2017年02月27日14時26分掲載  無料記事
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イスラエル/パレスチナ

相次ぐパレスチナの人々へのイスラエルの人権侵害 軍による超法規的な殺人も

 パレスティナでイスラエル当局によるパレスチナ人への人権侵害が相次いでいる。米国でトランプ政権が発足、親イスラエル政策が強力に推し進められることから、今後パレスチナ人への迫害は一層強まるとみられている。以下は、国際人権団体アムネスティが伝えるイスラエル当局による人権侵害のほんの一部である。(大野和興) 
 
◆行政拘禁を乱用、更新を重ねる 
 
 2016年12月7日、イスラエル当局はパレスチナ人の人権擁護活動家、ハサン・ガッサン・ガレブ・サファディさんの行政拘禁をさらに6カ月間、更新した。彼は既に6カ月余り、起訴も裁判もないまま拘禁されてきた。 
 
 ガレブ・サファディさん(25歳)は被占領東エルサレムのパレスチナ住民で、囚人の権利擁護団体、アッダミールのメディア・コーディネーターをしている。彼は最初、2016年5月1日にヨルダンと被占領パレスチナ地域(OPT)の間の国境検問所でイスラエル当局によって逮捕された。逮捕された後、彼は40日間、尋問された。彼が弁護士に語った所によると、尋問中、眠らせてもらえず、ストレスの強い姿勢で拘束されていたという。 
 
 サファディさんに対する「証拠」は機密となっており、彼も弁護士もそれを吟味することは許されていない。一回の拘禁期間は最長6カ月だが、更新回数には制限がない。 
 
 12月11日、イスラエル軍はパレスチナ人のサーカス・パフォーマーであるムハンマド・ファイサル・アブ・サハさんの行政拘禁をさらに6カ月間、更新した。彼は起訴や裁判もないままイスラエル当局によって1年間、拘禁されてきた。ファイサル・アブ・サハさんは、2007年にパレスチナ・サーカス学校で学び始め、2011年に演技者の一人となった。彼はまた子どもたちにサーカス演技を訓練させたり、学校の300名超の生徒の内、30名いる学習障がいのある子どもたちを教えることを専門としている。 
 
 行政拘禁は表向き、治安に著しくかつ差し迫った危険をもたらす人びとを拘禁するための例外的措置として導入されたものだが、犯罪容疑者を逮捕、起訴、訴追したりする刑事司法制度の代替手段として、あるいはまったく罪のない人びとを拘禁するためにイスラエルによって利用されてきた。この命令は無制限に更新可能で、イスラエルによって行政拘禁されているパレスチナ人の中には、言論・結社の自由の権利を平和的に行使しただけで拘禁された良心の囚人がいると、アムネスティは述べている。 
 
◆イスラエル軍による殺人 
 
 イスラエル軍の兵士や警官ら多数が11月12日、ヘブロンのアル=アリ病院に訪れ、パレスチナ人男性(28才)を超法規的に処刑した。アムネスティが聞き取りした目撃者2名によると、パレスチナ民間人になりすました多数の兵士と警官が病院に侵入し、3階の部屋に入った。部屋に入った警官らは、容疑者の従弟であるアブドゥラ・アッザム・シャラルダさんの頭部や上半身に向けて少なくとも3回発砲した。 
 
 軍は、シャラルダさんが兵士たちを襲ってきたと主張した。目撃者によると、警官から数メートルも離れたところにいたシャラルダさんは、武器を持たず、暴力を振るう様子はなかったという。軍はこの数週間、ヘブロン市内や近郊で少なくとも18人のパレスチナ人を殺害した。超法規的処刑と見られる殺害もある。 
 
 11月6日には軍の兵士が、サルワット・アル=シャラウィさん(72才)を射殺した。彼女が兵士たちに車で激突しようとしたからだという。その時の状況を撮影したビデオでは、車のスピードは低速だったため、兵士たちは車の進路から飛びのいた上で、車に銃弾を浴びせた。彼女の息子によると、母親は昼食に行くところだったという。 
 
 10月29日には、ヘブロンでイスラエル軍兵士に刃物で軽傷を負わせたとされるマーディ・アル=ムタシブさん(23才)が、軍に射殺された。事件当時のビデオでは、銃弾を受けたマーディさんが路上で悶え苦しむなか、軍兵士がマーティさんに向けて再び発砲していた。 


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