2016年10月30日23時46分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201610302346230

社会

あやうく早稲田大学学園祭にヘイトスピーチの桜井誠が登壇 彼のレイシズムと差別行為は不問

 早稲田大学の学園祭にヘイトスピーチ(憎悪扇動行為)で名を馳せている桜井誠元在特会会長を呼んで話をさせる企画が飛び出し、その賛否をめぐってネット上で大乱戦になった。結局、大量の批判を浴びた主催の早稲田大学人物研究会が出演要請を取り下げることになって一件落着したが、主催者側の取り下げ理由が「来場者の安全を確保できないため」というもので、レイシストの差別主義者に学園祭で発言の場を与えるという判断についてはどうであったのかが全く触れられていないということで、問題の根の深さを改めて浮き彫りにした。(大野和興) 
 
早大人物研究会の自己紹介。 
「会いたい人に会いに行こう」をモットーに政治・文化・芸能などなどジャンルを問わずあらゆる分野で活躍する著名人にインタビュー・講演会依頼などをおこなっています。創立51年目の歴史ある早稲田大学公認サークル」 
 
その人物研がこの問題でツイッターで最後に出したメッセージは以下のようなものだった。 
 
早大人物研究会 @jinken_2012 10月29日 
【早稲田祭に関してお知らせ】 弊会主催の講演会についてですが、大学当局・学園祭運営スタッフと協議した結果、桜井誠氏の登壇は見送らせていただきます。理由としましては来場者の安全性を確保できないと判断したためです。 このような事態に至る認識の甘さがありましたことをお詫び申し上げます。 
 
続いて以下のようにツイートした。 
 
企画の実行に関して多くのご意見が寄せられていますが、予想される事故や衝突などの危険性を鑑みた結果、私どもとしては来場者の皆様の安全性を第一に考えた上でこのような判断に至りました。 桜井氏を除いた4名で同テーマの企画は実施いたします。 皆様、ご理解のほどよろしくお願いいたします。 
 
その企画というのは以下のようなものと説明されている。 
「今年の東京都知事選挙の候補者の方々がなぜ選挙に出るのか?」というテーマを主眼に、候補者5名の方に"立候補"についてパネルトークをしていただく」 
 
この5人の中に、選挙の候補者になればヘイトスピートを公然とすることができるという目的で立候補し、差別発言をまき散らしていた桜井誠が選ばれたのだ。当然批判が殺到した。彼は「殺せ」とか「ここを火の海にするぞ」といった憎悪スピートを在日コリアンに対し、ところかまわずやってきた人物だからだ。例えば次のような問いが人物研に寄せられた。 
 
「これまでの桜井誠はじめ在特会によるヘイトスピーチについてどうお考えですか? 朝鮮大学前などで何をやっていたか、確認していますか? まず彼らがこれまでに何をやってきたのか、きちんと確認してください。確認したうえで再度見解を明らかにしてください。それが主催者としての最低限の責任です。」 
 
これに対して人物研からは次のような発言があった。 
 
「ご意見を多くいただいてる桜井さんの登壇に関してもこの講演の場において差別的発言などは一切行わないとお約束いただいた上でご出演いただいてます。 また、特定の政党や個人を支持するものではありません」 
 
この言い訳に対しても批判が殺到した。 
 
「こいつは自分が執拗に行ってるヘイトスピーチを、差別だとは認めてないんだよ。だから、当日もヘイトスピーチ連発することになるよ。面白半分で差別をネタにするなよ」 
 
「大まかにいえば、桜井誠の政治的主張自体が差別に基づいているのですから、差別的発言をしないで自らの立候補理由を説明することは無理でしょう。今からでも考え直してください」 
 
「 OBです。これまで際どい人物をも登壇させてきた経緯を知っていますが、桜井氏はそういう「際どさ」とは違うことがわかりませんか。そして約束したとおっしゃいましたが、壇上で差別的な発言をした時にどういう対応を取るつもりですか」 
 
今回の早稲田大学でのことは、こうした経過を経て主催者が引っ込む形で決着したが、主催者自身、差別を振りまくヘイトスピーチに対する見解は最後まで明らかにしなかった。だから、桜井招致の取り下げも、「混乱」を恐れてのこと。主催者自身に差別やレイシズムに対する認識がまるでなかったことはうかがわれる。こうして、差別とレイシズムが大学を含む社会の隅々に浸透していく。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。