2016年06月28日19時54分掲載  無料記事
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ジャン・ビヤンボーム著 「宗教に対する沈黙 〜ジハーディズムに直面した左翼〜」

  フランスのパリでは昨年1月に風刺新聞のシャーリー・エブドに対するテロが起き、風刺漫画家ら12人以上が殺されました。フランスでは「私はシャーリーだ」というプラカードを掲げて市民が多数抗議に参加しましたが、この時、日本では<異国の宗教を風刺する漫画を描くのはけしからん><シャーリー・エブドはヘイト団体だ>と言ったようにむしろ、殺された風刺漫画家たちへの非難の渦が起きました。さらに<イスラム国とイスラム教は関係ない>というメッセージも国境を越えて飛び交いました。 
 
  11月に今度はパリのカフェテラスにいた普通の人々や劇場でコンサートを楽しんでいた人々がテロに会い100人以上が殺されました。どちらもイスラム国とつがなりのある戦闘員によるものでした。こうしたテロが起きるごとに、その社会の差別の構造が第一義的に語られ、宗教自体に問題があるという言説がメディアに出てくることはほとんどありません。そのことに疑問を持って取り組んだのが本書、「Un silence religieux 〜la gauche face au djihadism〜」 (「宗教に対する沈黙 〜ジハーディズムに直面した左翼〜」)です。 
 
  ジハーディズムでは異教徒の敵を殺すことが認められ、それによって戦死した場合は天国で処女に迎えられる、と語られています。多くの宗教では天国が設定され、宗教戦争で戦死した戦闘員は祀られ、天国に行けるとされることがしばしばあります。日本の靖国神社にも戦死者が祀られています。こうしたテロや戦争は宗教に本当に関係がないのか、そこにもう一度目を向ける必要がないのか、という問題提起の書が「宗教に対する沈黙 〜ジハーディズムに直面した左翼〜」です。 
 
  著者のジャン・ビヤンボーム(Jean Birnbaum)氏はルモンドの書評を担当しているジャーナリストです。本書ではマルクスやヘーゲル、フォイエルバッハなど宗教を考えた哲学者の歩みも考察され、冒頭に「宗教に対する批判は、すべての批判の前提である ( La critic de la religion est la condition de toute critique)」(マルクス)という言葉が掲げられています。 
 
 
■サンジェルマンデプレで行われた人類学者ルネ・ジラールへの追悼の集い ジャン・ビヤンボーム(Jean Birnbaum) 
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■オーランド市で説教したイスラム原理主義の指導者 「ゲイを殺すのはゲイへの思いやり」 
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■【テレビ制作者シリーズ】(8) 反戦に意志を貫く個を描く、林雅行さん  村上良太 
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