2017年02月04日17時28分掲載  無料記事
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アフリカ

【西サハラ最新情報】  モロッコがウィン、西サハラがウィン  平田伊都子

 <モロッコのAUアフリカ連合帰還>が決まって、モロッコがウィン(勝利)、西サハラがウィン(勝利)と自分勝手に叫んでいます。 二つ合わせると<ウィンウィン>? 日本の政治家が大好きな幻の言葉、<ウィンウィン(双方勝)>となります。 が、現実の世界にあるのは<勝><負け><引き分け>です。 勝名乗りを勝手に上げる両当事者の言い分を聞き、BBC英国TVの軍配に注目してみましょう、、 
 
(1) モロッコが大勝利 宣言: 
「長い間留守にしていた家に帰ってくるのは、本当に良いことだ。愛する家に帰ってきた喜びを顕せる今日は、吉日だ。アフリカは私の大陸、私の家、そしてとうとう、幸せなことにお前たちとの再会がかなったのだ。私はお前たちに会いたかった。だから、お前たちに語りかけるために、私はこの旅を強行した。外交手続きや、正式な組織の意思決定を得て再加盟するという過程を経づして、、」と、モロッコ国王陛下は2017年1月31日のAUアフリカ連合首脳会議で、<モロッコAU帰還>の長い演説を始めた。国王がこの日の演説を強行したのは、AUアフリカ連合本部があるエチオピアの首都アジスアベバで開催されたAU年頭サミットに、アントニオ・グテーレス国連事務総長の参加があったからだ。ちなみに年頭サミットは、ムーサ―・ファキ・マハマト(チャド外務大臣)をAUアフリカ連合新議長に選んでいる。 
 2017年2月1日、CORCAS(王立サハラ問題諮問評議会)がモロッコ国王モハンマドⅥ世のアフリカ大凱旋を、「国王陛下のAU公式ご帰還とご託宣は、アフリカ・レベルのみならずヨーロッパやアメリカなどでも熱狂的な大反響を巻き起こした」と、伝えた。 
 モロッコは国連事務総長にアフリカ大陸支配能力を誇示したかったのです。 「西サハラ紛争はモロッコに任せて国連は手を引け」というモロッコの思惑が見えてきませんか? 
 
(2)西サハラが勝利宣言: 
 「AUアフリカ連合はUN国連に続いて、重要な責任を担っている。それは、何年にもわたるモロッコの妨害で延滞している平和解決を施行することと、大陸組織(AUアフリカ連合)の中にある二つの正式加盟国(モロッコと西サハラ)が絡む紛争を完全に解決することだ」と、モロッコのAU帰還承認を余儀なくされた西サハラ難民大統領ブラヒム・ガリは、国連事務総長も交えた2017年1月30日のAUサミット朝食会議で訴えた。 
 2月2日、西サハラ難民政府ロンドン代表モハメド・リマムは、「散々手間取った末に、付加条件や前提条件(モロッコ側の)なしでモロッコのAUアフリカ連合帰還が実現した。これはSADR(西サハラ・アラブ民主共和国」にとって、勝利である。なぜならば、モロッコは、AUアフリカ連合の創設国であるSADR(西サハラ・アラブ民主共和国)の存在を認めたことになるからだ)と、勝利宣言をした。さらに代表は、「1984年にSADRをOAU(アフリカ統一機構)が正式国家承認したことに反発してOAUを撤退したことを蒸し返した。そして、SADRをAUから追放しろと迫った。しかし、モロッコの目論見は失敗した。モロッコの追放失敗はSADRの勝利だ」と、言及した。 
 しかし、モロッコのSADR追放案が採用されなかったからといって、西サハラの勝利と言っちゃっていいのかな?? モロッコAU帰還は、モロッコが仕掛けるAUの乗っ取りとSADR消滅の前哨戦であることが明白なのに、、 
 
(3)BBC英国TVの軍配: 
 2017年2月1日のBBC英国TVは、「モロッコは単純に(AU帰還を)要請し、三分のニ以上加盟国の賛成で受領された。モロッコは昨年の7月から大陸帰還への復帰を目指して、必死でロビー活動を行ってきた。モハンマド王は要請への賛成票を求めてアフリカ数カ国を歴訪した」と、報道した。 
「モロッコのAU帰還は、モロッコがアラブからアフリカにシフトしたのか?」という疑問にBBCは、「モロッコがアラブ諸国の一員であるのは変わりない。モロッコの狙いは占領地の地下資源開発を容易にするための、経済戦略だ。モロッコ軍は1975年にスペイン軍撤退にとって代わって、西サハラに侵攻している」と、BBCは答えている。 
「モロッコ帰還で西サハラ情勢はどう変わるのか?」という疑問に、「西サハラに何が起こるのかは、予測できない、、西サハラ高官シデイ・モハンマドは西サハラの住民投票が AUアフリカ連合の枠内で施行することが可能になったと語っている。彼はまた、AUの一員となったモロッコに直接交渉ができると、期待を寄せていた」と、BBCはインタヴュー解答を紹介した。UN国連にことごとく逆らってきたモロッコが、AUアフリカ連合の言うことなどに耳を貸すわけがないのに、、 
「アルジェリアは西サハラに関してモロッコに負けたのか?」という疑問に、「ノーだ。アルジェリアは常に西サハラ代表・ポリサリオ戦線の最大スポンサーだ。アルジェリアはAUアフリカ連合帰還の代償として、モロッコがその(西サハラの)独立と領土権を認めることになると期待している」と、BBCはアルジェリアの負けを否定した。 
 しかし、アルジェリアも西サハラもモロッコAU帰還を阻止できなかったじゃないですか? 負けです、モロッコに負けたんです。 
 
 両当事者は、UNとAUという二つの土俵で勝負を決めることになってしまいました。 西サハラ側はUN土俵で土俵際まで追い詰めたのに、モロッコにうっちゃられました。 新しいAU土俵ではモロッコがどんな手を考えてくるのか? しかし、どう贔屓目に見ても、正攻法で喚くだけの西サハラにとって、厳しい場所になりそうです。 
 早くもモロッコ国王は南スーダンを訪問し、RASD 不承認を取り付けようとしています。 
 アフリカ諸国とモロッコの二国間協議でRASD不承認を勝ち取ろうとしています。 まめな国王外交に西サハラ外交団は仕切りから負けてます。 
 
 モロッコAU帰還に関して、あなたは、モロッコと西サハラのどちらに軍配を上げますか? 
 
 
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之     2017年2月4日 
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子 


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