2016年07月16日00時19分掲載  無料記事
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労働問題

国公労連が「2016国公青年セミナー」を開催 〜“青年協議会”の活動再開を目指して〜

 国家公務員を中心に組織する国公労連(日本国家公務員労働組合連合会)は6月中旬、国公労連に加盟する単組の青年組織で中核を担う中央・地方段階の若手組合員を都内に集め、恒例の「2016国公青年セミナー」を開催した。 
 2006年から始まった国公青年セミナーは、国家公務員の定員削減とそれに伴う新規採用の抑制が影響して青年組織が存立し得ない単組が増えたことで、国公労連の青年組織「青年協議会」も活動休止に追い込まれ、そのために中断期間を挟んでいるが、2014年に再開して今年で8回目を迎えている。 
 6月17、18日の2日間に亘って開催されたセミナーは、1日目に若手組合員ら約50名が「議員要請グループ」「人事院交渉グループ」「財務省交渉グループ」の3グループに分かれて実施する“要請・交渉行動”、2日目に労働運動に詳しい研究者・ベテラン組合員を講師に招いた“講義”という2種類のカリキュラムが組まれた。 
 
<「国公青年セミナー」の目的> 
 
 セミナー開会の挨拶に立った国公労連の鎌田一書記長は、衆議院第二議員会館に集まった若手組合員に「2日間の国公青年セミナーで、1つでも2つでも知識・経験を身に付けて、将来の青年運動の糧にしていただければと期待しています」と語りかけながら、セミナーの目的を次のように説明した。 
「国公青年セミナーには、“青年の要求実現”、“青年運動を推進するための学習”、“単組を超えた交流を図る”という3つの目的があります」 
 
「1つ目の目的である“青年の要求実現”に向けて、セミナー初日に人事院と財務省との交渉をセットしました。 
 職場では『国家公務員の労働条件は法律で定めるので、組合がいくら頑張っても要求は通らない』と仰る人がまれにいらっしゃいます。確かに、私たちの労働条件を決めるに当たっては、“人事院勧告を通じて国会で作られる法律に基づく”という『勤務条件法定主義』、そして法律に基づくとしても“予算の範囲内に限られる”という『財政民主主義』という制約がありますので、私たちの要求を実現することは簡単なことではありません。 
 しかし、日本国憲法や労働法には“労使対等”という精神が貫かれていますし、労働基本権が一部制約されているとはいえ国家公務員も労働者でありますから、労働者である限り労使交渉で決めるのがスタンダードです。 
 今回、皆さんには労使交渉に参加していただきますが、労使交渉で最も重要なのは相手側、特に宿舎なら宿舎、手当なら手当の担当者をその気にさせることが、なによりも大事です。特に、財務省や人事院という査定官庁の役人は、職場の実態をほとんど知りません。むしろ法律や予算、政権の動向ばかり気にしています。したがって交渉では、いかに職場の実態をリアルに伝え、その担当者が『やってみようかな』という気にさせることが一番大事です」 
 
「2つ目の目的である“学習”ですが、当局に要求を理解させたり、青年運動を推進するためにも、頭を鍛えて経験を重ねることが大事です。私は、若い頃によく先輩から『当局は本当に頭が良い。だから、要求実現のための剣を持て』と言われたことを覚えています。そのため、セミナーでは国会議員要請と講義をセットしました。 
 労働組合として要求を前進させるべく当局に立ち向かうためには、労働組合への結集を高めると同時に、現場力と集団知能が重要なのです」 
 
「3つ目の目的である“交流”ですが、交流することによって他省庁の実態や、同じ青年でも異なる環境に置かれ得ること、共通する悩みがあることに必ず気付くはずです。それが、国公産別の活動を進める上では欠かせない認識だと思っています」 
 
<セミナー1日目“要請・交渉行動”> 
 
 セミナー1日目の“要請・交渉行動”で若手組合員たちが要求した内容は、次のとおりである。 
 
【議員要請】 
<国民の安全・安心を支える公務・公共サービスの体制・機能の充実を求める> 
 
 峭颪旅埓機関の機構・定員管理に関する方針」の撤回、「定員合理化計画」の中止 
 
国民のくらしや雇用、地域の安全・安心を支える国の行政・司法の体制と機能を拡充するための必要な予算・要員の確保 
 
【人事院交渉】 
<初任給をはじめとする青年層職員の処遇改善を求める> 
 
…其癲諸手当について(月給、初任給、一時金、扶養手当、地域手当、住居手当、通勤手当、単身赴任手当、寒冷地手当、赴任旅費など) 
 
∀働時間・休暇制度等の労働条件について(勤務時間の短縮、勤務時間管理の徹底、休暇制度・育児休業制度の改善など) 
 
H鷯鏘仗Πの制度条件について(雇用の安定、常勤職員との均等待遇など) 
 
たΠの健康・安全の確保について(メンタルヘルス対策、健康診断受診の促進など) 
 
【財務省交渉】 
<公務員宿舎の確保及び拡充・改善を求める> 
 
仝務員宿舎の確保等について(入居を認める職員類型の見直し、民間の借り上げなど) 
 
公務員宿舎の改善等について(関連予算の増額、セキュリティ対策など) 
 
8務員宿舎の貸与等について(新規採用者・人事異動者に対する貸与先宿舎の早期提示、特定職員に課している入居制限の撤廃など) 
 
た椋卮鏈卉呂僚票乏諒歸について(十分な宿舎戸数の確保、耐震点検・対策の実施など) 
 
 要請・交渉行動を終えた若手組合員からは、「良い経験ができた」などとセミナーのカリキュラムを高く評価する声が多く上がった。 
「議員要請グループに参加しました。『国会議員本人に会えるのかな』などと思っていましたが、秘書の方にしか会えませんでした。秘書の中にも、積極的に話を聞いてくれる人もいれば、『分かってます。分かってます』とあしらうような態度の人もいて、応対に温度差がありました」(国土交通労組組合員) 
 
「私の地元出身の国会議員の秘書さんに『地元の人間です』と挨拶したところ、凄く応対が柔らかくなり、話もよく聞いてくれました」(全労働省労組組合員) 
 
「人事院交渉に参加しましたが、全司法青年協の一員として普段、裁判所当局の担当者と交渉する際に比べたら、意外にもちゃんと話を聞いてくれたように思いました。少し残念だったのは、初任給など若年層の手当について話しているときに、先方は『官民格差が無い中で、若年層には気を使って手当を厚くしている』と回答していたので、『官民格差はありますよ』などともう少し突っ込んでいけたら良かったかなと思っています」(全司法労組組合員) 
 
「財務省交渉で地元の実情を伝えたところ、『分かりました。検討します』と回答していたので、そのとおり動いていただけたらありがたいなと思っています」(全労働省労組組合員) 
 
「財務省側の反応は、『私たちとしても検討しています』とか『問題意識を持っているところです』という回答でした。こちらの話を興味深く聞いてもらえたかなと思っています。先方から『空いている宿舎には入ってもらった方が、こちらとしてもありがたい』という回答がありましたので、その回答は各単組の交渉で使っていけるのではないかと思いました」(全司法労組組合員) 
 
<セミナー2日目“講義”> 
 
 2日目の講義では、まず始めに1953年創立の関西勤労者教育協会で講師を務めている中田進さんが登壇した。中田さんの講演は「労働組合の必要性とその真価」という堅いテーマながら、中田さんの聞き手を飽きさせない巧みな話術に、多くの若手組合員を惹きつけられた。感想文を提出した若手組合員からは次のような声が寄せられている。 
「やはり中田先生の講義は面白い。団結、知識の必要性を感じるとともに、ブラック的な労働に苦しむ人たちに寄り添っていきたいと思いました」(全司法労組組合員) 
 
「普通に話すと敬遠されがちな内容だと思いますが、中田先生のしゃべりがとても面白く、すんなりと受け入れられました」(全法務労組組合員) 
 
「話の内容は、もちろん考えさせられる内容で参考になりましたが、中田さんの話の仕方についても講義を受けてみたいと思いました」(国土交通労組組合員) 
 
「笑いを交えながらお話をされていて、あっという間に時間が経ちました」(国土交通労組組合員) 
 
 続いて、クラブを貸し切ったイベントを企画するなど従来の労働運動スタイルに収まらない独特の方法で仲間作りを進めている岐阜県労連事務局長の平田竜也さんが登壇し、「運動を広げるなら活動するな」という逆説的なテーマを掲げて講演した。 
 その中で、中田さんは「昔の労働運動は、どちらかと言えばリーダーが引っ張る型のものが多くあった。しかし、それでは今の若手組合員の心はつかめない。若手組合員に任せられることは1つでも2つでも任せてしまい、彼らのやり方に横から文句を言わず、取り敢えずやらせてみる」「昔なら『労働組合が何故そんなことをするのか』と言われて終わったようなことでも、若手組合員が『やりたい』と言えば、どんどん採り入れてやらせる」「若手組合員には『あなたが必要だ』というメッセージをきちんと言葉にして伝える」といった組合活動を進める上での重要なポイントを、自らの経験を交えながら説明した。 
 つまり、講演テーマにある「活動するな」とは、「自らが動くのではなく、任せてみよう」ということで、各単組で青年運動を引っ張っている若手組合員には、とても参考になったようだ。 
「レク活動の充実と学習活動の発起は、個人的にも支部青年部でも問題意識としてあったので、解決のヒントがたくさん得られました」(全司法労組組合員) 
 
「役員を何年もやっていて、イベントの企画もしています。ですが、なかなか人が集まらないという悩みがあります。企画したら、自ら動いて人集めすることも大事なんだと思いました。人間関係を大切に、これからも活動していきたいです」(全司法労組組合員) 
 
「普段聞かない話だったので、興味深かったです」(全労働省労組組合員) 
 
「岐阜県労連がとても良い循環を生み出していることを感じました。そのための手段・入り口としての合コン企画は、短期的なリターンは無いけれども、長期的には有効だと思います。昨今の公務員人気にあやかって、広く募集するような形も面白いかもしれないと思いました」(国土交通労組組合員) 
 
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 国公労連は、来年の定期大会以降、現在休止中の“青年協議会”の活動を再開させる方針のようだ。この点について、鎌田書記長はセミナー開会の際、次のように語っている。 
「国公労連が青年協議会の活動を休止し、“青年運動推進委員会”を母体として青年運動を進めてから既に4年あまり経ちました。青年協議会の活動を休止したのは、その当時、定員削減とか採用抑制によって青年が自ら活動することが困難となった単組が非常に増えたからです。そのため、やむを得ない措置だったと考えています。 
 しかし、この4年間を見ると青年の採用が非常に増えています。さらに将来を見据えると、国家公務員の現時点での年齢構成は、40歳代と50歳代がコブになっていて、あと10年や20年経つと大量退職時代を迎えることになります。つまり、大量の青年が職場に入ってくる時代を迎えることが想定されます。 
 したがって、国公労連としては来年8月の定期大会以降、青年協議会の活動再開を検討したいと思います。セミナーに参加する皆さんには、今回のセミナーや今後の青年運動に携わっていくに当たり、是非、そのことを念頭に置いていただければと思っています」 
 国公労連に集う若手組合員の今後の活躍が楽しみである。(坂本正義) 


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