2016年08月04日09時20分掲載  無料記事
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反戦・平和

カナダ・バンクーバーで「21世紀の核問題」主題に原爆展2016 

  2006年夏に、ここバンクーバーで世界平和会議が催された。それには、世界各国から7,000─8,000人の平和運動家が集まった。その1年前にできたバンクーバー9条の会(VSA9)も、広島・長崎からの被爆者の方々なども参加し、原爆展や、「父と暮らせば」の演劇なども催した。その際に用いられた原爆に関するパネルが、VSA9に寄贈された。そこで、VSA9は、日系人の祭りが、8月第1週前後の週末に行われるのに呼応して原爆展を開催することになり、その後毎年原爆展を開いてきた。(落合栄一郎) 
 
日本では、原爆の被害の甚大さに焦点が当てられるが、当地では、日本がそのような被害ばかりを強調して、自分達の加害の面に目をつぶりすぎていると批判されることもしばしばである。それは、バンクーバーという多民族から成る社会では、当然である。そこにこの地での原爆展の難しさがある。一度は、日本軍の加害の1例として「慰安婦問題」を原爆展のなかに加えることも試みた(2008 年)。その際は、韓国系、特に中国系の報道機関が、かなり詳しく取り上げて報道した。 
 
しかし、通常は、原爆の被害というか、その破壊力の強大さ、恐ろしさを多くの人に知ってもらい、その廃棄が、人類の将来にとって非常に重要なことであるという認識を持ってほしいという意図でやってきた。2011年に、福島原発の事故が起こり、原爆と原発という「核」に共通する問題があることを指摘する講演なども行うようになった。 
 
今年は、米大統領オバマが原爆を人類の上に落とした国の代表として、始めて広島を訪れた。米国代表として、原爆の非を認めて謝罪すべきであったとか、様々な批判も囁かれたが、一点「原爆は人類全体の問題」であることを指摘したことは、重要である。原爆を落とされた日本の被害、被爆者(韓国系の人や、捕虜アメリカ軍人も含む)の苦悩への同情も重要であるが、世界中で大量に作られてしまった核兵器は、事実、人類全体にとってのもっとも危険な問題であることは、世界中の人々が認識しなければならない問題なのである。 
 
そこで、今年の主題は「21世紀の核問題」とした。この場合、「核」は、兵器用のものも、平和利用とされる原発も、ともに地球上では処理できない「放射性物質」を多量につくりだしてしまう。そして、放射性物質の発する放射線は、人体を構成する化合物(水、DNA、タンパク質などなど)を破壊するため、生き物とは両立できないのである。講演では、こうしたことを多くの人が理解してくれるように努力した。おそらく、この認識に基づいて、「核を使用するモノ─兵器と発電」を地球上から速やかに廃棄するために人類の多数が声をあげなくては、核によって利益を得ている核産業に対抗することはできない。そして、このこと(核廃絶)を21世紀中に実現できないと、「核とそれがもたらす放射線」が、様々な仕方で、人類を、生き物を、そして地球環境を破壊しかねない。というのが、今回の講演の骨子であった。今年は、来場者が非常に多く、終日満員であった。 
 
この日系人の祭りが、主として8月第1週前後に行なわれるので、この祭りの開会式に、広島・長崎の犠牲者への追悼の意と核兵器廃絶の意を込めた「広島宣言」をバンクーバー市長に読み上げてもらうこともやっている。バンクーバー市民の平和運動を支持する市の委員会が始めたことのようであるが、後には、核兵器廃絶を願う退役軍人の会が主体となって進め、ここ2年ほどは、VSA9が扱っている。 
 
なお、バンクーバーの中心にある平和公園には、1986年から、広島・長崎を偲ぶ永遠の火が灯され、また、2009 年には、被爆者で、こちらで広く反原爆運動に関わった方(Kinuko Laskey)の半身像も建てられた。 


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