2016年09月03日01時54分掲載  無料記事
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コラム

インドネシアのドッキリテレビ 

  何年か前、インドネシアを旅しました。島と島を結ぶインドネシアの国内航空機に乗りこんで座席につくや、前の座席の後ろについている小さなスクリーンで一斉にインドネシアの国内番組らしい映像が音声付きで映し出されるではありませんか。それは日本で1970年代に流行した「どっきりカメラ」のインドネシア版であるとわかるまでに何秒も要しませんでした。スタッフが人をだまして、その狼狽ぶりを隠し撮りして笑う、というスタイルの番組です。 
 
  確かに子供の頃、最初は面白かった番組でしたが、だんだん悪趣味だし、ワンパターン化して飽きてくるものです。こういう番組はもしかすると、高度経済成長時代に流行するのかもしれません。インドネシアもその頃、発展が加速しつつありました。あちこちでビルが建てられていて。だから、みんなよく働いて、よく食べ、よく消費して笑いのめしたいのではないでしょうか。インドネシア版でもスタジオのわざとらしい「笑い声」が吹き込まれていて、悪趣味で興ざめでした。どっきりさせる仕掛けは日本とほとんど変わりませんし、おそらくはこのシリーズの元祖であるアメリカと同様だったと思います。これが強制的に機内に流されて、消すことができなかったのです。 
 
  でも、1つだけ本当にどきっとして印象に残ったものがありました。それは道路わきの茂みの中から、何かがちらとのぞくのです。ちら、ちらと一瞬、少しだけ見えるのは人間か猿かわからない毛深い生き物です。雪男とか、昔の類人猿みたいな。そのリアリティがインドネシアという地にはありました。類人猿を仮装した人が道を通りかかった人をどっきりさせる仕掛けだったのだと思いますが、通行人のリアクションはまったく記憶に残らず、ただただ密林の中からちらっと顔をのぞかせる未知数の生き物だけが記憶に残っています。これは笑いというよりも、むしろ恐怖でしょう。 


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