2016年11月04日12時22分掲載  無料記事
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国際

モロッコに春到来? 魚売りをゴミ処理ダンプで惨殺! 平田伊都子

 没収された売り物の魚を取り戻そうとした魚売りを、モロッコ警官の命令でごみ処理ダンプの運転手はボタンを押し、魚売りは魚もろとも圧縮されてしまいました。 ギャング映画の一コマではありません。 モロッコ北部のリーフ地方で起きたおぞましい事件です。 
 この事件が引き金となり、モロッコ王国が禁止している一般市民の抗議デモが全土に広がってきました。 2010年、チュニジア中部のシデイ・ブジドで、没収された野菜と秤を取り戻し損ねた果物売りが焼身自殺をしました。 この事件がきっかけとなりチュニジア全土にデモが広がり、それを利用した欧米諸国が<アラブの春>を企みました。 そして、アラブを廃墟にしてしまいました。 さて、<モロッコの春>は? 
 
(1) 魚と一緒にゴミ処理ダンプに圧縮された魚売り: 
 2016年10月28日、モロッコ北部リーフ地方にある港町アル・ホセイマは魚市で賑わっていた。突然、ごみ収集車がやってきて、同行の警官が「この時期のメカジキは禁漁だ」と言い、約500圓離瓮ジキを没収し車の後部に載せた。怒った魚売りのムフシン・フィクリ(31)が、魚を取り戻そうと収集車の後部に飛び乗った途端、警官が「スイッチを入れろ」と、怒鳴った。収集車の運転手はボタンを押した。魚と魚売りは機械音と共に、圧縮機に呑み込まれていった。惨劇の一部始終がネットに流された。事件を目の当たりにした人々は、モロッコ警察当局の残虐さをシュプレヒコールし、アッラーの神に訴え、自然発生的に街頭をデモ行進した。警察当局への抗議デモはモロッコ王政に対する不満に膨れ上がり、民間デモを禁止するモロッコでは珍しく、全土に広がっていった。 
 二日後の日曜日、モロッコ首都ラバトでは、2011年以降鳴りを潜めていたモロッコ人権協会の活動家たちが、大規模なデモを組織した。ラバトとマラケシュでは国連主催のCOP22( Climate Change Conference)が始まろうとしている。モロッコ治安当局は反王政デモを鎮圧するため、この魚売り虐殺事件を利用し11人を逮捕した。うち5人はリーフ地方の公務員だった。 
 
(2) 反逆のリーフ山地: 
 2015年から2016年にかけて起こった欧州テロを分析して、パリ大学教授ピエール・ヴァームルンが、「ベルギーのブリュッセルに巣食うモロッコ移民二世たちが、IS欧州テロ細胞を組織している」と、フランスのメデイアに語った。教授によると、ベルギーに住む約50万モロッコ人の大部分は、リーフ山地からきた移民だという。リーフ山脈は地中海に面したモロッコ北部にあり、その山間部に住むベルベル族を<リ―フ人>と呼んでいる。この地域は歴史的にモロッコ太守(後のモロッコ国王)から疎まれ、<リーフ人>は貧しく差別されてきた。<リーフ人>の悲劇は、1912年に当時の欧州列強がモロッコを三分割し、リーフ地方をスペイン植民地にされたことから始まる。1920年にリーフ人のアブド・アルカリームがリーフ地方で反乱をおこし、1923年にリーフ共和国を建国し、自ら大統領となってソ連の支援を得ながらスペイン軍と戦った。アルカリームは一時スペイン軍を追いやったものの、介入したフランス軍に敗れ、1925年にリーフ共和国は崩壊した。1926年にはドイツ軍がアルカリーム軍を、マスターガスで殲滅した。フランスから国外追放されていたムハンマド太守が1955年に帰国を許され、1956年3月2日にモロッコはフランスから独立し、フランスやスペインの援助を受けて経済再建を進めた。が、モロッコ王は反抗心と独立心が旺盛な<リーフ人>の粛清を図り、フランス軍の援助を受け6000人をナパーム弾で殺害し、この地方を疎外した。 
 <リーフ人>は食べるために、フランス領アルジェリアのワイン工場で季節労働者として働き、フランスの国籍を手にする者もいた。が、アルジェリアが独立し出稼ぎ移民が禁止されると、<リーフ人>はヨーロッパに出稼ぎの場を求めてなだれ込んでいく。そして、ヨーロッパの中継点と言われるベルギーのブリュッセルに拠点を置くようになった。 
 
(3) <モロッコ−IS−麻薬商売>イタリア・パレルモ発: 
 ルクミニ・カリマッチとロレンツオ・トンドが2016年9月20日に、<モロッコ−IS−麻薬商売>という題の記事を、Nytimesに流した。 
 「イタリア・パレルモにあるイタリア財務警察隊が、昨年の12月に拿捕した大型貨物船ムンズルが積んでいた13トンの麻薬ハシッシを公開した」と記事は、イタリア財務警察隊のモロッコ・ハシッシ・ルート調査を明かしている。それによると、2013年4月12日にリビア沖の公海で、偶然イタリア海軍戦艦2隻が大型貨物船を臨検したところ、シリア人乗組員と15 トンのハシッシを発見したそうだ。いままでに見たこともない大量のハシッシに驚いたイタリア海軍兵アミコは、シシリアのトラパニ港に、「倉庫を借りてくれ」と、緊急連絡したとか、、さらに、記事は興味深い事実を展開していく。 
 「イタリア高官は新しいハシッシ海上密輸ルートが、ISの北アフリカ拠点であるリビアで消えているのに疑問を抱いた。その後もハシッシを大量に積んだ大型貨物船がシシリアの港に連行された。2015年6月、パレルモのドックに繋がれたメリエム号からは、20トンのハシッシが摘発された。拘束した船員などからの証言で、長年にわたる麻薬商売の大ベテラン・イタリア・マフィアも絡んでいることが判明した。 
 モロッコ北部リーフ地方のハシッシはモロッコ北岸で船積みされ、リビアの地中海沿岸に荷揚げされ、その後、陸路でエジプト、中東、シリア、トルコ、バルカン半島を経て、ヨーロッパに浸透していく。これが新ルートだ。一方、35分もかからない旧ルートも生きている。2007年にスペインが南沿岸に敷設した監視カメラをかい潜って、モロッコ北岸を出たスピードボートやジェットスキーの飛沫が、ジブラルタル海峡を荒らしているのだ。 
ヨーロッパの街に辿り着いたハシッシは、1キログラムが約10,000ユーロ(1,143,775円)に跳ね上がる」 
 ちなみに、IHS Country Risk(リスク状況に関する総合情報会社)が2015年度IS収入の7%は、ハシッシ麻薬密輸によるものだと報告している。 
 
 「2016年11月4日からCOP(温室効果ガス削減締約国会議)21が発効される。素晴らしい!」と、11月3日、国連報道官ステファンがいつになく誇らしげに発表しました。 しかし、記者団の興味は、シリア戦争、南スーダン内戦、南スーダンPKOから撤兵したケニヤ、などに集中した。「トランプ大統領候補は、COPを嫌っているよ?」と、ある記者は浮かれる報道官に水を差しました。 「COP22がモロッコで11月7日から開催されるが、モロッコ占領地・西サハラでも行事が予定されている?国連の名でこの行事に参加したら、モロッコ領土内西サハラを認めることになる。国連決議を国連が破るのか?」と、他の記者が質問すると、「COP22行事はモロッコが決めたことなんで、、」と、報道官は言葉を濁しました。 
 11月1日に記者の一人が「世界のマスコミが取り上げている<モロッコ魚売り虐殺>に関する国連の見解は?そのモロッコでCOP22をやるんだよ国連は?」と質問すると、「検証中だ」と、報道官は逃げました。 
 大丈夫?  パン・ギムン国連事務総長さん、、外患内憂で大変だけど、モロッコに騙されないでね、、 
 
 
文:平田伊都子 ジャーナリスト、  写真:川名生十 カメラマン 


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