2016年11月06日03時33分掲載  無料記事
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コラム

TVとネット  〜ネットの未来はバラ色か テレビの未来は灰色か〜  村上良太

  最近、マスコミ界で著名な方がテレビはもう終わったコンテンツである=「オワコン」だとツイッターで発言していました。その方の友達も誰もテレビを見ていないし、ネットではいろんな情報があるのだから完全に地上波のテレビは無視してよい、という意見です。 
 
  こうした意見は新しいものではありません。10年近く前からネトウヨ(インターネットで言論活動を行う右翼)の人々を中心に「マスゴミ」キャンペーンが張られ、マスコミは腐っているから、新聞は取らなくてもいいし、テレビも見る必要はない、必要なものはネットで無料で得られる、と散々言ってきたのです。今回の著名な方の発言も、根底は同じです。 
 
  確かにマスメディアは批判されるべき点も多々あるでしょうが、決して終わった媒体ではありませんし、実際に今でも大きな影響力を持っています。そればかりではなく、ネットを流れる情報の大半はマスメディアの情報がもとになっています。 
 
  なぜそうなのかと言えばネットメディアには圧倒的に資金力がないため、記者を現地に送る資金もあまりありません。海外とか沖縄みたいなところだけでなく、交通費で片道数百円の場所であっても、交通費が出なければ足が運べないのがネットメディアの多くの現状です。だから、ネットにはすべてそろっている、という発言はあまり信用しない方がよいと思います。他人事ではなく、日刊ベリタの寄稿者も編集者も無収入で、交通費も食事代も協力費も何も出ません。以前は日刊ベリタ以外にもネット新聞はいくつかありましたが、記者にお金を払おうとすると財政がパンクしてしまったのです。まずネットメディアにお金を積極的に払う気が自分にあるのかどうか、そこがこの問題の最も足元にあるものではないか、と思います。ネットメディアでもIWJやビデオニュースドットコムなどのように、この時代に健闘しているジャーナリズムはありますが、常に資金難と闘っているようです。ネットがバラ色だ、という人はこうしたネット媒体に投資して育成していく覚悟があるのでしょうか。 
 
  さらに、もう一つ、もっと大きなトレンドが関係しています。ニューヨークタイムズやルモンドなど、世界の高級紙と呼ばれる新聞がこれまでインターネットでは無料で読み放題だったのを、最近改めて月に10本までは無料だが、それ以上となると購読契約しろ、と言うように有料化に舵を切っています。すでに日本の新聞の多くもそうなっています。ニューヨークタイムズなども、これまではブランド力を知ってもらうための無料お試し期間だったのですが、これからお金を払わないと読めなくなっていきます。考えてみれば記者を雇って記事を書いているのですから、当然と言えば当然なのです。そうなると、こうした媒体を読むことができるのはこれまで以上にごく一部の人になっていくでしょう。ネットがどんどん環境がよくなっていく、というのは妄想に過ぎません。 
 
  つまり、ネットでなんでも読める、と言えるのは情報の価値を知り、それを使ってビジネスして儲けることができる階層に限られつつあり、多くの人は重要な情報から締め出されていく可能性があります。そして、TPPが発効すれば著作権の管理ももっと厳格になると思われ、ますます情報が高いものになっていくと考えられるのです。 
 
  そうしたことを考えれば、情報に身銭を切ることを厭わないという階層の人はともかく、そうではない階層の人々にとってテレビやラジオ、新聞の値打ちは今後逆に、むしろ高まっていくと思われます。というのはこれらのマスメディアの特徴は「安さ」あるいは「無料」というところにあるからです。民放のテレビ番組はスポンサーの広告料で賄われていますから、決して本質的には無料ではなく、日々の消費の中で消費者=視聴者は一定の番組制作予算を有無を言わさず徴収されていることになります。視聴者はNHK、民放を問わず製作費を徴収されているのです。大金持ちが自腹を切って見世物を画面に出しているわけではないのです。番組を見なかったとしても製作費は負担しているのです。だからこそ、番組に不満があればよい番組を放送局が作るように視聴者が自ら声をあげていくしかないのだと思います。ネットの未来を否定するものではありませんが、ネットに資金がない限り、マスメディアの力を過小評価しない方がよいと思います。 
 
村上良太 


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