倒で一致しているのだから、共通政策を探求しようじゃないか』ということで協議に入りました」 
「参院1人区で候補者を1本化しようということで、既に熊本、宮城、長野、高知・徳島、沖縄そして昨日は宮崎、今日は長崎で合意に至りました。また、衆議院の解散・総選挙に備えて、小選挙区の候補者調整もやりたいと思っております。 
 ここまで来た一番の力は、『野党頑張れ』『野党は共闘』の声を上げた国民皆さんの奮闘のおかげです。これほどまでに国会議員と市民が連携したことは、かつて無かったのではないでしょうか。安倍首相は“自公対民共”だと言っていますが、もの凄く狭い。“自公対5野党プラス市民・国民の連合”ではないでしょうか」(日本共産党・山下芳生参院議員) 
 
「皆さん方が背中を押してくれたおかげで、野党5党の共闘関係を作ることが出来ました」 
「先程、山下さんからお話がありましたように、7選挙区で共産党さんに候補者を取り下げていただきました。野党共闘は加速してきました。衆参同日選も想定して、295小選挙区で候補者を1人に絞るべく全力を尽くします。社民党は、これからも接着剤、要石の役割を果たしていきます」(社民党・吉田忠智参院議員) 
 
「どなたかが、民進党結党に当たって『誰々には来ていただきたくない。これまで足ばかり引っ張ってきたから』と余計なことをおっしゃっていたが、そんなつまらないことは忘れて、大同団結していかなければならないのです」(民主党・篠原孝衆院議員) 
 
「安倍政権を許さず、国民の側に立った本当の政権を作り上げるためには、夏の選挙で勝たなければなりません。そのためには、政党も政治家も、本当に心を一つにして頑張っていかなくてはなりません。 
 衆参ダブル選挙の足音がだんだん高くなってきました。このままでの状況でいきますと、衆参ダブル選の可能性が強くなるのではないかと考えています。自公は、野党を徹底的に殲滅しようと考えて衆参ダブル選を行おうとしているのでしょう。 
 私たち野党の方は、お互いに良いだの悪いだの、好きだの嫌いだのと言っていたのでは自公に勝つことは出来ません。本当に心を一つにして力を合わせれば、絶対に国民の信頼は野党に集まります。ですから、衆参ダブル選挙恐れるに足らず、衆参ダブル選挙こそ、まさに一気に政権を交代させる最大の機会なのです」(生活の党と山本太郎と仲間たち・小沢一郎衆院議員) 
 
 市民連合関係者の願いどおり、参院1人区における野党候補の一本化は、福井や鳥取・島根でも合意に至るなど加速しつつある。 
 引き続き市民連合の活躍に注目していきたい。(坂本正義) 


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