2016年12月24日09時03分掲載  無料記事
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アジア

ミャンマー政権はロヒンギャ住民への人権侵害と弾圧をやめよ 人権団体ヒューマンライツ・ナウが声明

 東京に本拠を置く国際人権団体ヒューマンライツ・ナウが、ミャンマーで人権抑圧にさらされているロヒンギャ住民への弾圧をやめることをミャンマー政権に求める声明を発表した。ロヒンギャ住民はイスラム教徒で、仏教国であるミャンマーで長年迫害を受けてきた。その対立が激化、政府の治安部隊による殺害や女性に対する性的暴行など弾圧が続ていて、国際問題になっている。(大野和興) 
 
ヒューマンライツ・ナウに声明は以下ー 
 
東京を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、ミャンマー、ラカひゅイン州における人権状況に対し、深刻な懸念を表明する。 
 
イスラム教徒のロヒンギャ住民はミャンマー政権から正式な市民権を与えられず、長年にわたり差別・迫害を受けてきた。2012年以降、ラカイン州の仏教徒とロヒンギャ住民の対立・戦闘が深刻化し、迫害を受けて多くの住民が周辺国に避難することを余儀なくされ、国際問題となっている。[1] 
NLDのもとでの新政権は、残念ながら、この問題を人権に基礎において解決する努力を十分に行わず、事態は深刻さの一途をたどっている。 
 
10月9日、ラカイン州北部で、武装集団が治安部隊を襲撃、これに対する治安部隊の掃討作戦がロヒンギャ住民を標的とし、治安部隊による住民の超法規的殺害、レイプと性的暴行、恣意的拘禁と拷問, 住居やモスクの焼き打ちなどの深刻な人権侵害を伝える様々な報道、報告が寄せられている。[2] 
 
ミャンマー政権は、こうした人権侵害の報道を完全に否定する一方で、独立した調査を行わず、メディアによる戦闘地域の取材も制限しているため、人権侵害の実態が把握できない。[3] 
 
国際機関はこの間、約3万人が家を追われたと報告しており、その多くはロヒンギャ住民とされる。[4][5]さらに、10月の戦闘以降、ロヒンギャ住民の多くが迫害を恐れてバングラデシュ国境周辺に避難をしていると報道されている。[6] こうしたなか、ラカイン州北部への人道援助機関のアクセスは十分に確保されず、家を追われた人々の人道危機的状況が深刻に懸念される。[7] 
ミャンマー政府は8月、「ラカイン州に関する特別諮問委員会」8を設立、コフィ・アナン前国連事務総長を委員長に任命した。アナン氏は12月、現地を視察し、政権による透明性の欠如を非難している。9 
 
ヒューマンライツ・ナウは、ミャンマー政権による強権的な弾圧とロヒンギャ住民に対する差別・迫害政策の継続が、紛争をさらに複雑化することを強く警告する。 
 
国軍・治安部隊による民間人への系統的な人権侵害は、ロヒンギャ住民を追い詰め、住民が過激主義への親和性を高める重大な危険性をはらんでいる。 
 
ヒューマンライツ・ナウはミャンマー政権に対し、国軍・治安部隊に対するコントロールを強化し、国際人権・人道法に反する民間人攻撃を直ちにやめさせるよう強く要請する。 
 
そして、透明性の高い、独立した調査をただちに実施し、人権侵害の実態を徹底して調査するとともに、人権侵害に責任を負う者に対する責任を追及することを求める。 
 
国連は、事実調査団の派遣も含め、ラカイン州における人権侵害の真相究明に関与すべきであり、ミャンマー政権は国連の調査のアクセスを全面的に受け入れる必要がある。 
 
同時に、独立性のあるメディアのアクセスも確保すべきである。 
そして避難民の生存に必要な物資等へのアクセスを確保することは今、喫緊の課題である。 
 
アウンサンスーチー氏は、アセアン外相会談において人道支援物資のアクセスを確保することを約束したが、10これが現場で早急に実施される必要がある。 
 
ヒューマンライツ・ナウは、ミャンマー政府に対し、ラカイン州北部に対する人道支援機関のアクセスを迅速かつ完全に認めるよう要請する。 
 
                                       以 上 
 
[1] United Nations, General Assembly, Situation of human rights of Rohingya Muslims and other minorities in Myanmar: Report of the United Nations High Commissioner for Human Rights, A/HRC/32/18, p.3 (29 June 2016), available from: https://documents-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/G16/135/41/PDF/G1613541.pdf?OpenElement 
 
[2] OHCHR, “Myanmar: UN expert warns of worsening rights situation after “lockdown” in Rakhine State,” (18 November 2016), http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=20895&LangID=E. 
 
[3] http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=21043&LangID=E 
 
[4] United Nations, UN Office for the Coordination of Humanitarian Affairs, “Humanitarian Situation in the Northern Part of Rakhine State”, 13 December 2016, http://reliefweb.int/report/myanmar/ocha-update-humanitarian-situation-northern-part-rakhine-state-myanmar-13-december. 
 
[5] http://www.bbc.com/news/world-asia-38345006 
 
[6] http://www.bbc.com/news/world-asia-38083901 
 
[7] https://mm.usembassy.gov/joint-statement-humanitarian-access-northern-part-rakhine-state/ 
 
[8] Advisory Commission on Rakhine State 
 
[9] http://www.nytimes.com/2016/12/06/world/asia/kofi-annan-myanmar-rohingya.html?action=click&contentCollection=Asia%20Pacific&module=RelatedCoverage®ion=Marginalia&pgtype=article 
 
[10] http://www.bangkokpost.com/news/asean/1163521/suu-kyi-myanmar-to-let-aid-into-rakhine 


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