2016年07月16日12時39分掲載  無料記事
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国際

オリンピック  政治とテロが絡む<平和な祭典>  平田伊都子

 莫大な金が動く世界最大のイベント・オリンピックには、政治屋や金亡者が群がっているだけではなく、テロリストや犯罪者たちも蠢いています。 今回のブラジル大会では欧米がドーピングを言いがかりにして、仇敵ロシアをブラジル・オリンピックから締め出そうとしていたり、競技が始まる前から国家間では場外での争いが始まっています。 一方、超国家過激派組織ISも、出陣の構えをみせています。不気味で空恐ろしい限りです。 
「参加することに意義あり」と、確か、創始者クーベルタンが言いましたよね? オリンピックって、誰でも参加していいんですネ、、政治活動もOKなんですよネ? 
 
(1)1968年メキシコシテイ・オリンピック、ブラック・パワー・サリュート: 
 1968年10月17日夕刻、メキシコ・オリンピックで男子200メートル競走が終了し、アメリカ黒人選手で19秒83の世界記録で優勝したトミー・スミス、オーストラリア人で20秒06の記録で2位のピーター・ノーマン、20秒10で3位につけたアメリカ黒人ジョン・カーロスのメダリスト3人はメダル授与のため表彰台に立った。 
 2人の黒人アメリカ選手は黒人の貧困を象徴するため、シューズを履かず黒いソックスと方手袋を履いてメダルを受け取った。ノーマンも2人に賛同し、3人とも<人権を求めるオリンピック・プロジェクトOPHR>のバッチを着用した。ブランテージIOC会長(当時)は、「非政治的なオリンピック」に反するとして、スミスとカーロスをアメリカ・ナショナルチームから除名し、オリンピック村から追放した。帰国後のスミスは陸上競技を続けると共に黒人の権利獲得への運動を続けた。カーロスもまた、スミスと似た経歴を歩んだ。 
 スミスとカーロスに賛同したオーストラリア人ピーター・ノーマンは地元のオーストラリアで邪魔者にされた。1972年のミュンヘンオリンピックでは予選で3位だったにもかかわらず代表に選ばれなかった。その後も競技生活を続けたがアキレス腱が壊疽し、足を切断する寸前まで症状が悪化した。そのうえ、鬱とアルコール使用障害で苦しみ、2006年10月3日に死去した。葬儀ではスミスとカーロスが棺の付添い人をやった。 
 
(2)1972年ミュンヘン・オリンピック、<黒い九月>の襲撃: 
 1972年9月5日4時40分頃[1]、ミュンヘンオリンピックの選手村へパレスチナ武装組織<黒い九月>のメンバー8名が、AK-47等の自動小銃や手榴弾などで武装し、敷地のフェンスを乗り越えてイスラエル選手団宿舎へ突入した。<黒い九月>の襲撃者たちはユダヤ系アメリカ人選手とレスリングのコーチ、モシェ・ワインバーグの2名を殺害し、9名を人質に取った。午前5時30分、警察官が敷地に放置されていたワインバーグの遺体を発見し、やっと<黒い九月>の人質事件に気づいた。<黒い九月>は人質解放の交換条件に、イスラエルが収監しているパレスチナ人234名(日本赤軍の岡本公三やドイツ国内で収監中のドイツ赤軍幹部も含む)を午前9時までに釈放することを要求した。事件は、午前6時20分からテレビで生中継され、最後まで実況中継された。 
 西ドイツ警察は時間稼ぎのため交渉を行なうことにし、その間に突入の準備を行い、突入直前までいったが、テレビやラジオで実況中継されていたため、テレビを見ていた<黒い九月>に気がつかれて、中止した。その後<黒い九月>は、バスで宿舎から200m離れた草地へ移動し、そこから2機のヘリコプターで空港まで行き、飛行機でエジプトの首都カイロへ脱出することを要求した。当局は合意したふりをして、<黒い九月>と人質を乗せたヘリコプターを飛ばし、午後10時30分、フュルステンフェルトブルック空軍基地に着陸させた。<黒い九月>のリーダーと副リーダーは、安全の確認のために、用意されたルフトハンザドイツ航空のボーイング727へ入ったが、おとりの機内は空っぽで、騙されたことを知った二人はヘリコプターへ走って逃げた。その時、滑走路上の狙撃手の1人が発砲し、双方の銃撃戦になった。<黒い九月>はヘリコプターに立てこもったが、午後11時30分頃、警察の応援部隊が到着した。ゲリラの1人が手投げ弾で自爆し、人質が乗ったヘリコプターが爆発、炎上。人質たちは、両手を後ろ手に縛られ、目隠しのまま数珠つなぎにされていたため逃げることができず、人質9名全員と警察官1名が死亡し、犯人側は8名のうちリーダーを含む5名が死亡し、残りの3名は逃走を図るが、その後逮捕された。この3名は同年10月29日のルフトハンザ航空615便ハイジャック事件(英語版)の交換条件で解放された。 
 9月6日午前10時からオリンピック・スタジアムでイスラエル選手団の追悼式が行われた後、同日午後4時50分、オリンピックは34時間ぶりに再開された。 
 
(3)2016年リオにアメリカはビクビク: 
 2016年7月11日、ロイター通信が、「オサマ・ビン・ラディンの息子が投稿した音声メッセージによると、<父を暗殺したアメリカに復讐をする>と、アメリカを脅迫している」と、報道した。イラクとアフガニスタンに米軍を送り続けるアメリカが、過激派組織ISの標的になっているのは間違いない。 
 それに加えてアメリカ国内では、黒人と白人の対立でテロの応酬が続発している。米南部ルイジアナ州で5日、米中西部ミネソタ州ファルコンハイツで6日、相次いで警官による黒人男性の射殺事件が起きた。抗議の声は全米に広がり、テキサス州ダラスでも市内中心部で抗議デモが発生した。日本時間8日午前11時、容疑者マイカ・ジョンソン(25)が警備の警官隊に向けて狙撃を繰り返し、警官5人が死亡した。警官7人と一般市民2人も重傷を負った。警察は襲撃犯を駐車場ビルに追いつめた。「白人、特に白人警官を殺したかった」と叫ぶ犯人と銃撃戦になり、警察はロボットを使った爆発物で犯人を殺害した。ジョンソン容疑者は新ブラックパンサー党に心酔していたようだ。新ブラックパンサー党は1989年にダラスで設立され、<黒人国家>の樹立を掲げて白人優越主義の秘密結社<KKKクー・クラックス・クラン>などと対立している。2015年末で確認された憎悪団体の数は892あり、このうち、新ブラックパンサー党のような黒人の憎悪団体は180で、KKKなどの白人団体は190だそうだ。 
 7月11日には米中西部ミシガン州セントジョゼフにあるベリエン郡裁判所内で銃撃があり、職員2人が撃たれ、死亡した。容疑者は射殺された。 
 これまで国外の自国民に退避勧告を繰り返してきたのは、アメリカの専売特許だったが、いまや、アメリカ以外の国がアメリカ在住の自国民に退避を促し始めた。7月7日には、バハレーンやアラブ首長国などの中東諸国やバハマなどの中南米諸国が、それぞれの駐米大使館を通して警戒警報を発した。 
 
(4)2016年リオにフランスはドキドキ; 
 フランス政府は13日、首都アンカラの大使館とイスタンブールの総領事館を当面の間休館にするとともに、14日のフランスの革命記念日にはアンカラとイスタンブール、それにイズミールで予定していた催しも中止した。そして、非常事態解除をした途端、本国ニースで行われた14日夜の祝花火大会にトラックが突っ込み、84人以上を殺し202人以上に重傷を負わせた。 
 7月13日のロイターがジェラール・ボンのリポートを紹介している。それによると、DRM(軍情報指導部)トップのクリストフ・ゴマ―将軍が、「夏のリオデジャネイロ 
・オリンピックでフランス代表団への攻撃を、ブラジルのイスラム戦闘員が計画している」 
と、暴露したことを伝えている。 
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 ブラジル連邦政府のスポーツ大臣レオナルド・ピッチャーニは、リオ・オリンピック警備予算に、約2兆4千万円を追加しました。 7月24日からオリンピック終了日まで,8万人以上の警官と兵士にリオの街頭をパトロールさせると発表しました。 が、その警官の給料がここのところ支払われていないとか? あの、警官労働組合が掲げた横断幕<ようこそ地獄へ>を思いだしますね、、 ブラジル過激派組織ISも、ジカ熱の蚊も、お待ちしているそうです。 
 冬とはいえ、7月15日のブラジル最低温度は19度、最高は27度。 蚊は18度以上になると、吸血活動をしますョ。 
 
 
文;平田伊都子 ジャーナリスト、 イラスト:川名生十 カメラマン 


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