2016年06月19日05時31分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201606190531150
国際
マスメディアによる世論調査の検証の必要性 サンプリングが適切かどうか 世論調査が誤っていた去年の英国の選挙の場合 統計上の誤差を考えると細かい増減で一喜一憂するのは愚か
昨年の英国の総選挙で、世論調査の支持率と投票後の結果が大きく異なっていたことがあり、英国ではなぜそのようなことになったのか、検証が行われました。本紙でも数学に詳しい谷克彦氏による問題提起がなされています。
英国の場合、事前の世論調査では労働党と保守党が拮抗しているとされましたが、蓋を開けてみたら、保守党の圧勝だった問題です。英国で調査委員会が組織され、検証した結果、世論調査で意見聴取が行われたサンプル集団に偏りがあり、サンプルに含まれる労働党支持者の割合が実際の社会の割合よりもかなり多かったことが明らかになりました。
去年の英国の総選挙は今、話題になっている通り、英国が欧州連合にとどまるかどうかに影響を与える歴史的に重大な選挙でした。というのも与党で保守党のデビッド・キャメロン党首は２０１５年の総選挙で勝てば、欧州連合にとどまるかどうかの国民投票を行うと宣言していたからです。世論調査の誤りが最終的にこの保守党の圧勝にどう影響を与えたかは不明ですが、重大な選挙の際に世論調査の支持率がまったくでたらめだったことはBBCなど英国で大きく報道されました。
恐ろしいことは英国でこのようにきちんと検証がなされたことで初めて世論調査の誤りが報じられましたが、通常は野放し状態で、何の検証もまったく行われていないことです。
世論調査とか、テレビの視聴率は膨大な市民の中から、ごくごく一部の市民をサンプル集団として選んで、その調査結果から全体はこうだ、と推測する手法です。この統計手法が有効であり得るのはサンプル集団が社会全体の集団を正確に反映していることが前提となります。たとえば１０００の世帯で世論調査を行った、としてもその１０００世帯が社会の構成を正確に反映できているのか、という根本的な問題です。世論誘導を行うのに最適のツールが世論調査なのかもしれません。
そもそも統計的には誤差がもともと含まれることに加えて、サンプル集団の選抜において、実際と異なる偏りが出る可能性を考えてみると、微妙な世論調査の支持率の増減に重大な意味を読んで一喜一憂するのは状況を誤る可能性が高いことがこの英国の検証から指摘されています。サンプル集団を具体的にどのような方法で選択しているのか、新聞・テレビ各社に対して調査報道が行われる必要があるでしょう。
■マスコミ各社・選挙前の世論調査の「支持率」は本当に信頼できるのか？ サンプル集合の選び方で数字はまったく変わる 谷克彦（数学月間の会 世話人）
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201606181029266
■Significance magazine ’Yes, the polls were wrong. But it is time we understood their limitations’(そう、世論調査は間違っていた。だが、世論調査はもともと正確ではないことを理解してよい頃だ）
https://www.statslife.org.uk/politics/2752-yes-the-polls-were-wrong-but-it-s-time-we-understood-their-limitations
＜The inquiry’s central conclusion 〜that unrepresentative samples were the primary cause of the polling miss 〜 was revealed back in January. A statement issued at the time explained how “methods of sample recruitment used by the polling organisations resulted in systematic over-representation of Labour voters and under-representation of Conservative voters”, and that “statistical adjustment procedures applied by polling organisations were not effective in mitigating these errors”. Or, as The Sun put it, “General election pollsters got result so badly wrong because they did not ask enough Tories”.＞
■二大政党制の元祖英国の選挙 保守党３３１議席（３６．９％） 労働党２３２議席（３０．４％） スコットランド民族党５６議席（４．７％） 労働党の敗因分析がどう報じられているか
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507221737023
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。