2016年09月28日03時55分掲載  無料記事
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コラム

ヒラリー・クリントン 対 ドナルド・トランプ 第一回目の討論会(9月26日)  ヒラリーの余裕 

  アメリカ共和党と民主党の大統領候補の3回のTV討論の1回目が9月26日に行われた。ヒラリー・クリントン候補(民主党) 対 ドナルド・トランプ候補(共和党)である。討論は90分で、6つのトピックをそれぞれ15分間論じていく。アメリカの税制(企業減税か、富裕層への課税か)、自由貿易協定の是非、核兵器などの対外軍事政策、警察と銃器の問題など、予備選でもさんざん論じられてきたテーマでもある。以下がyoutubeにUPされた討論会である。 
https://www.youtube.com/watch?v=8j3KXg0b7UY 
  討論を見た人の印象だが、いくつかの外国紙の報道ではクリントン氏の方が優勢だった、と観る人が多かったようだ。トランプ氏が特に失敗した、という印象はなく、これまでの共和党予備選と同様にマイペースで話をしていくのだが、今回、1つの変化が見られた。それは討論相手のヒラリー・クリントン氏のスマイルである。ヒラリーは何度も微笑みを浮かべ、そしてトランプ氏を「ドナルド」と親しげに呼んで、トランプ氏の攻撃に対して余裕をもって答えているのが印象的だった。ヒラリー・クリントン氏のこの余裕に対して、トランプ氏は何度もヒラリー・クリントン氏の話の途中に口をはさんで、逆に余裕のなさを感じさせた。 
 
  これは何を意味しているのだろう。予備選でヒラリー・クリントン氏はバーニー・サンダース氏という思わぬ伏兵に苦しめられ、一時は予備選で敗退の可能性もあった。その過程で、金融業界などからの巨額の献金を受けているというサンダース氏による厳しい批判を受け、当初のリードがどんどん失われていった。 
 
  そうした厳しい予備選を経てきたヒラリー・クリントン氏に比べて、ドナルド・トランプ氏は当初から風が吹き、共和党予備選のトップを突っ走ってきた。共和党予備選では当初の第一候補だったジェブ・ブッシュ氏が早々と敗退したが、多数の共和党候補同士の中でトランプ氏の毒舌は多数の中で目立って、乱戦から頭1つ抜けるのには効果的だった。しかし、本選になって、ヒラリー・クリントン候補との舌戦になったとき、共和党予備選におけるトランプ氏の戦い方が若干、空転しているような印象がある。共和党のテッド・クルーズ氏や、マルコ・ルビオ氏などとの激しい戦いとは勝手が違っているのだ。ヒラリー・クリントン氏は彼らに比べると、経験的にも知的にも数十倍、はるかに手ごわい論争相手だとわかる。 
 
  それを象徴しているのがヒラリー・クリントン氏のスマイルのように感じられた。トランプ氏のペースにはまらず、余裕をもって冷静に答える、ということであろう。その結果、トランプ氏が始終、ビジネスマンに見えた一方、クリントン氏は政治家に見えた。これはアメリカの停滞した政治・経済を「経営のプロ」が変える、とばかりに乗り込んできた型破りなトランプ氏の売りを逆に奪ってしまったようにも感じられる。果たして、10月9日に予定されている2回目の討論に、トランプ氏はどう臨むのだろうか。 
 
 
■あの大富豪兄弟が自由貿易推進のため新たな草の根運動を展開  コーク兄弟VSトランプ候補 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201609081654304 
 
■二大政党ではないため討論から排除されている、緑の党のジル・スタイン大統領候補の討論を編集で組み込んだ拡大討論会を「デモクラシー・ナウ!」で実現 
第一部と第二部で構成 
http://www.democracynow.org/2016/9/27/expanding_the_debate_jill_stein_debates 
  ジル・スタイン党首はバーニー・サンダース候補が民主党予備選で敗北した時、基本路線が同じであるから緑の党から立候補する気がないか、と提案していたが、最終的にサンダース氏がそれを受け入れなかったため、スタイン氏が自ら立候補する形となった。 
 
■ドナルド・トランプ候補の反撃  ヒラリー・クリントン候補の弱点を攻める  2回目のTV討論会 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201610101355551 
 
 
■「ザ・フェデラリスト」(ハミルトン、ジェイ、マディソン)  アメリカ政治思想上の第一の古典 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201211252338410 
 
■ハンナ・アレント著 「革命について」 〜アメリカ革命を考える〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201401201800171 
 
■「現代政治学の基礎知識」(有斐閣) 〜政治の再構築に向けて〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201312020312161 
 
■モンテスキュー著「法の精神」 〜「権力分立」は日本でなぜ実現できないか〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201312260209124 


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