2017年02月09日21時42分掲載  無料記事
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沖縄/日米安保/米軍再編

宮平真弥著『琉球独立への本標(ほんしるべ) この111冊に見る日本の非道』(一葉社)が問う日本の安全保障体制のあり方

 本書は、著者で沖縄出身の宮平真弥さん(流通経済大学法学部専任教員)が、多くの人に読んでほしいと思った文献の書評集である。 
 その中で宮平さんは、「日本国が琉球・沖縄にしでかしたこと、現在しでかしていることを“本土”の人たちに伝えたい。・・・(中略)・・・本書で紹介した111冊の文献は、日本人が沖縄やアジア各国に対して何をしてきたのか、今後どうすべきかを考える上で参考になるものだと考えている。一冊でも二冊でも、本書で紹介した文献を読んでみて、その上で琉球独立を考える読者が出てくれば望外の幸せである」と語っている。 
 
 本書は3つの章で構成され、第1章「機[鮖法事実・現況」では、かつての琉球国が強制的に日本国という枠内に組み入れられ、沖縄戦や米軍による占領を経て日本に復帰したものの、今なお本土に比べて差別的な扱いが続くという、主に沖縄の歴史を説明する文献が紹介されている。 
 第2章「供―馼召箸い書状」では、1951年のサンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約の2条約からなる“サンフランシスコ体制”が日本そして沖縄にもたらした負の遺産(_縄と「二つの日本」、¬げ魴茲領療斂簑蝓↓J瞳慨霖蓮↓ず瞳拡、ノ鮖北簑蝓↓Τ砲了院↓中国と日本の脱亜、┰沼暗独立)を解説する文献や、沖縄が経済的に自立し得るか否かを検討している文献等が紹介されている。 
 第3章「掘.タルーニャと琉球」では、琉球独立の可能性を考察する材料として、スペイン北東部カタルーニャ州(州都バルセロナ)の独立運動に関する文献等が紹介されている。 
 
 同書を執筆した動機について、宮平さんは、今年1月下旬に東京・豊島区駒込にある東京琉球館(私設“琉球国”大使館)で開催された出版記念会の中で、「昨年4月の沖縄うるま市強姦殺人事件の発生を受けて、『沖縄から米軍基地を無くす、日米地位協定を改定する、日米密約を無くすといったことを実現するために、自分にできることはないか』『まずは、沖縄の実態を知らない人が多いだろうから、出来る範囲で知らしめたい』と思ったことがきっかけでした」と語っている。 
 
 ただ宮平さんは、感情的に「兎にも角にも沖縄は独立すべき」と主張しているわけではない。琉球独立の見通しについて、研究者として冷静に「現時点では不可能」と分析した上で、次のように語っている。 
「『琉球独立=手段』『沖縄県民の生命・身体・財産の侵害を無くす=目的』と定義します。そして、このまま日本の植民地でいるよりも独立した方が、沖縄の人々の生命・身体・財産がこれ以上侵害されないということであれば、独立についてきちんと考えなければならないでしょう。 
 しかし、日本から独立して米軍基地が無くなったのは良いけど、餓死者が続出したとなれば、目的を達成したとは言えません。屋嘉宗彦さんの著書『沖縄自立の経済学』(七ツ森出版)を読むと、仮に独立して米軍基地が無くなっても、日本国から財政移転される数千億円が無くなれば、恐らく143万人という沖縄の人口は維持できないだろうと分析する経済学者もおられます。それだと『独立して意味があるのか』ということになります。 
 やはり独立を言う以上は、少なくとも『こういう裏付けがあって、米軍基地が無くなれば、これだけ観光客が増え、これだけ工場が誘致できて収入増になる』といった裏付け・見通しが必要です。ただ単に“琉球独立”を訴えるのは、いかがなものかと思っています」 
 そして、「琉球独立は、今後5年や10年で達成できるものではないのだから、いろんなアイデアを出し合って、地に足が着いた議論を行っていくべきです」と語り、今後の議論の盛り上がりに期待なさっている。本書は、その議論の材料を提供しているのである。 
 
 しかし、本土で暮らす日本人は、琉球独立に関する議論の中身よりも、そうした議論が起こっている原因に目を向けるべきではないだろうか。 
 本書の中の「米軍基地を沖縄に集中させる政策を進めてきたのは歴代の日本政府であり・・・(中略)・・・歴代の日本政府を支えていた日本『本土』の有権者の投票行動こそが、沖縄に基地を押し付けてきた原因である。・・・(中略)・・・極端にいえば、沖縄の全ての有権者が米軍基地撤去の意思表示を投票行動であらわしても、多数者である『本土』有権者の投票行動が変わらなければ、基地は動かず、それが『政治のルール』ということになる」(170〜171ページ)という宮平さんの指摘には、返す言葉も無い。 
 
 米国でドナルド・トランプ大統領が誕生した今、これからも在日米軍基地の大半を沖縄に押し付け、犠牲を強い続けることを良しとするのかなど、日本の安全保障体制のあり方を見つめ直す絶好の機会を迎えているように思う。そういう中で野党(特に民進・共産・社民・自由)には、次期衆院選までに、自公政権とは異なる対案を提示することを期待したい。 
 
 ちなみに、本書の表題にある「本標(ほんしるべ)」という言葉であるが、広辞苑等の辞書には掲載されていない。 
 本書を出版した「一葉社」代表取締役の和田悌二さんの説明によると、「書評集である本書は、琉球独立に向けた道標(みちしるべ)に当たるものだ」と考え、“道標”から編み出した造語なのだそうだ。本書の内容を上手く表現していると思う。(坂本正義) 
 
【著者プロフィール】 
 
 宮平真弥(みやひら・しんや) 
 
 1967年、那覇市生まれ。沖縄県立首里高等学校、法政大学法学部卒。東京都立大学(現・首都大学東京)大学院を経て、2001年より流通経済大学法学部専任教員。法政大学沖縄文化研究所兼任所員。 
 専門は“日本近代法史”(小作権、入会権、温泉権)。 
 共著に『部落有林野の形成と水利』(御茶の水書房)、『現代日本のガバナンス』(流通経済大学出版会)など。 


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