2017年02月19日16時13分掲載  無料記事
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米国

アメリカの警察による殺人  ジェローム・カラベル(カリフォルニア大学バークレイ校 名誉教授) “Police Killings Surpass the Worst Years of Lynching, Capital Punishment, and a Movement Responds ” By Jerome Karabel  

  2008年の大統領選で黒人系のオバマ大統領の勝利が告げられた時、アメリカの黒人社会には感動と涙、そして一種の陶酔(ユーフォリア)が広がっていくのを見ました。しかし、それから7年後の2015年、アメリカでは黒人が警察に殺される事件が続き、怒った黒人たちと警察隊の激しい衝突が起きたのは記憶に新しいことです。以下の論考はカリフォルニア大学バークレイ校のジェローム・カラベル名誉教授(社会学)によるもので、2015年に発表されました。アメリカの警察によって殺された人々の分析です。(以下、カラベル教授の論考) 
 
“Police Killings Surpass the Worst Years of Lynching, Capital Punishment, and a Movement Responds” 
 
「警察による殺人がリンチや死刑が最多だった年を越える。そこから見えてきたある傾向」 
 
Those killed by the police are of course not representative of the population; the investigation by the Guardian and the Washington Post tell us who they are. About 95 percent are male, and approximately half are 34-years-old or younger. African-Americans are heavily over-represented among the dead, at about one in four 〜 double their percentage of the population. Whites constitute about half of those killed by the police and Hispanics 15 percent, with the remainder Asian-Americans, Native-Americans, and “unknown.” According to the Guardian, about one in four of those killed by the police 〜 more than 250 people per year 〜 suffer from mental illness. 
 
警察によって殺された人々はもちろん国民の代表と言うわけではない。ガーディアン紙とワシントンポスト紙の調査報道は殺された人々がどのような人々か語っている。その約95%は男性であり、その約半分は34歳以下である。アフリカ系アメリカ人の比率は高く、4人に1人に上っている。これは人口比に対して2倍の数字だ。白人は殺された人々の半数を占め、ヒスパニック系が15%を占める。またアジア系アメリカ人やネイティブ・アメリカンも含まれるし、アイデンティティが不明の人もいる。ガーディアン紙によると、警察によって殺されたうちのおよそ4人に1人は〜これは1年間で250人以上に上るが〜精神の病を患っていた。 
 
Though 88 percent of those killed by the police die by gunshot, death by other means is not uncommon. Tasers, advertised as a “safe” alternative to guns, can be lethal; through October 31 of this year, tasers had killed 47 people. Death from being struck by police vehicles, often in car chases that take innocent lives, resulted in 31 deaths during the first ten months of 2015. Death in custody 〜 the tragic case of Freddie Gray in Baltimore is the best known 〜 has taken 35 lives. African-Americans have been disproportionately frequent victims of deaths by taser and in custody, comprising 38 percent and 32 percent of all victims, respectively, compared to 24 percent of all police killings (with 11 percent “unknown”). 
 
警察に殺された人々の88%は銃によるが、他のケースが何かは不明だ。スタンガン(※電気ショックを与える武器で、アメリカではTaser社のものが有名なため、Taserとも呼ばれる。)は銃に代わる安全な兵器だと宣伝されているが、実際には致命的である。今年の10月31日までではスタンガンで47人が(警察に)殺されている。警察車両によって殺された者は、しばしば通行人を巻き添えにして殺すカーチェイスによるのだが、2015年の最初の10か月で31人に上っている。拘束中に殺されたケースは35人に上っており、ボルチモアのフレディー・グレイの悲惨なケースは一番よく知られているものだ。アフリカ系アメリカ人の場合はスタンガンによるものとと拘束中に殺される割合が突出して高い。スタンガンでの殺害では全体の38%を、拘束中の殺害では32%に及ぶ。これはアフリカ系アメリカ人が警察によって殺される場合が全体の24%であることを考慮すると(全体の11%が身元不明であるとしても)高い割合である。 
 
Though the horrifying and historically powerful image of the unarmed black man shot by a policeman is now firmly imprinted in the public’s mind, the majority of those killed by the police are in fact armed. But not all weapons are as deadly as guns; in the Guardian study, almost one-third were non-gun weapons, including baseball bats, machetes, and knives. In some cases, what seemed to be a gun turned out to be a fake gun: a BB gun, an air gun, and 〜 in a few tragic instances 〜 a toy gun held by a teenager. 
 
武装していない黒人男性が警察によって撃たれるというのはおぞましいし、歴史的にも強烈なイメージを伴って公衆の脳裏に焼き付いているが、警察によって殺された者の大半は実際には武器を所持していた。しかし、彼らの武器のすべてが銃のような致死的なものだったわけではない。ガーディアン紙の調査によると、全体の3分の1は銃ではなかった。その中には野球のバットや斧やナイフが含まれていた。また最初に銃のように見えたものがのちに銃の偽物だと判明したケースもいくつかあった。BBガンや、エアーガン、また少しではあるが、悲しいことにおもちゃのピストルの場合もあった。これは十代の若者が所持していたケースである。 
 
But there is no question that policing in America is a dangerous job and that law enforcement officers sometimes face genuinely lethal threats. Yet it is also true that no small number of the people killed by the police are unarmed. Here the Guardian and Washington Post investigations diverge sharply, with the Guardian and the Post identifying 189 and 77 such cases, respectively, through October 31st of this year. But the difference is more apparent than real, for the Post only includes those individuals who are shot by the police, while the Guardian includes deaths by taser, police vehicles, and in custody as well as shooting. 
 
   とはいえ、アメリカにおいては警察の仕事が危険な職務であり、司法警察官たちはしばしば命にかかわる危険に遭遇するものだ。それでも警察に殺された人々のうち、武器を所持していなかったケースは決して少なくはない。これについてはガーディアン紙とワシントンポスト紙の調査は数字が大きく分かれている。今年10月31日までの間に、警察に殺された人々で武器を所持していなかったケースを、ガーディアンは189件、ワシントンポストは77件とそれぞれ算定している。しかし、この違いは現実の違いというより、見かけ上の違いだろう。というのもワシントンポストの場合は警察に銃殺されたケースだけをカウントしているのに対して、ガーディアン紙の場合は銃殺に加えて、スタンガンや警察車両、拘束中の死もカウントしているからだ。 
 
Since it is police shootings of the unarmed that are at the epicenter of the current controversy, these cases warrant special scrutiny. The particulars of each case vary yet there is a pattern in who is killed; of the 77 such cases documented by the Washington Post, 36 percent are black men. This is well above the figure for all police killings and, when combined with the over-representation of African Americans among those killed by tasers and in custody (almost all of whom were unarmed), the overall pattern confirms that special sense of vulnerability felt by black people in their encounters with the police is founded in reality. 
 
  警察が武装していない人を射撃したことが今日起きている議論の中心にあるのだが、これらのケースは特に精査を必要とする。それぞれ個々のケースには様々な違いがあるものの、それでも警察に殺される場合には1つのパターンがある。ワシントンポスト紙が記録した77のこれらの事例では36%が黒人男性だったということである。これは武装していない人が警察によって殺されたケースの中では最も大きな数字である。そして、これにスタンガンによる殺人と拘束中の殺人を足し合わせてみると(これらの場合はほとんど武装していない)、これらすべてから言えることは黒人の人々が警察と遭遇したとき、彼らが強い不安を感じているということが確かに言えるのである。 
 
 
4 November 2015(The Huffington Post ) 
 
Jerome Karabel 
Professor of sociology, University of California at Berkeley 
 
ジェローム・カラベル 
(カリフォルニア大学バークレイ校 社会学 名誉教授) 
 
■「大いなる幻影:流動性、不平等とアメリカンドリームについて」ジェローム・カラベル(カリフォルニア大学バークレイ校 名誉教授)”Grand Illusion: Mobility, Inequality, and the American Dream” By Jerome Karabel 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201702181404256 
 
 
■アメリカの警察による殺人  ジェローム・カラベル(カリフォルニア大学バークレイ校 名誉教授) “Police Killings Surpass the Worst Years of Lynching, Capital Punishment, and a Movement Responds ” By Jerome Karabel 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201702191613380 
 
 
■「Democratic Debacle 民主党の敗北」The defeat of Hillary Clinton was a consequence of a political crisis with roots extending back to 1964. ヒラリー・クリントンの敗北の根っこは1964年に遡る ジェローム・カラベル(社会学) 
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