2016年09月16日14時38分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201609161438415

国際

あ、騙された・・・  アルジェリアのパロディ新聞エル・マンシャール(EL MANCHAR )

インターネット空間には真偽不明かつ玉石混交の情報が日々飛び交っています。昨日、筆者も思わず騙されそうになりました。その情報とはTVを中心に露出度が高い、フランスの著名な右翼論客、エリック・ゼムール氏が自殺を試みようとしたという記事です。 
 
  記事によると、ゼムール氏が自殺を試みようとした背景には意外な事実をゼムール氏が知ってしまったからで、それは排外主義的言動を行ってきたエリック・ゼムール氏自身の先祖がアルジェリア人だった、というもの。記事には両親が、それを打ち明けると息子の精神に影響すると思い、隠してきたと取材文体で書かれています。そしてこの情報は病院関係者から得た、と書かれています。 
 
  こういう文章がゼムール氏の写真入りでインターネット空間に散乱しており、それらはソーシャルメディアでは英国のガーディアンとか、BBCなどと同様のメディアサイトに見えてしまうのです。 
 
  そこで筆者は「こんな記事を見たけど、本当ですか?」とパリ在住のアラブ系のジャーナリストに問い合わせてみました。すると、「これは嘘ですよ。この新聞はパロディ専門メディアです」と教えてくれました。それがこのサイトです。 
https://el-manchar.com/2016/09/14/eric-zemmour-tentative-de-suicide-decouvrant-quil-dorigine-algerienne/ 
 パロディ専門の媒体、エル・マンシャール(EL MANCHAR)はアルジェリアで作られており、ウィキペディアによれば記者・編集者は全員アルジェリア人で、その中にはフランスにいる記者もいると言います。エリック・ゼムール氏は2年前に「フランスの自殺」という本を書いており、今回のパロディ記事はそれにひっかけたもののようです。 
 
   パロディ記事ではゼムール氏が自分の出自について懐疑を深め、ウィキペディアで自分のことを調べてみると、そこには先祖がアルジェリア人と書かれていた、という風になっています。筆者も実際、ウィキペディアでゼムール氏について調べてみると、ゼムール氏の父親はアルジェリアのユダヤ人であり、アルジェリア独立戦争の時にパリに移住した、と書かれています。 
 
  ちなみにフランスでは移民であれ、古来からの住民であれ、宗教や出身地の区分で行政が統計を取っていません。ですから、現在フランスにイスラム系住民が何人いるか、ユダヤ系住民が何人いるか、あるいはアルジェリア系移民が何人いるか、というような正確な統計は行政組織にはありません。現在メディアに出ているイスラム系住民が何万人、というような数字は推定でしかないのです。 
 
 
 
■L'EXPRESS誌の質疑応答コーナーでゼムール氏は自分は移民ではないし、両親はフランス人である、と述べています。ただ、先祖は(北アフリカの先住民である)ベルベル人であり、ゼムールという苗字はフランス語に訳せば「オリビエ」に相当する、と語っています。 
http://www.lexpress.fr/culture/livre/eric-zemmour-je-ne-demande-pas-la-francisation-des-noms_854520.html 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。