2016年03月27日11時29分掲載  無料記事
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アフリカ

スマートフォンの陰に児童労働 コバルトの粉塵が舞う採掘現場で働く子どもたち

 携帯電話やノートパソコン、デジタルカメラに欠かせないレアメタルの一つが、コバルトです。その主要産出国であるコンゴ民主共和国では、労働者や子どもたちが、日々、過酷な環境でコバルトを採掘しています。時には命を落とすことさえあります。コンゴ産コバルトは、何社もの手を経て、最終的にアップルやマイクロソフト、サムソン、ソニーなどの製品で使われています。調達過程で人権侵害がないように努めるのは、企業はもちろん、企業のある国の責任です。(アムネスティ国際ニュース) 
 
 
◆命を削る手掘りの鉱石 
 
 コンゴ産コバルトの20%は、同国南部の鉱山で手掘りで採掘されています。国に認可されていない「違法」な鉱山がほとんどで、11万人から15万人の採掘労働者が働いています。その中には子どもたちもいます。 
 
 こうした鉱山では地下数十メートルの深さまで坑道が掘られていますが、きちんと補強されていないため落盤しやすく、換気も不十分で、窒息の危険もあります。しかし採掘者たちは、手袋やヘルメット、フェイスマスク、作業着など、必要最低限の安全装備もなく、長時間働いています。 
 
 事故の発生頻度も高く、過去1年に鉱山事故で亡くなった人の数は、一部の州だけで80人以上に上ります。事故の多くは公表されないため、もっと多いとされています。がれきに埋もれたままの遺体も少なくありません。コバルトの粉塵による肺や呼吸器の疾患、皮膚炎、心臓病、甲状腺異常といった健康被害も深刻です。運び出された鉱石を素手で扱う子どもたちや女性たちの身体にも影響が出ています。 
 
◆危険だらけの鉱山で働く子どもたち 
 
コ ンゴの採掘現場で働く子どもは4万人と言われています。その多くが、コバルト採掘に関わっています。素手で鉱石を集め、選別、洗浄、粉砕し、自分の体重より重い鉱石袋を運んでいます。 
 
 子どもたちは苦しい家計を支えるため、学校の前後や、週末に鉱山で働いています。学校へ行けず、ずっと働きづめの子もいます。しかし1日12時間働いても、報酬はわずか1〜2ドル。「違法」な現場で働いていることを理由に、当局から賄賂を強要されたり、暴力を振るわれたりすることも決して少なくありません。 
 
 私たちが、日々、何気なく使っているモノが、人びとの命を削り、子どもたちを危険にさらしている可能性があります。私たちは消費者として人権侵害をなくすための対応を国や企業に求めていくことができます。 
 
 コンゴ産コバルトの40%を買い取っているのが、中国の鉱業大手、華友コバルト社の子会社です。同社から中国へ輸出されたコバルトは、中国と韓国のリチウムイオン電池部品メーカーに供給され、この部品を使ったバッテリーは、アップル、マイクロソフト、サムソン、ソニーといった電機電子メーカー、ダイムラー、フォルクスワーゲンなどの自動車メーカーに提供されています。 
 
 2011年に国連で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」は、企業には人権を尊重する責任があると明記しています。企業は、国際的な事業を展開する中で、人権侵害を引き起こし、あるいは助長することのないよう積極的に対策を講じ、事業が人権に与える影響をきちんと調べ評価しなければなりません。 
 
 また国は、企業が人権侵害をしないよう指導することが求められています。2015年6月にドイツで開催されたG7サミットで、日本政府は指導原則に沿った責任ある調達活動の推進を宣言しています。 
 
アクションに参加を! 
https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/drc_201603.html#form 


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