2016年07月04日00時53分掲載  無料記事
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安倍政権を検証する

「積極的平和主義」の影響が明瞭に ダッカの人質事件と海外での「自衛隊」の初戦闘の可能性 

  今回のバングラディッシュの首都ダッカで起きたイスラム国系戦闘員による日本人も含めた人質事件。立てこもりがもっと長く続いていた場合、日本初の戦争になった可能性もあります。昨年9月に安保法制が国会で可決され、自衛隊は日本人が海外で拉致されたり、人質にされたりした場合に救援活動の中で軍事的に応戦することが可能となっています。自衛隊は事件が起きた当該国の政府の承認があった場合は邦人の輸送だけでなく、必要な場合は武力の行使を含めた邦人の身柄の安全確保ができる、ということになったからです。 
 
  安倍首相が去年1月、エジプトで行ったイスラム国と戦っている国々への経済支援の表明ののち、イスラム国は日本を敵国として認知することになりました。まさにその直後に2人の日本人がイスラム国で斬首されたことも記憶に生々しく残っていることでしょう。今回のダッカのテロ事件では邦人7人が殺害されました。今後は世界各地で同様の事態が起こりえ、自衛隊が派遣されて戦闘に入る可能性は飛躍的に高まっています。憲法9条を国民投票で改正しなくても、安倍首相と横畠内閣法制局長官の判断で戦闘突入がすでに可能になっているのです。遠く離れた中東の宗教戦争に日本が介入する必要があったのでしょうか?よくも悪しくも安倍首相が掲げる「積極的平和主義」の「成果」がこれから明確になっていくものと思われます。 
 
  以下は、昨年11月、パリで起きたイスラム国戦闘員によるテロ事件のあとににまとめたものです。 
 
 
 「国際テロと『存立危機事態』戦争体制への移行も 70年ぶりの戦争の可能性が高まる 」 
 
  今回、テロで襲われたのはパリでしたが、集団的自衛権を認める安倍政権のもとでイスラム国(Daesh)などがもし外国在住の日本人ないしは日本国内を狙ったテロを起こした場合、我が国も70年ぶりに戦時体制に突入することが可能性としてありえます。その場合に、米露仏などと集団的自衛権を行使するということになるかもしれません。 
 
  ではパリで日本人観光客や日本人の住民が狙われた場合はどうなのでしょうか?その場合、フランスと共同で自衛権を行使することになるのでしょうか。あるいは日本の旅客機が墜落させられた場合。 
 
  9月に可決された安保法制の中には「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」など、一連の戦時体制に移行する法律があり、その場合に自治体や企業、個々人が国防のために多少の人権が奪われることも容認しなくてはならない旨が書き込まれています。かりに日本国内でなくて外国であっても、攻撃の結果、我が国の存立が危機にさらされる、ということになると、自衛隊の派遣や国内の戦争体制への移行が早急に行われるようになるでしょう。国会でも議論になりましたが、この場合の「存立危機」とは何か、未だに曖昧になっています。 
 
  現在、日本の多国籍企業は海外での販売や買収活動、生産活動などを増やしています。安倍政権はこれらの企業をアベノミクスの柱として、後押ししてきました。ですから、海外で日本人が標的とされ始めると、その本拠地を叩くための「テロとの戦い」に日本も参加することは予想されうる事態です。日本経済が危機に陥る、という理由があればそれは重要影響事態か、あるいは存立危機事態か、いずれにしても自衛隊の出動を可能にする事態となるでしょう。 
 
  それともう一つは「在外邦人の救護」の場合です。今回の安保法制で自衛隊は事件が起きた当該国の政府の承認があった場合は邦人の輸送だけでなく、必要な場合は武力の行使を含めた邦人の身柄の安全確保ができることになっています。その場合、自衛官は刑法の正当防衛の枠内で応戦できることになります。ではどこかの国で邦人の集団を人質にしてテロリストが立てこもった場合、日本の自衛隊は緊急出動するのでしょうか?国会論戦では自衛隊の出動は基本的には国会承認が前提だが、緊急時は事後承認でよい、という話をしていたのが思い出されます。一歩先に戦争が迫っていると言える状況に入っています。 
 
■機関誌で「日本攻撃」呼び掛け 
http://www.sankei.com/world/news/150910/wor1509100050-n1.html 
 
 
■参院論戦6 「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」を読む 国連決議がなくても自衛隊の派遣が可能に 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507311431095 
 
■参院論戦2 「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」を読む 〜在外邦人の「保護措置」について〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507271607251 
 
■参院論戦3 「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」を読む 〜周辺事態と重要影響事態〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507272151391 
 
■参院論戦4 「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」を読む 〜存立危機事態〜 国家総動員体制と人権が制限される可能性 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507281158172 


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