2017年03月03日18時04分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201703031804545

米国

みんな野良猫だった  ファーストレデイーも移民なのにどうして移民虐め!  平田伊都子

 うちには野良猫が5匹、食べに来たり泊りに来たり、勝手に出入りしています。 みんな家猫のように態度もでっかく、我儘一杯に暮らしています。 が、みんな野良猫だったんです。 ある日、女番長の<ネエチャン猫>が自分の餌に口をつけず、声を出さず辺りを見まわしました。 すると、見たこともない三毛の野良猫が音もなく現れて、一粒残さずカラ餌を平らげて去って行きました。 みんな助け合ってます。 
 
(1)トランプの壁: 
 2017年2月26日、27日、28日と、ホワイトハウスから、「Don’t forget to watch 、、 Tuesday, February 28, 2017, at 9 p.m. 見るのを忘れるな!2月28日午後9時(トランプアメリカ大統領トランプが初めて上下両院で演説するんだぞ!)」と、メールが入った。筆者はBBC 英国TVの生中継を見た。トランプは最初のうち、いつになく上がっていたようで、何度も水を飲んでいた。が、「オバマケアー撤廃」の段になるといつものジェスチャーいつもの口調に戻っていた。しかし、オバマのように芝居がかったポーズや大声を張り上げない。淡々と政治方針とやる事を述べていく。オバマは大統領を演じる役者だから振り付けや演出を必要とする。人生経験が豊富なトランプは、自分の処世術と人生観をバックに、自分の言葉で語る。人形使いの存在がチラチラして、オバマ・操り人形は信用できない。トランプはハチャメチャで歯に衣着せずだが、自分の言葉で正直に言ってくれるから安心して耳を傾けることができる。演説を聞かされる聴衆が、トランプの考えに賛成か反対かを決めて意思表示をすればいい。 
 そして、メラニア・ファーストレデイーは傍聴席でひっそり咲いていた。トランプが「サンキュウ、ファーストレデイー」と、名指ししなかったら、地味な黒服に身を包んだ美しい人に、カメラは振られなかったに違いない。美しいメラニアは、1970年にユーゴスラビア社会主義連邦共和国(現在のスロベニア)で生まれ、1990年代半ばに渡米し、2001年にはアメリカの永住権を取得し、2005年1月にトランプと結婚し2006年にはアメリカ国籍を取得した。美しいファーストレデイーはバリバリの移民だ。不法、合法関係なく移民は移民だ。 
 
(2)世界中が壁だらけ: 
「南側国境において巨大な、巨大な壁の建設をすぐに開始する」 
と、2017年2月28日のアメリカ上下両院で、トランプ大統領は宣言した。止めてください、トランプさん!もう、世界中に壁は張り巡らされているんですよ。 
 例えばイスラエルの分離壁。分離壁は堀・有刺鉄線・電気フェンス・幅60〜100mの警備道路からなる部分と、コンクリート壁の部分で構成されている強固なものだ。全長700キロメートル以上にわたり、パレスチナ人をイスラエルから分離している。2204年7月9日に国際司法裁判所はこの分離壁を国際法に反していると断定し、国連総会でも非難決議が出された。 
 例えばモロッコにあるスペイン領の飛び地領セウタとメリリャの国境壁。二か所はスペインで、ヨーロッパがアフリカ大陸と陸地で接する唯一の場所だ。地中海の密航とともに、欧州を目指す移民にとって重要な脱出口になっている。一日に400人から500人がモロッコからの脱出を試みている。強固なフェンスを越える若者の姿が、欧州のテレビを賑わせている。 
 例えば西サハラの600万個の地雷壁。アフリカ最後の植民地・西サハラを縦断する全長2,500キロメートルの防禦壁だ。西サハラ難民兵の侵入を防ぐため、占領国モロッコが7年かけて建設した。高さは2メートルから4メートルで、瓦礫で作った粗末な防御壁だが、西サハラ側に600万個以上の地雷を埋めている。 
トランプ大統領の<壁>宣言で、<壁の時代>を再確認させられた。 
 
(3)みんな移民だった: 
 「アイゼンハワーは、本当にすばらしい国の社会基盤プログラムに着手した」と、トランプは演説で第34代共和党大統領アイゼンハワーを絶賛した。 
そのアイゼンハワーは、ドイツ西南部、フランスとの国境に近いザールブリュッケン郡から宗教的迫害を逃れて17世紀にスイスに移住し、さらに1730年アメリカのランカスターに移住したペンシルベニア・ドイツ人の出身だそうだ。立派な移民だ。 
 「<アメリカ政府による保護政策の廃止は人々の間に貧困と退廃を作り出す>と警告したリンカーンは正しかった。今、私たちは彼の言葉と助言に耳を傾けなければならない」と、トランプは演説に伝説の第16代共和党大統領リンカーンを登場させた。 
リンカーンのお爺さん・エブラヒムは、家族とともにバージニア州からケンタッキー州に移り住み、1786年、インディアンに襲撃され家族の目の前で殺された。移民の侵入者は、地元住民のインディアンにやっつけられたのだ。立派な移民だ。 
 第45代共和党大統領トランプのお爺さん・フレッドは、1885年にドイツのラインラント・プファルツ州からアメリカに移民した。トランプのお母さんはスコットランドのルイス島生まれで、1930年にアメリカに移民してきた。 
 なんだなんだ、トランプさんちも移民じゃないの! 
 
(4)「みんなよそ者」オバマ前大統領: 
 2017年2月25日、トランプ現大統領の初上下両院演説の三日前、ご無沙汰していたオバマ前大統領のメールが届いた。ゴルフだのタコ水上スキーだの、遊び狂った長期バカンスを終え、仕事を再開したらしい。 
「Stands up against walls!壁に反対しよう!」と扇動し、「署名しろ」とある。筆者は勿論、壁に反対だから署名すると、「 献金しろ」と、前と同じパターンで大金持ちの前大統領が、金をせびる。献金は5弗から始まって制限なしまで、8段階になっている。そして、「大部分の人は15$くれるよ」と但し書きがついている。書式も主催もOFAと、オバマ元大統領時代のメールと変わらない。大きく違うのは、ホワイトハウスの冠がついていないのと、OFAが(行動の組織)となっていることだ。OFAはまずObama For America(アメリカのオバマ)という名で売り込み、大統領退陣が近くなると Organization for America(アメリカの組織)とチェンジしていった。世界のオバマファンをガッカリさせるような、詐欺まがいは止めてほしい。 
 そんな事しなくったって、カリフォルニア州パームスプリングス郊外のランチョ・ミラージュには豪邸を、ハワイにはバカンス用の邸宅を購入できるんだから、、(ニューヨーク・ポスト発)貧乏な庶民から小銭を集めないでください。 
 そんな自己中のオバマさんですが、「We were Strangers onceみんな、よそ者だった」と、移民法に関しては明言を繰り返し発信しました。 みんな野良だったんですね、、 
 
 アメリカ・トランプ政権がブルガリア、クロアチア、キプロス、ポーランド、ルーマニアのEUヨーロッパ連合加盟5か国出身者に、ビザなしアメリカ渡航を中止しました。 その報復処置としてEU議会は、2017年2月23日に、アメリカ人のビザなしヨーロッパ渡航を禁じる決議をしました。ただし、実施には時間がかかる見通しで、今現在、アメリカ人はビザなしでヨーロッパ諸国に入れます。 壁なんか作らなくても、人々の間には憎悪と嫌悪の壁が立派に出来てしまいました。 これ以上、壁は必要ありません。 
 うちの野良猫たちは、壁のない空き地で、のびのび遊んでいるんですが、、 
 
 
文:平田伊都子 ジャーナリスト、 写真:川名生十 カメラマン 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。