2016年04月21日23時32分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

アムネスティが勧告 差別を助長しかねないヘイトスピーチ解消法案を速やかに修正せよ

 現在国会で審議が始まっている「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(案)」(ヘイトスピーチ対策法案)に対し、国際人権団体アムネスティ日本は4月19日、実効性あるものに修正すべきとの声明を出した。同法案については、国内で外国人差別問題に取り組む外国人人権連絡会も4月9日、「より実効性のあるものに」との声明を出している。(大野和興) 
 
 アムネスティの声明を紹介する。 
 
 2016年4月8日、自民・公明両党は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(案)」(以下、「法案」という。)を参議院に提出し、4月19日から審議入りした。 
 
 これまで日本政府は、法律で禁止するほどの差別は日本には存在しないとして、人種差別を根絶するために効果的な対策をまったく講じてこなかった。今回の与党の試みは、ヘイトスピーチが深刻化する中で、ようやく出てきたものである。 
 
 しかしながら、今回の法案は、ヘイトスピーチに関する定義を曖昧にした上、特定の集団を法の保護の対象から排除しているため、逆に差別を助長する恐れがある。したがって、アムネスティ・インターナショナル日本は以下の懸念を表明し、審議にあたり、修正することを強く要請する。 
 
◆人種差別は違法であることを明記せよ 
 
法案はその前文において、不当な差別的言動はあってはならず、看過することは国際社会において日本の地位に照らしてもふさわしいものではない、と述べている。そのうえで法案は「不当な差別的言動」を定義しているが(法案第2条)、その内容は極めて限定的である。 
 
日本も批准している人種差別撤廃条約は、締約国に対して人種差別の撤廃および禁止の義務を課している(条約第2条)。また、自由権規約も、「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する」と定めている(規約第20条2項)。したがって日本は、これらの条約の締約国として、ヘイトスピーチが違法であることを明記し、人種差別の包括的定義を盛り込んだ差別禁止法を制定する義務を負っている。これらの点は、2014年の人種差別撤廃委員会の日本審査でも勧告を受けている。 
 
しかし、法案はその前文で、不当な差別的言動は許されないと宣言するのみで、具体的な禁止のための措置を講ずるものではない。条文の中でも人種差別が違法であるという規定はなく、実効性が乏しい。 
 
◆「本邦外出身者およびその子孫」と限定してはならない 
 
人種差別撤廃条約は、締約国の領域内において、あらゆる形態の人種差別を禁止するよう求めている。しかし、法案は「専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫」に対する差別的言動と限定しており、国内に居住するその他のさまざまなマイノリティを除外している。 
 
とりわけ、法案が「適法に居住する者」と限定することで、何らかの理由により適法に滞在することが不可能となったものは、差別的言動を甘受しなければならないこととなる。そのため、難民に対する差別なども、難民としての滞在資格の有無により、差別言動の合法性・違法性が異なってくる。滞在資格の有無は行政の広範な裁量に一任されている。これでは、行政府の判断次第で一部の者への差別が助長される。人種差別を徹底して禁止しなければならないとする国際社会の努力に、真っ向から反する内容である。 
 
 以上に鑑み、アムネスティ日本は、同法案の審議に際して上記2点を国際人権諸条約に沿って修正するよう、強く求める。 
 
 また、日本政府は、差別行為の犯罪化と煽動行為の禁止を規定した人種差別撤廃条約第4条(a)および(b)に対する留保を直ちに撤回すべきである。 
 
 あわせて、差別など人権侵害の申立てを調査・検討し対処する権限を持った、独立した公的機関が日本において設置されなければならない。日本は、世界百数十カ国がすでに持つような、「国内機関の地位に関する原則」(パリ原則)に沿った国内人権機関の設置を早急に進めるべきである。 
 
以上 
 
2016年4月19日 
アムネスティ・インターナショナル日本 


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