2016年10月14日05時37分掲載  無料記事
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アフリカ

【西サハラ最新情報】  国連脱植民地化決議と国連アフリカ週間  平田伊都子

 ウーター・ザアイマン南アフリカ国連大使は2016年10月7日の国連脱植民地化第4委員会で、「南アフリカは、アフリカ大陸における<ラストコロニー>の存在を容認できない。一日も早く<最後の植民地・西サハラ>の民族自決権を目指す交渉を始めるべきだ。ロス国連交渉仲介者は5月、8月、10月と3回にわたって当該地域の視察を申し入れてきたが、モロッコの反対で、実現していない。2017年3月には新国連事務総長の視察が予定されているが、懸念される」と、モロッコの度重なる国連作業妨害を非難しました。 
 
(1) 西サハラ砂漠で地雷爆発: 
 2016年10月5日、西サハラ遊牧民の子供3人が砂漠に埋められていた地雷を踏んで、スミヤ・モハンマド・ナジェムが即死し、二人が重傷を負った。場所は西サハラ難民政府が仕切っている西サハラ解放区のムヘリズ地区にあるブフザマで、不毛の砂漠に定住民はいない。モロッコは1981年から1987年にかけて、西サハラを北から南へ断ち切る全長2,500kmの<砂の壁>地雷防御壁を作り、約600万個の地雷を西サハラ解放区側に埋めた。地雷の犠牲者の大半は、西サハラ遊牧民や彼らの家族である動物たちだ。地雷敷設犯人のモロッコは、日本も含む120以上の国が加盟している<対人地雷全面禁止条約>に入っていない。地雷はほったらかしだし、ましてや地雷犠牲者の面倒などみない。事件は<砂の壁>北部で起こったが、<砂の壁>南部の国連緩衝地帯アル・ゲルグエラ地域にモロッコ軍は軍事侵入し、国連安保理が制裁措置を取らないことをいいことに、居座ったままだ。 
 
(2) 駐東ティモール西サハラ大使: 
 2016年10月7日、西サハラ難民政府RASDの駐東ティモール大使モハメド・スラマ・バディは、FRETILIN(東ティモール独立革命戦線)第4回会合に招待された。会議は首都ディリで7日から開催され、代表を選出し党の綱領を検討し、来年に迫った大統領選挙の準備をする。東ティモールは正式に西サハラ難民政府RASDを国家承認している。 
 インドネシア占領に苦しんでいた東ティモール住民は、1999年5月、インドネシア、ポルトガルと国連などと、東ティモールの住民投票実施の枠組みに関する合意文書に調印した。6月、UNAMET(国際連合東ティモール・ミッション)が派遣された。8月30日、独立に関する住民投票が行われた(投票率98.6%)。が、インドネシア治安当局は、東ティモールに非常事態宣言を発令し国軍5,500人を増兵しインドネシア併合維持派の武装勢力(民兵)を使って破壊と虐殺を行った。しかし、2002年5月20日、東ティモール住民は独立式典にこぎつけた。独立後、国連はUNMISET(国際連合東ティモール支援団 ) を設立し、独立後の国造り支援を行った。この中で、日本の自衛隊も国連平和維持活動 (PKO) として派遣され、国連と協力して活動を行った。 
 
(3)国連総会で国連第4委員会の脱植民地化草案が決議承認: 
 2016年10月10日に国連総会が、10月3日から一週間にわたって国連第4委員会で討議した脱植民地化草案を、可決した。国連は、「記録された投票結果、賛成130、反対5(コートジボワール、イスラエル、モロッコ、イギリス、アメリカ)、棄権2(コロンビア、フランス)。国連総会は国連第4委員会の脱植民地化草案を承認した。決議を尊重して、国連総会は、未確定地域における実務作業を安保理の指示に従って実施していく。また草案は、<国連派遣団が必要に応じて当該地を視察したり、当該地住民の経済的な便宜を図ること>と、活発な国連活動を促がしている」と、報告した。 
 SPS(サハラ・プレス・サービス)西サハラ難民通信は10月10日、国連第4委員会の草案を国連総会が採決したことを、そのまま伝えた。さらに、「決議は、西サハラ住民の民族自決権を引き続き支持した。国連安保理は国連主導の下で、西サハラ住民の民族自決権の国連西サハラ住民投票を目指す、両当事者が納得のいく政治的解決を強く要請する。そして、2012年来中断したままの両当事者交渉を、クリストファー・ロス国連事務総長個人特使の仲介で再開させることを命じている」と、決議の詳細も明らかにした。西サハラ難民政府は国連に対して、「<アフリカ最後の植民地・ラストコロニーの脱植民地化>を明文化した以上、一日も早く国連西サハラ住民投票の日程を決めるように」と、迫った。 
 
(4) モロッコが国連総会決議に大反撥: 
 CORCAS(モロッコ王立サハラ問題評議会)は、一応、国連総会の決議内容を「国連総会は投票なしで、国連第4委員会のサハラ問題に関する政治解決を支持し、国連事務総長と彼の個人特使への協力を関係諸国に促した」と、短く伝えた。国連総会は採決の結果をはっきり宣言しているにもかかわらず、モロッコは、<投票なし>と嘘をつき、<西サハラ> を<サハラ>と呼び、モロッコが嫌悪している総長と彼の個人特使に対しては、名前も敬称もわざと省いている。モロッコが脱植民地化に関する国連総会決議に、大反発しているのは明白だ。そして、「国連安保理は2007年以来、モロッコが提案しているサハラの地方自治案を、名案だと評価している」と、付け加えた。 
 モロッコ国連大使オマル・ヒラールは、「モロッコ・サハラ脱植民地化問題を検討した結果、国連総会は決議を出した。が、この決議は、国連憲章と国連安保理指令に違反している」と、強く非難した。 
 
  2016年10月10日から14日まで、<アフリカ週間>が国連で催されました。 実際にどんなイベントがあったのか?いまいち盛り上がっていないようです。 国連第71回総会が始まった9月から、国連では毎日、なんかの祭りごとをやってます。 イベントに金をかけるより、もっと実質的な仕事をして欲しいです。 
 せっかく国連総会で西サハラを脱植民地化の対象地域に再承認したのだから、さっさと、国連西サハラ住民投票に手を付けてください。 25年前に国連西サハラ住民投票を約束したのは、一体、どなたですか? 
 
 
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之     2016年10月14日 
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子 


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