2016年10月10日13時55分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201610101355551

国際

ドナルド・トランプ候補の反撃  ヒラリー・クリントン候補の弱点を攻める  2回目のTV討論会

  昨日、米日時の9日、アメリカ大統領選の2回目のテレビ討論会が行われた。今回も90分で、場所はアメリカ中西部にあるミズーリ州・セントルイスにあるワシントン大学だった。今回の討論では序盤、トランプ候補は過去の女性蔑視発言や差別的発言一般がヒラリー・クリントン候補から攻められ、一時は劣勢に立たされた。特に2回目の討論直前に昔のトランプ氏の猥談が録音されたテープが公開され、ダメージになりそうだった。しかし、トランプ候補は中盤からじわじわ、挽回していった。トランプ候補はクリントン候補の弱点を攻めはじめ、次第にその言葉が耳に残るようになった印象を筆者は持った。 
 
  その鍵はヒラリー・クリントン候補の発言は素晴らしいが、実際はどうなのか?とトランプ候補が問いかけたことにある。まず、ヒラリー・クリントン候補はモラルの点で自分(トランプ候補)を責めるが、夫のビル・クリントン大統領の女性問題はどうなのか。ビル・クリントン氏は史上最も女性を傷つけたアメリカの政治家だが、妻のヒラリー・クリントン氏自身も傷つけられたその女性をひどく攻撃したではないか、と語った。さらに、ヒラリー・クリントン氏が弁護士時代の40年前に、12歳の女性をレイプした男を弁護し、レイプされたその幼い女性を中傷したことを暴露した。その女性を会場に招いたのだった。これは強烈な反撃だった。クリントン候補には1回目の討論で見られたスマイルはなかった。 
 
  外交ではリビアやイラク、シリアなど、悲惨な状態になった責任は当時国務長官だったヒラリー・クリントン氏にあるという追及。結局これらがイスラム国を生んだのだと追及した。ここではヒラリー・クリントン氏が上院議員時代にブッシュ政権が始めたイラク戦争に賛成していたことも前提になっている。 
 
  またヒラリー・クリントン候補は人種の平等に力を入れているというが、実際にアメリカの町を見れば(民主党政権の8年の間に)黒人やヒスパニック系住民の多くは貧困の中にある。貧困者はともに半数近くに上る。クリントン候補が言っていることは立派だが、実態はない、という風に攻め立てた。これらのトランプ候補の発言に関して聴衆は共和党支持、民主党支持に関せず、リアリティを感じないわけにはいかなかったのではなかろうか。 
 
  トランプ氏は税金逃れをしているという批判に対しては、ヒラリー・クリントン候補は自分と同様に税金逃れをしている大富豪のウォーレン・バフェット氏やジョージ・ソロス氏らから献金を受けているのではないのか、その金で私よりはるかに多くの宣伝を行っている、とかわした。 
 
さらにまた、ビル・クリントン大統領が締結した北米自由貿易協定(NAFTA)は米国にとってだけでなく、世界にとって史上最悪の貿易協定であり、これによって米国民の仕事が失われた、と責めた。クリントン候補は格差を是正すると言っているが、しかし、その美しい言葉の背後の現実を直視せよ、というのである。ヒラリー・クリントン氏は口先ではいいことを言うが、実際には行動で示していない、と繰り返し攻撃した。 
 
  今回の討論でトランプ候補はクリントン候補にアメリカの大衆が抱いていた疑問を、もう一度ここで思い起こさせることに成功したのだと思う。今、アメリカのメインストリームのメディアはトランプ候補へのバッシングを行っている。さらにオバマ政権のもとで中流層が復活し、中流層の給与が増えている、という報道をニューヨークタイムズなどは積極的に行っている。これらはクリントン候補および民主党への援護射撃と受け取ることができるだろう。また、共和党員ですらトランプ候補に愛想をつかしてきた、という報道もあった。しかし、そうした四面楚歌の中で、もう一度、みんな目を覚まして、現実を観ろ、と迫ったトランプ候補は前回の討論の劣勢を挽回したように感じられた。 
 
   3回目の最終TV討論は10月19日に行われる予定。いよいよ投票も間近となり、最後の大詰めを迎えることになる。欲を言えば〜日本から見れば〜東アジアの安全保障問題、沖縄の基地問題や北朝鮮の核問題、軍事的な緊張が高まる南シナ海への対応を巡ってより踏み込んだ議論も聞きたいものだ。 
 
 
村上良太 
 
 
 
■TV討論会 ワシントン大学にて 
https://www.youtube.com/watch?v=m6VshGZ1_lQ 
 
■デイリー・メイル紙 
’EXCLUSIVE: Child rape victim comes forward for the first time in 40 years to call Hillary Clinton a 'liar' who defended her rapist by smearing her, blocking evidence and callously laughing that she knew he was guilty’ 
http://www.dailymail.co.uk/news/article-3729466/Child-rape-victim-comes-forward-time-40-years-call-Hillary-Clinton-liar-defended-rapist-smearing-blocking-evidence-callously-laughing-knew-guilty.html 
 
 
■ヒラリー・クリントン 対 ドナルド・トランプ 第一回目の討論会(9月26日)  ヒラリーの余裕 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201609280355103 
 
 
■「独立宣言と米憲法」(The Declaration of Independence and The Constitution of the United States) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201401102038235 
 
■「ザ・フェデラリスト」(ハミルトン、ジェイ、マディソン)  アメリカ政治思想上の第一の古典 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201211252338410 
 
■ハンナ・アレント著 「革命について」 〜アメリカ革命を考える〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201401201800171 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。