2016年04月18日01時21分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

刑訴法等改悪法案、廃案なるか!? 〜4/14刑事訴訟法等の改悪に反対する法律家・市民・国会議員の集い

 自由法曹団、青年法律家協会弁護士学者合同部会、日本国際法律家協会、日本民主法律家協会、社会文化法律センターの法律家5団体は4月14日、この日の午後から参議院法務委員会で審議が始まった刑事訴訟法等改悪法案に反対するため、日比谷公園霞門に市民・法律家ら約300人(主催者発表)を集めて国会請願デモを実施するとともに、参議院議員会館で「刑事訴訟法等の改悪に反対する法律家・市民・国会議員の集い」を開催した。 
 
 正午から始まる国会請願デモに先立ち、自由法曹団盗聴法・司法取引阻止対策本部事務局長の加藤健次弁護士が挨拶し、刑事訴訟法等改悪法案を廃止すべく力を合わせようと訴えた。 
「刑訴法等一括法案が今日から参議院法務委員会で審議入りします。いよいよ正念場に来ています。この法案を徹底的に批判して成立を阻止すれば、この一括法案全てが廃案になります。廃案になれば、どこかの官庁の幹部の首が飛ぶとか飛ばないとか言われていますが、飛ぶなら飛ばしてみようではありませんか」 
「先週4月8日に宇都宮地裁が判決を出した今市の事件(=栃木小1女児殺害事件)で、不完全な一部の録画がどんなに危険な使われ方をするかが分かりました。このまま、こんな法案を通してはなりません」 
「この法案は、昨年成立し、今年施行された戦争法に基づく戦争国家作りに非常に重要な役割を果たすものだと思います。憲法を守れ、戦争国家作りを許すなという声と併せて、人権侵害を拡大し、冤罪を生み出しかねない危険な法案をきっぱり廃案していきましょう」 
 
 また、盗聴法に反対する市民連絡会の中森圭子さんは、法案の危険性を多くの市民に知ってもらわなければならないと訴えた。 
「3月31日に院内集会を開催しましたが、そこでジャーナリストの青木理さんが『この盗聴法改悪法案は、戦争法よりももっと恐ろしい法案ではないか』と仰っていました。いろんなところで私たちの行動が監視されていく、そんな社会がやって来るように思います。この問題を、もっと多くの人に知ってもらわなければなりません」 
 
 13時30分頃から始まった院内集会では、まず始めに弓仲忠昭弁護士が、昨年参議院法務委員会に回ってきた刑訴法等改悪法案について、参議院法務委員会で現在、民主党の戦術により“人種差別撤廃施策推進法案”が先議案件となっていることや、自公両党が野党に対抗して“ヘイトスピーチ抑止法案”を参議院に提出したことなど国会情勢を報告するとともに、与党の野望を阻止することは可能であると訴えた。 
「法案の審議は今、政府・与党の希望通りに全然進んでいません。何が何でもということで、国会閉会までの残り1か月半の間に法案の採決を強行しようとしても、他に審議しなければならない法案が山積み状態です。ですから、私たちがこの運動を頑張り切り、刑訴法等改正法案の審議に時間が掛けられない状況を作り出すことが出来れば、政府・与党の野望を打ち砕くことが出来るんじゃないでしょうか」 
 
 集会では、警察により自宅を盗聴された元日本共産党参院議員の緒方靖夫さんや布川事件冤罪被害者の桜井昌司さんが「警察に新たな武器を与えてはいけない」と訴えた。 
「盗聴範囲の拡大は、非合法の盗聴のすそ野を広げていく、人権侵害を広げていく問題です。警察に新たな武器を渡すな、警察をこれ以上強くしてはいけません。それが僕の経験から強く訴えたいことです」(緒方靖夫さん) 
「私たち冤罪被害者は、警察がいかに汚いかが身に染みて分かっています。あの方たちに新たな権限を与えるのはとんでもないことです。法案を通さないため、残り約2か月間頑張りましょう」(桜井昌司さん) 
 
 共催団体を代表して、自由法曹団の荒井新二弁護士、青年法律家協会弁護士学者合同部会の立松彰弁護士、日本国民救援会の岸田郁事務局次長、なくせ冤罪!市民評議会の客野美喜子代表が、それぞれ廃案に向けて力を合わせようと訴えた後、会場に駆けつけた国会議員も、会場に集まった市民らに連帯を約束した。 
 
「今、日本に国連『表現の自由』特別報告者の担当官が来日して調査しています。刑事訴訟法等改悪法案の問題は、表現の自由や精神的自由と正につながる問題です。法律家・市民とタッグを組んで法案を成立させないよう全力を尽くしていきます」(社民党・福島瑞穂参院議員) 
 
「廃案に向けて全力を尽くしていきます」(日本共産党・畑野君枝衆院議員&清水忠史衆院議員) 
 
「参議院法務委員会で刑訴法等改正案の審議が始まりました。この法案が8か月も審議されなかったのは、私たちが提出した人種差別撤廃施策推進法案の審議を優先するよう求めてきたからです。6月1日の会期末まで、法務委員会の定例日は残り12日。ヘイトスピーチ対策法案の審議もあります。刑訴法等改正法案の行方は、世論の高まりと法務委員会審議との連携に掛かっています。4月12日には、法務委員会として通信傍受を行う民間事業者を訪れ、機器の説明や実際の運用場面のデモンストレーションを視察しました。小川敏夫参院議員(民進党)が、警察官の恣意的運用の可能性について質問すると、事業者はそれを認めざるを得ませんでした。問題が山積する刑訴法等改正法案をこれから徹底的に追及していきます」(民進党・有田芳生参院議員) 
 
「国家権力と国民の権利の双方をどうバランスさせるかは、政治家の大きな課題です。現政権の問題点の1つは、国家権力を強くすることに暴走する一方で、国民の権利を蔑ろにしていることだと思います。政府が提出した刑訴法等改正法案に、私が違和感を抱く最大の理由がそれです。冤罪防止に一歩前進という陰で、捜査当局の権限が格段に強くなり、新たな冤罪を作り出すことが可能なのではないかという疑念がまだ拭えていません。参議院法務委員会での質疑では、そうした点を問い質すつもりです。そして廃案、最低でも望ましい形での修正を勝ち取るべく、皆様と共に闘っていきます」(民進党・新緑風会・真山勇一参院議員) 
 
 集会の最後に、加藤建次弁護士が今後の行動について提起した。 
「今国会の会期末は決まっていて、残りの会期日数はゴールデンウィークもありますので、実質4週間から5週間です。政府・与党としては絶対に会期中に処理しなければならない法案がいくつかありますので、4月の残り約2週間が非常に重要になります。あまり順序立てて準備する余裕は無いので、今日お時間がある方は、この後、参議院法務委員会を傍聴して国会議員を励ましていただきたいです。また『刑訴法等改悪法案の成立を許さないぞ』ということを示すべく、この後、弁護士と市民の方が一緒になって参議院法務委員の部屋を回りたいと思います。今日の行動提起は、以上2点です」 
 
「刑訴法等改悪法案に反対する院内集会が、4月22日(金)と27日(水)にありますので、是非多くの方に参加していただきたいです。その他、今日の院内集会を共催した法律家5団体や賛同団体は、国会情勢を見ながら、適切な時期にまたこういう集会を開催する予定です」 
 
「マスコミが、例の今市事件の判決を機に、可視化のあり方について議論を改めて進めつつある状況です。法律家5団体もこの間、マスコミにいろいろと要請していますが、市民の方々にも是非マスコミを動かすべく投書などをお願いしたく思います」 
 
 また加藤弁護士は、今後の見通しについて次のように語った。 
「恐らく政府・与党が刑訴法等改悪法案を今国会で通そうとするならば、強行採決するしかないという局面に来ています。与党が提出したヘイトスピーチ規制法案は、きちんと議論すれば、とても与野党で話がまとまるような中身ではありません。 
 ですから、出来るだけ世の中にこうした状況や、刑訴法等改悪法案の中身を知らせていって関心を持つ人が増えていけば、与党としては変なことは出来なくなります。密室での手打ちや強行採決させないよう私たちが頑張れば、刑訴法等改悪法案は簡単には成立しないと確信しています」 
 
 刑訴法等改悪法案の運命やいかに。(坂本正義) 


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