2016年10月08日21時23分掲載  無料記事
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数江譲治著 「フランス語のABC」(白水社) 〜初心者にわかりやすい定番の入門書 長年フランス語を勉強してきた人にとっても基本の復習に最適な一冊〜 

  白水社と言えばフランス語の学習書やフランス文学書で知られている出版社ですが、それだけに優れた定番の文法の入門書があります。数江譲治著 「フランス語のABC」(白水社)です。筆者の持っているこの本の説明によると、1981年に初版が出て、のちにCDの吹き込みをつけたバージョン(CD付・新装版)が2002年に出ています。今でも書店の語学書コーナーに並んでいますから、1981年からなんと35年も販売され続けているロングセラーなのです。売れ続ける秘密は次の2点だと思います。 
 
  ・文字が大きい 
 
  ・初心者がわかるように枝葉は切り捨てて幹に集中した 
 
  この2つは中身と形式のように見えますが、実は通底しています。読者が混乱を招く特殊なケースは忘れて、基本(幹)に集約して説明したことです。細々したことを描き込まないということは大きな文字でシンプルに説明を記載できる、ということでもあります。そして、そのことは10代から20代初めの大学生だけでなく、中年を過ぎて、あるいは老年になってからでもフランス語の勉強をしよう、と思い立った人には使い勝手のよいものです。さらにまた、よいビギナー向けの入門書は学習を始めてから年数を経た人にとっても、基礎をもう一度チェックするのに有効です。そうした場合は優しくて一通り必要なことが網羅してある入門書がよいのです。 
 
  著者の数江譲治氏は1918年生まれ。早大出身で早大教授だった人である、と書かれています。「何よりも、はじめてフランス語を習う人の身になって書く、これがこの入門書をつくるにあたって、もっとも気をつけた点です」と「はしがき」で述べています。 
 
  これから先の社会は外国語の学習には年齢はさして重要ではない、という考え方が常識になっていくと思います。もちろん、若いときに学ぶことは時間を作りやすい点で有利ですし、その後に活用できる時間が膨大に残されています。年を取ればそれだけ果実を得る時間が少なくなることを意味します。しかし、完璧に使いこなせなくても、コミュニケーションに使ったり、本や新聞などを読んだりするだけなら、社会に出た後でもラジオ講座や文法書などで学習可能です。そうした時に字が大きい、わかりやすい、ということは大きな利点です。 
 
  基本をしっかり学んだあとは、できるだけ自分で辞書を活用して、実際に作文してフランス人やフランス語圏の人々と交流してみながら、経験値をあげていくことがよいのではないでしょうか。そうした場合にやはり、文字が大きな仏和辞典や和仏辞典、そして仏仏辞典が欲しい、ということになるのです。いっぱい知識が詰め込まれた参考書を読んで、知識を山ほど頭に詰め込むと、むしろ、頭が重くなって、それを使って実際にコミュニケーションに使う方向に向かって行かないかもしれません。それよりも最小限の基本事項を文法入門書で得たら、あとはできる限りそれを実践で使っていく方がよいのではないか、と思うのです。実践の中で単語やより詳細な文法知識を学んでいけると思うのです。 
 
 
■クリス・ロンズデール氏のTED講演 「外国語を半年で習得する方法」  TEDtalksから 
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■吉田正俊著 「理解しやすい英文法」(文英堂)  大学受験だけでなく、英語をもう一度おさらいしたい時に便利な参考書 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201609110149420 
 
■語学に再挑戦 3    村上良太 
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